監督：前田亜紀
出演：畠山理仁
選挙取材歴25年のフリーランスライター畠山理仁を追ったドキュメンタリー。候補者全員を取材することを信条に、国政から地方選、海外まで様々な選挙の面白さを伝えてきた畠山が、2022年7月の参院選東京選挙区で候補者34人への取材に挑む姿に密着。1人で選挙現場を駆け巡り、睡眠時間は平均2時間、本業の原稿執筆もままならず経済的に回らない生き方を続けてきた畠山は、同年9月の沖縄県知事選取材を最後に引退を決意する。そんな彼が沖縄で出会ったのは、他の地域では見られない有権者の選挙への高い参加意識と、民主主義をあきらめない県民たちの思いだった。
選挙は人間性が剥き出しになるから面白い。テレビや新聞だと主な候補者を公平に報じなければいけないから、あまり見えてこないような人間性が、こういうドキュメンタリー映画では出てくる。特に彼は、メディアが泡沫候補として扱わない候補者も含め、全員を平等に取材をする。一言だけで人間性が見える場合もある。やっぱり人柄を知ったうえで投票したいよね。本来はそれぞれの候補者の演説会や事務所等に行けば候補者の人柄は見えてくると思うけど、働いてる人は時間がないから、結局テレビや新聞の報道あるいは選挙広報を見て投票を決めざるを得ないのが現状。
フリーランスライターの場合、取材にお金がかかる割には収入は少ない。候補者の人柄をカメラに捉えるためには足しげく何度も通わないといけない。一言をもらうためにわざわざ長野まで行くなんて、ものすごい労力だし、大赤字だ。続けるのはやはり大変で、散々悩んだ結果、沖縄知事選を「最後の取材」と決めたんだろう。でも、結局、彼はやめられなかった。彼の願いはただ一つ。「たくさんの人に投票に行ってほしい」。こういう映画を見て、候補者の人柄を知ったうえで、投票に行く人が増えるといいなと思った。
☆☆☆（Ｔ）