柔道整復外傷学ハンドブック【総論】 初版が増刷となりました.
増刷時の修正は,本来は,最小限の誤字,脱字等にとどめるべきなのでしょうが,編集担当のかたも半ばあきらめているのか,意外にすんなり加筆がOKでした.とはいえ,実際には大迷惑な行為ですから,編集担当の方には本当に感謝しています.
では,変更点について書いていきます.
1.骨折の分類>6.外力の作用方向による分類>2)屈曲骨折
屈曲骨折については,これまでも色々書いてきました.
http://ameblo.jp/onajikamanopan/page-2.html#main
http://ameblo.jp/onajikamanopan/entry-10739940927.html
いわゆる「屈曲骨折の分類」について,さらに述べるのではなく,これはこれとして,気になっていた点を追加しました.
それがこれ↓です.
屈曲力が作用して骨折が生じるのことから,それを屈曲骨折とするのは良いのですが,屈曲力が作用して生じる骨折の骨折型としては,「屈曲型(骨折)」と「伸展型(骨折)」や「外転型(骨折)」や「内転型(骨折)」があるので,このことは総論で書いておいた方が良いと思うのです.
また,屈曲骨折では,骨折部の一側は伸張され,一側は圧迫されます.圧迫される側は,粉砕されることも多いので,例えば中手骨頚部骨折では,以下のようなイメージになります.
(Rockwood and Green's Fracture in adults 6th ed.より)
この場合,掌側側の粉砕により掌屈変形が生じやすいことがポイントとなります.特に第2指や第3指での掌屈変形は生じさせてはいけませんから,こういった基本的な考え方は総論で身につけていることが大切だと思います.このことは,コレス骨折(整形外科学用語集記載に従ってコレス骨折と表記)についても同様です.コレス骨折後の変形の一つに,橈骨遠位関節面の背屈変形があります.側面像で計測する「掌側傾斜角」ですが,変形が高度になれば,関節面は背側に向きます.このコレス骨折においても,伸張するのは掌側,圧迫されるのは背側となり,背側側が粉砕されやすいため,背屈変形が生じやすいと考えられます.
このコレス骨折ですが,骨折部に作用する外力については,「掌側凸の屈曲力」と表現されます.掌側側に出っ張るので↓のようなイメージです.
背側(圧迫側)
V
掌側(伸張側)
骨折部の変形は伸張側への凸変形と表現されるので,この場合,「掌側凸変形」ですが,単純に考えて,「掌側凸の屈曲力」は見た目のことを表現していますから,骨折部の変形もそのままで「掌側凸変形」となります.
今回はあくまでも増刷ですので図の追加はさすがに許可が得られませんでしたが,いつの日か第2版になれば,図を用いてもっとわかりやすくしたいと思います.
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