10月9日時点で、円が91円台となり、円高の影響が心配されている。 円が高くなると、輸出産業が打撃を受け、日本の経済が成り立たなくなるのではないか、という心配がされている。


しかし、政府が取っている方策は、単に米国の破綻を先延ばしする一時的な弥縫策でしかなく、日本の国としての将来、国民の幸せを大きく損なうものである。


為替介入を行ってドルを買い支えるのは、日本の国力を無駄に消尽する、大きな間違いである

 

【1】為替介入は直ちに停止する


【2】逆に備蓄したドルを使って輸出産業に補助を与え、出来る限り迅速に手許の米ドルを減らす


【3】円高を利用して、この機会に海外から大量の原材料、貴金属等を買い入れ、備蓄する


以上が、日本の国富を保持し、将来の為に役立て続ける道だと思う。 以下に理由を述べてみよう。


(1) 円高差損による国富の消失を避ける


円高を抑える為に為替介入を続けた結果、報道では日本の財務省は、(日銀も含めてだと思うが)米ドルを1兆1095億9100万ドルも抱え込んでしまっているらしい。 その米ドルを日本円を使って購入した時期がいつごろなのか、知らないが、大昔は360円だったし、段々下がってきて最近でも2007年には120円だった。 それが、今では82円を切るところまで値下りしてしまっている。


仮に、政府が入手した外貨準備のドルの購入価格が、全体の平均で1ドル100円だったとすると、今日現在日本政府が持っている外貨準備高のドルを購入する為に、日本国民の血税を、110兆9591億円支払っていることになる。


で、同じドルを、今日現在の為替レート(仮に82円とする)で計算すると、90兆9865億円ということになる。 為替差損は、19兆9726億円である。


為替差損が、19兆9726億円、つまり、約20兆円

随分と巨額の損失を出したものである。


日本の国民が1億2000万人であるとしたら、国民一人あたり16万7千円の損失である。

そもそも、外貨準備高自体、国民一人当たり(今の為替水準で)75万8千円という金額になる。

今の米国の経済状況、明らかな失業の増加、破綻した製造業、行き詰ったサブプライムローンの処理、どう見ても米ドルが今の状況で強くなる可能性は無い。

逆に近々70円台には確実に、更に50円台辺りへと低落して行くことが予想される。

ドルが70円になれば、為替差損は33兆2877億円、ドルが50円になれば、為替差損は55兆4795億円である。


英米のヘッジファンドは、こういった不自然で無理な為替介入を、手ぐすねひいて待っている。 そもそも経済の流れに合わない為替介入には無理があり、その無理な部分を衝くのが彼等の商機だからだ。 多分、既に相当ヘッジファンドを儲けさせ、日本の国富が数百数千億単位で彼等の口座に移動していることだろう。


どう考えても、こんな巨額の危険な外貨準備を抱え込む必要は感じられない。

我々は、何か考え違いをしているか、若しくはマインドコントロールを受けているのではないだろうか?


という訳で、為替介入は、日本に大変な損害を与える方策だ、ということは言えると思う。

次の(2)で、その利点とされる為替介入は輸出産業への援護射撃にすべき、という点を論じる。


(2)備蓄したドルを使って輸出産業に補助を与え、出来る限り迅速に手許の米ドルを減らす


円が高くなると輸出が苦しくなる。 これは確かだ。 

しかし、円高は輸入の場合は有利に働く。(誰でも分かる理屈だ)

そして、国民は輸出して生活するのではなく、輸入した原料や製品、サービスを使って生活している。

勿論、輸出企業が儲けて数多くの国民を養っていることも確かだが。


それでは、日本の輸出と輸入は年間どの程度なのだろうか? 

財務省貿易統計 によると、昨年2009年は、

輸出総額(確定値) 54兆1706億円

輸入総額(確定値) 51兆4994億円

である。


上記で分かったように、膨大な外貨準備が存在するが、それは明らかに為替差損のリスクに晒されており、今後改善する余地は見えない。 どうせ無駄に消えてゆくなら、それらを輸出企業への補助に使ってしまい、円高を放置しても輸出産業が苦しくならない方策を取れば良いのである。 


多分現実の細かな方策としては色々考えなくてはならないだろうが、基本的には円高を放置することで苦しむのは輸出企業だけなのだから、それらの企業が、ドルが世界の基軸通貨から転落して破綻する数年後まで食いつないで行けるように、外貨準備を転用して補助金を出す方向で考えれば良い。


(3) 円高を利用して、この機会に海外から大量の原材料、貴金属等を買い入れ、備蓄する


円が高いなら、海外から物を買って、円を海外に流出させれば良い。 円で支払い出来るように交渉して、兎に角備蓄が効いて重要な資源を買いまくったら良い。 日銀が何と言おうと、政府が強力にプッシュして、100兆円位の通貨を発行し、金、銀、プラチナ等の貴金属、銅、鉄等の工業必需品、中国が何をやっても当分困らないだけのレアアース等を充分に買って、支払いを日本円で行うべきである。 


貿易相手国も、目減り間違いなしの米ドルなんかで受け取ったら、直ぐに為替差損が発生することは分かっているのだから、日本円で支払わせて呉れるよう、強力に交渉を開始すべき。