交流と直流
※大変遅くなりました!!実は昨日から海外におりまして
ネット環境の整備に予想以上の手間と時間を要したため
昨晩の更新が不可能だった次第です。もう大丈夫です!
予告時間にアップできなかったことを深くお詫び致します。
申し訳ございません。
↓お怒りでなければ・・・昨晩の接続への格闘へのねぎらいを!
奥さま聞いて下さい・・・。
愚かな私を笑って下さい・・・。
そして私を叱って下さい・・・。
「ゲイで悪いんかっちゅーことや!!」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「は!?(汗)」
ハヤトとケンイチと私の3人は鳩が豆鉄砲を食らったような表情で
呆気にとられています。関西訛りの目の前の不思議な男が叫んだ
意表を突く一言に、どう答えていいものか分からずにいます。
「じょ、じょ、冗談だよな???」
「本気やっちゅーねん!!」
「まじか??マジなのか??」
「だ・か・ら!!マジやっちゅーのに!!」
「おまえ・・・ゲイ・・・なの??」
「何度言わせたら気が済むねや!?」
「ゲイって・・・男が男を好きって・・・アレのことだよな??」
「それ以外、何があんねん!?」
「ってことは・・・俺らもおまえの対象範囲・・・なのか??」
「まぁ・・・そういうことになるわな(口笛)」
奥さま・・・しゃれになりません。
「おい・・・(冷汗)」
「ああ・・・(冷汗)」
「やばい・・・(冷汗)」
私たち3人は顔を見合わせて同じことを考えました。
「ひぇぇぇぇ~~!!」
ガラッ
ドドドドドドッ!!
ザッブーン!!
急に裸でいることが恥ずかしくなった私たちは、一斉にサッシ製の浴場扉を
開けて、湯船に飛び込みました。本来はかけ湯で身体をゆすいでから入る
のがマナーですが、そんなことを気にしている余裕はありません。自分たち
の肉体が、本能のまなざしに晒されていると分かると、それまで何とも感じ
なかった全裸姿が恥ずかしくてたまらなくなったのです。
「おい、マジかよ・・・あいつ!!」
「やばいだろ・・・オ○マ掘られちゃうぞ!!」
「なんかニタニタ俺らを見てると思ったんだよな!!」
湯船に入って一息ついた私たちを追って先ほどの男も浴場に入って
きました。色白でかなり贅肉のついた身体です。濃い体毛が目立ち
ます。偏見はいけませんが、いかにもゲイっぽい身体ではあります。
「ちょっと待ってくれやぁ・・・逃げへんでもええやんか」
「おまえ・・・こっち来んな!!」
「自己紹介くらいさせてくれてもええやんか」
「だったら後ろ見向いてやれ!!こっち見んな!!」
「とりあえず湯船に浸からせてもらってもええやろ?(ニヤリ)」
怯える私たちをよそに、その男はゆったりと洗面器で全身に湯をかけてゆすぎ、
口笛を吹きながら、少し離れた場所で湯船に入ってきました。
「あぁぁ~~ええ湯加減やなぁ・・・寮も捨てたもんやないな♪」
「その“あぁぁ~~”ってのもやめろ。気持ち悪いよ」
「ずいぶんな言われようやな」
「そりゃそうだろ・・・男に犯されてたまるか!!」
「・・・・・・(頷く)」
「・・・・・・(頷く)」
「うーん・・・まいったな、こりゃ(困惑)」
その男は顔をいったん湯に沈めてから再び顔を上げ、したたる湯を
手のひらで拭いながら、真面目な表情になって唐突に語り始めました。
「ちょっと自分ら、誤解してんで!?」
(自分ら=おまえら※関西弁)
「誤解・・・??」
「ああ・・・申し遅れたけど俺、O田っていいます」
「O田ね・・・わかった・・・ゲイのO田ね」
「正確に言うとゲイでもないやろな・・・両刀やし」
(両刀使い=バイセクシャル=男でも女でも・・・)
「両刀・・・??」
「そうや。アメリカンスラングで言えばAC/DCってやつやな♪」
「おい○○・・・“スラング”ってなんだ?」
「スラングって・・・たぶん“俗語”って意味だったと思う」
「なるほど・・・アメリカの俗語で両刀使いはAC/DCっていうのか」
「俺もそれ、初めて知った」
「俺もだよ・・・」
奥さま・・・この寮に入ってまだ少ししか時間が経っていないにもかかわらず、
親しく話すようになった人物がケンイチ、ハヤト、そしてこのO田・・・なんと
濃いメンバーでしょうか。類は友を呼ぶと申します。つまり私自身も客観的
にはずいぶん濃いキャラクターだということも言えるのかもしれません。
「自分ら・・・俺が自分らの貞操を狙ってるとか、勘違いしてへんか?」
「そりゃするだろ」
「さっきの視線・・・尋常じゃなかったもんな」
「獲物を見る目だったぞ」
「(苦笑)それは誤解や・・・単に羨ましかっただけやねん」
「羨ましい??」
「ほれ!見ての通り、俺は無駄な贅肉だらけの身体やろ??」
「・・・まぁ・・・な(納得)」
「自分ら、3人とも引き締まったええ身体してるやんか」
「・・・・・・(恐怖)」
「せやから“同じ男”としてちょっと羨ましかってん」
「・・・でも俺らも性欲の対象なんだろ??」
「ちゃうちゃう!!そんなんちゃうって!!」
「何が違うんだよ」
「俺は基本は女のほうが百倍好きやねんってば」
「だって・・・さっき自分でゲイって言っただろ??」
「それは自分らが冗談で先に言い出したんやで??」
「・・・・・・」
「俺は女も好きやけど、かっこいい男も好きになんねん」
「どっちにしろ男好きなんだろ??」
