告白への階段 | 奥さま聞いてよ!妻を愛す恋愛体質夫の生活      変なタイトルだけど意外にも長編私小説なのです

告白への階段

奥さま聞いて下さい・・・。

幼かった私を笑って下さい・・・。 

そして私を叱って下さい・・・。

 

  

 

  

 

グッド! 

「よし・・・決めた・・・告白しよう・・・」

 

 

 

 

 

 

出会ったばかりの深窓の令嬢・Jへの想いを断ちがたく、ついに

ほのかな恋心を告白する決断をした私。本来なら前日に出会った

ばかりの女性に愛の告白をすることなどあり得ないのですが、彼女

の持つ不思議な魅力の虜になってしまった私は、完全に冷静さを失

っていたのです。

 

Jの容姿が完全に私の好みそのものだったことも、私の行動に拍車

をかけていました。Jの話によれば彼女には30代の彼氏が存在する

はずでしたが、彼女が時折私に見せる態度は「私に気がある」としか、

当時の私には考えられなかったのです。根拠のまったくない自信を、

私は勝手に抱いていたというわけです。本当に馬鹿です。

タイトル未設定  

今から思えば当時の私の考え方は、穴だらけで浅はかに過ぎます。

 

 

私はJのことをどれだけ知っているのか?

私はJの彼氏のことをどれだけ知っているのか?

会ったばかりなのにJのことを私は本気で好きになれるのか?

自分を好きでいてくれるN子は私はこのまま黙殺してしまっていいのか?

 

 

もっともっと深く熟慮を重ねてから、具体的な行動へと移すべきなのは、

年齢を重ねた今ならば容易にわかることです。けれども幼かった当時の

私は、感情の赴くままにすぐに行動を起こしてしまうところがあったように

思います。ここは大きく反省する部分の1つです。 

  

 

  

 

 

晴れ 

「やけに早く来ちゃったから時間余っちゃったな・・・」

 

  

 

 

始業時刻まではまだ1時間ほどあります。グランドや体育館からは

運動部が練習する声が聞こえてきます。自分とは正反対の生活を

送る爽やかな高校生の姿を見るのが何となくつらくて、私はさっさと

校舎の中へと入りました。

  

 

 

 

 

 

「そういえば部活・・・今頃出てっても相手にされないだろうな」

 

 

 

 

 

 

私も高校入学当初は、中学までの生活を改めてそれなりに真面目

に頑張ろうと思ったものでした。事実、部活動もサッカー部と水泳部

に所属していました。生活が荒んでしまってからも、退部届は出して

いなかったので、名前だけは残っているはずです。

 

サッカー部は遊び半分だったのですが、水泳部はそれなりに期待さ

れて入部していました。小学校の頃に海で平泳ぎを覚えて以来、基本

のクロールはまったく無視して平泳ぎばかり練習していた私。中学時代

は各種大会でかなりの好成績をおさめていたのです。種目はもちろん

「ブレスト=平泳ぎ」オンリーです。中学時代もブレスト専門の試合助っ

人として水泳部に所属していました。水泳部員のくせにクロールがまっ

たくできない異端児の私でしたが、高校の水泳部はやはりブレストの助

っ人として入学したばかりの私をスカウトに来たのでした。

 

泳ぐのは好きでした。夜遊びに明け暮れる毎日の中でも、入学してしば

らく水泳部にだけは顔を出していました。しかし、顧問の体育教師M浦

の強圧的な態度に反感を抱き、徐々に足が遠のいていったのです。


2年生になる直前に教師M浦と些細なことでいさかいとなり、あわや

“暴力事件”という出来事があって以来、私は完全に水泳部から気持ち

が離れてしまい、部活動からは遠ざかっています。体育教師M浦との

関係は最悪の状態でした。

  

校舎に入った私はあり余る時間を潰すために、入学以来初めて校内の

図書室に足を向けました。図書室は私が通う「普通科」校舎の最上階

である4階にあります。私は階段をゆっくり昇って、図書室の入り口に

辿り着きました。

 

 

ロケット 

びっくりです。

   

 

 

中の様子を覗いてみた私は、予想外の光景に息を呑んでしまいました。

てっきり誰もいないか、下手をすると扉の鍵さえも閉じたままではないか

と予想していた私は、目の前に広がる現実に頭を強く殴られた思いが

しました。そこは別世界でした。

 

広い室内はほとんど満席状態です。参考書や問題集を見ながら懸命に

何かを考えている生徒や、目をつぶって何かを暗記している様子の生徒。

むんむんする熱気で、私のような「就職組」にとって非常に入りずらい空気

を醸し出していました。

 

 

 

 

 

 

 

「すげぇなぁ~こいつら・・・受験組はやっぱすごいわ・・・(狼狽)

(心の声)

  

 

 

  

 

 

