ゾウ・・・。

仲間の死を悼むという珍しい動物。

群れの仲間が死ねば、骨になっても、

亡骸になった仲間を

長い鼻で愛しげに撫で、

その場から離れないという・・・。

そして、ゾウは動物園では人気を独占し

心優しき巨獣として小さな子供たちの心の中に

いつも映っている。


そんなゾウは今の世界では、アフリカとアジアに

アフリカゾウアジアゾウ2種のみ生息している。


しかし、太古には、

ゾウの仲間はオーストラリア大陸、南極大陸を除く、

世界中で繁栄し、160種ほどのゾウが生息していたという。

こんなにもたくさん種類のゾウがいたなんて、

たまらない話である。

もちろん日本にも大昔にはナウマンゾウ など

ゾウの仲間が生息していたという。

ゾウの進化


最初のゾウの仲間は

4000万年前のアフリカ北部に現れたという。


モエリテリウム  学名(Moeritherium

モエリテリウム

最初のゾウの仲間は

ゾウ特有の長い鼻は持っておらず、

足の短いブタのような姿だったといわれている。

水辺や森林などに生活する小さな動物だった。


時代が流れるにつれ、世界の気候は寒くなり、

森林から草原という開けた土地になる場所が

ぼちぼち増えだした。

草原など開けたところに生息する動物は

体が大きくなる傾向があるといわれるが、

ゾウの仲間も例外ではなかった。


体が大きくなると体高も高くなり、

頭の位置は高くなる

これは地面にある草や水を飲むのに

不便になるのだ。

「体をしゃがませて水を飲めばいいだろ」

と思われるが、そんなわけにはいかないのである。

水飲み場は草食獣が集まり、

そこは肉食動物の絶好のハンティングポイントになっている!

そんなところで足を曲げ、水を飲むとなると

肉食動物に襲われたとき、立ち上がってから逃げるでは

遅すぎるのである。

水を飲む草食獣

そんなわけで、ゾウ以外の草食動物は首を

長くすることによって立ったまま水が飲める体になっているのだ。

これで襲われても、走って逃げることができるまでの

時間が短縮できるわけである。


そしてゾウは今でも首は短いわけだが、

その代わりに鼻を長く伸ばすことによって

立ったまま水が飲めるようになった。

水を飲むゾウ

この長い鼻で人間の手のように

食べる草をむしり取って口に運ぶこともできた。


プラティベロドン  属名(Platybelodon

プラティベロドン

しかし、昔のゾウの仲間は何でも長い鼻で対応して

いたわけではない。

シャベル象と言われるプラティベロドンのように、

下アゴを尋常でないほど長く発達させていた。

この下アゴで地面の草や水場にある水草を

一気に掬い上げ、補助的な役割である

長い鼻で、チリトリ(下アゴ)とホウキ(鼻)で掃除するの

ような感じで口の奥へ食べ物を運んだと思われる。

昔、象は鼻だけでなく、アゴまで長かったのだ。


しかし、今のゾウは長い鼻はピーナッツ一粒を

つまめるほどの器用さで、いろいろとできるのを

見ると、昔のゾウの尋常でない長さのアゴは

必要になさそうに思えてくる。

つまり、長い鼻の器用さのおかげで、

長いアゴは必要なくなり、退化したのだろう。