発達障害とは、脳の発達過程で様々な要因で偏り、あるいは機能不全が生じるために、社会生活、学習面などで多様な問題を起こす状態を指します。
障害という用語は害という字を含むので使用を嫌う方もいますが、それを持つ人にとってマイナスとなる、という意味でお考えください。
このうち「広汎性発達障害」は、自閉症、アスペルガー障害を含む広い概念ですが、基本的には、①社会性の発達が悪い、②コミュニケーション能力が低い、③関心の領域が狭い、ことを特徴としています。
 
分かりやすいようですが、知能が低くない子どもたちにこの状態があると、実際には時として、なかなかわかりにくい状態を呈します。
そのため親は、養育に散々苦労されてから受診されます。
子どもの問題に気がつかないご両親や学校が悪いのではなく、「社会性の発達」ということが私たちがあまり意識していない事柄なので、それがうまくいかないとどうなるのかという常識的な想像力が働かないことによります。
社会性という能力は、人間がこの世の中でトラブルを避けつつ生きていくことに不可欠なので、その欠陥は実に多様な問題を、しかも始終引き起こします。
幼児期から親も含めて他人に関心が全くない重度の状態なら、これはおかしいと分かります。
 
でも、知的に低くない子どもの多くは他人に関心はあるのです。
ただ、その関心をどう表現したらよいのか、私たちが無意識に身につけている適度な関心の示し方ができません。
たたいてみたり、髪を引っ張ってみたり、突き飛ばしてみたり、叫んでみたり、あらゆる問題行動が出てくるのです。
ある小学生は乱暴行為ばかりする、ある中学生は朝の寝起きが悪い、ある高校生は友達の上着を平然と着て帰ってくる、ということで受診しました。
いずれも、親は育てにくいと長年感じつつ、一生懸命に育ててきた末の受診です。
子どもの行動に困ったら、あまり一人で悩まずに、小児神経専門医や児童精神専門医を受診してみてください。
きっと解決策が見いだせるはずです。
 
「親が困り果てる発達の問題というものが結構あり、決して親のせいではないのだ」
という認識を周囲の方々に持って欲しいのです。
「大変ですね」「頑張って」という温かい視線は、悩み深い親にとって何よりの大きな支えになるのです。
 
(自治医科大学とちぎ子ども医療センター長・桃井真里子)