「誰でもええってわけでもないし、ところ構わずでもないし」
「・・・・・・」
「男の裸見て、いつでも欲情するわけちゃうねんで?」
「ほんとか?」
「ほんまやって!!両刀は普通みんなそんな感じやねんて!」
「・・・・・・」
「ノーマルなやつらよりむしろ普段はけっこう淡白やねん」
「・・・・・・」
「せやないと、始終いつでも欲情せなあかんやろ?男女両方やねんから」
「確かに・・・」
「よっぽど惚れた男とベッドにでも入らん限り、普通はなんもないよ」
「・・・ベッドとか言うなよ」
「自分らには惚れてへんから安心してええよ」
要するにO田の説明では、彼自身は女も男も好きになるが、誰でもいい
わけじゃないとのこと。男が無条件に女の裸に本能を刺激されてしまう
のとはまったく異なり、男の裸を見てもそれなりに厳しい条件が整わない
かぎり欲求の対象にはなり得ないとのこと。そしてそもそもは男よりも
女のほうがはるかに好きだというのです。
「俺、医大目指してんねん。マジで仲良うしてや」
「・・・まぁ・・・俺をとって食おうとか思わないなら」
「俺も・・・尻の穴の使い道は1つでいいからな」
「どこから来たんだ?それ・・・関西弁だよな」
「H県K市や・・・」
「都会だな」
「お洒落な街だ」
「イメージはいいな」
「俺の実家は山奥やし、そんなええもんちゃうで」
「俺・・・昔そこに住んでたよ」
「○○、マジか!?」
「なんでだ??」
「めっちゃ偶然やん!!いつ頃のことなん??」
「親父が転勤族だから・・・小学校のときそこだった」
「自分・・・全然関西弁出ーへんなぁ」
「ずいぶん昔だからな」
私の父はごく普通のサラリーマンです。そして全国各地を数年単位で転勤
して歩く、いわゆる“転勤族”です。その息子の私も、幼い頃から日本全国
を引っ越して歩く生活でした。幼い子供にとって数年は極めて重たい時間
です。せっかくその土地に慣れ親しんで、仲良くなった親友ができた頃に、
またまったく文化の異なる遠く離れた新しい土地へと移動することを十数年
繰り返したのです。幼稚園の転園、小学校、中学校の転校回数は数え切れ
ません。実は私が高校時代から1人暮らしになった理由はそこにもありま
した。いつも入学する学校と卒業する学校が異なる私のストレスを、父が
解消しようとしたのです。「一度くらい同じ仲間と一緒に卒業したいだろ・・・
せっかくいい高校に入ったんだから」と、母の反対を押し切って私を1人
この土地に残して、次の赴任先へと引っ越していったのでした。その高校
で半分グレてしまい、同級生からも白眼視されてしまう結果になろうとは、
父も私自身も想像していませんでした。そういう意味では、私は極めて
大きな親不孝をしていることになります。
ただ、様々な土地を引越して歩く半生は、私にある特徴を植え付けました。
所属する集団の中でもっとも力のある人物をすぐに見抜く目、そしてその
人物になめられずに仲良くなる姿勢を持たせたのです。ある意味残酷な
子供社会のなかで、いじめを克服して自分を守るための知恵でもあり、
無意識に身に付いた人付き合いテクニックでもあったようです。
実際、中学時代からの親友Y崎は、転校してきた当初の私をいじめようと
する側でした。彼には誰もが頭が上がらず媚びへつらうだけだったところ
に、まったく頭を下げずに最後まで抵抗する私という異質な存在が急に
現れたのです。そこからがY崎の優れたところの発現で、とことん敵対す
る私のことを、最後には好敵手として認めて仲間扱いするようになったの
です。彼の器の大きさです。それが・・・私たちの友情の始まりでした。
「○○・・・おまえ純粋な地元人じゃねぇのに“黒孔雀”によく入れたな」
「同級のヘッドが中学からの親友だったんだ」
「そいつ・・・いいやつか?」
「いいやつだな・・・根性もある」
「今度紹介してくれよ」
「ああ・・・今度・・・機会があったらな」
Y崎とは「N子の死」以来、少し距離を置いています。気まずいわけではない
のですが、お互いの顔を見るとお互いに辛いことを思い出すことが分かって
いるため、どちらからともなく避けているのでした。紹介するといっても、まず
は自分が関係を修復しなければなりません。
「な~に陰気な顔してんねんって!!(ニヤリ)」
ニヤニヤしながらそう言ったO田は、そっと湯船の中で私に接近してきて
手を伸ばしました。
「えへへへ!!いただき!!(ニヤリ)」
「お、お、おまえ・・・どこ触ってんだよ!!変態!!」
「けっこういいモノ持ってはりますなぁ・・・ご主人(ニヤリ)」
「ばかやろー!!やっぱりおまえ信用ならねぇっ!!」
ジャバッ!ジャバッ!ジャバッ!
私はまだニヤニヤしているO田に両手で湯をかけて仕返しをしました。
なぜかケンイチとハヤトも一緒になって湯をかけ始めました。O田は
お湯の洪水に襲われて「げほげほ」とむせています。
「ははは・・・ざまーみろ(笑)」
浴場内で暴れている私たちに気兼ねして、中に入って来れないでいる
気弱な寮生の姿がチラリと視界に入りましたが、私は構わず湯をかけ
続けました。
今回はここで締めさせて頂きます。
またのご来訪を心よりお待ちしております。
だって・・・悔やむことばかりですから・・・。
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