ずっと前から読みたかったこの本、電子化されてたのに気づいて読んでみました。

すばらしい本です!

警視庁捜査一課といえば、刑事を目指す警官なら憧れの部署であり、全国で重大事件が起きればどこへでも乗り込んでいける特権を持ったエリート集団。警察小説やドラマ・映画でもよく出てくるけどイマイチどんな組織なのかはっきりしない、県警刑事との違いは?など色んな疑問があったけど、この一冊でだいぶクリアになったような気がする。係長、課長、部長、班長などの違いもようやく分かったような。ていうか、警察ってつくづく肩書きが必要な組織なんだなと。

それはさておき、著者が元捜査一課刑事だったこと、この手のノンフィクションで陥りがちな手柄話(自慢話)にとどまらないところが本書の最大の魅力です。

まず面白かったのが、どうやって捜査一課に引き抜かれていくのかその過程が分かること。案外めぐり合わせ的な要素が強い?自己主張と手柄と人柄と、そしてその時の運・・・。てっきり昇進試験か選抜試験みたいなものがあると思ってたから意外でした。

そして、捜査会議や捜査の手法の部分。これはまだ携帯やネットが普及する前の時代のことが書かれているので、それこそ高村薫さんの「マークスの山」あたりの感覚でぴったり合いますね~。北海道での張り込みが壮絶・・・。いったん事件が起こるとしばらく家に帰れないのは本当だったんですねー。家族も大変だ。自分がどういう事件にかかわるかによってその刑事の人生も変わりそうです。

一警察官としての思いと言いますか、同期や同僚との間柄や著者の周りで起こる悲劇も本当にドラマチックで・・・著者が生涯刑事をつらぬいてボロボロになるよりは、と転身するに足る理由がそこにあるような気がします。

実際この作家さんは小説も書いているし様々な刑事ものの映像作品の監修に関わっていたようですが、40代の若さですでに亡くなられているのです。そういうことも含めて読むとただのノンフィクションでない、一人の人間の半生を読んでいるような感覚になってきてちょっと感傷的になってしまいます。

巻末収録の警察五十訓が警察官でなくとも自分の状況に合わせて読むとはっとするようなことがたくさんあり、載せてもらってよかったなと思います。

ソニーリーダーにて読了。ほか、電子書籍ストアBookLive!などでも取り扱いあり。


Amazon Kindle版あり

読了日 2013年7月11日