一瞬私はたじろぎました。きびすを返して階下に降りてしまおうとも考えました。

しかし息を切らせながらせっかく4階まで階段を昇ってきた労力を思い出した私

は、見えない心のバリアを破り、思い切って中に突入してみることにしました。 

 

扉を開けるとギィーっと蝶番の軋む音が部屋中に響き渡りました。その瞬間、

誰が来たのかを確認するように、中にいた生徒のほぼ全員が顔を上げてこちら

に冷めた視線を注ぎました。

 


 

 

 

  


「うわっ!?やべっ!・・・注目されちゃった・・・(焦)

 

  

 

 

 

 

 

急に皆が自分の方を見たので私は少々驚きました。けれども驚いたのは

どうやら私だけではなかったようです。それまで集中して勉強していたはず

の彼らは、にわかに隣の同級生たちと何やらコソコソと話しはじめました。

皆が一様に私の方をチラチラと見ながら小声で話したり、筆談をしています。

嫌味な視線をずっと私に注ぎ続ける輩までいます。


 

 

 

 

 

ハロウィン 

「・・・ねぇ・・・信じられないよねぇ・・・あのバカ男が・・・」

  

 

「・・・なに考えてんのかな・・・自分の学力わかってんのかな・・・」

  

 

「・・・あいつに読める平仮名だけの本なんてないよねぇ・・・」

 

 

  

 


  


耳が悪い方ではなかったせいか、侮蔑に満ちた悪口雑言が見事に聞こえて

しまいました。自尊心を傷つけられた私は、一瞬頭に血が上って叫んでしまい

そうになりましたが、かろうじて未熟な理性でそれを抑えました。

 

 

 

 

 

  


「仕方ない仕方ない・・・確かに勉強なんてしてないんだから・・・」

(心の声)

  

 


 

 

 

  

一回深呼吸をして気持ちを入れ替えた私は、自分が招かれざる客であること

を完全に無視して、どかどかと図書室の奥の書棚まで歩いていきました。

いくら陰口を言っていても、そもそもは私のことを恐れている同級生ばかり

でしたから、そばを通り過ぎる頃には皆が顔を伏せてしまいました。こそこそ

話していた声もすっかり消えて、図書室には元の静寂が戻りました。

 

私は一番奥の書棚に並んでいる「禁帯出」というラベルが貼ってあるコーナー

の前に立ち止まりました。そこには全国の有名大学の入学試験過去問題が

掲載されている、いわゆる「赤本」がずらりと並んでいました。

  

 

 

 

 

 

アップ 

「東京の大学かぁ・・・・ふぅ~(ため息)

  

 

 


  


 

私はまずK大学を手に取りました。ぱらぱらとページをめくると、いかにも

難しそうな問題が並んでいます。見ているだけで頭が痛くなりそうです。胃まで

痛くなってきます。当時の私にはまったく無縁のシロモノに思えました。

 

  

 

  

  


 

「東京六大学ってここと・・・どこなんだっけ・・・??」

(まったくわからなかったのです)

   

 

 

 


 

 

私は煙ったがられているのも構わず、近くに座っている男子生徒に声をかけ

ました。片手にはK大学の赤本を持ったままです。あまりに自分の情報量が

乏しいことに気づいたのです。

 

 

 

 

  


覗き見クロ  

「ねぇねぇ・・・ちょっと悪いんだけどさ・・・聞いていいかな?」

 

メガネ  

「な、な、な・・・なんですか?」

(完全に怯えている

  

「あれ・・・?君・・・俺と同じクラスだよな?だったら同級生じゃん」

  

   

「そ、そ、そ、そうですよ・・・」 

   

 

「だったら敬語なんて使うなよ・・・水くせぇじゃん♪」

  

 

「そ、そ、そ、そうだね・・・」

  

 

「そうそう・・・タメなんだからそれでいいよ♪」

  

  

「・・・で、で・・・何の用なのかな・・・?」

  

はてなマーク 

「あ、そうそう・・・あのさ・・・東京で頭がいい大学ってどこ?」

(質問自体が頭悪そう:汗) 

  

 

 

 

 


「就職組」の私が大学・・・しかも地元ではなく東京の大学のことを尋ねた

ため、尋ねられた当人だけではなく周囲も一瞬あっけに取られています。

 

 

  

 

 

  

宇宙人

「○○くん・・・君が・・・!?東京の大学・・・!?」

 

  

「・・・ちょっと調べてるだけだよ・・・悪りぃか?(ギロリ)」

  

 

「・・・・いえ!あ・・・いや・・・・全然悪くないです・・・いや、ないよ」

  

 

「だよな(ニヤリ)・・・ざっくりでいいから教えてくれよ・・・頼む」

  

 

「国立?それとも私立?あと・・・文系?・・・理系?」

  

 

「理系は算数があるんだろ?だから文系だな・・・国立と私立はなにが違うの?」

  

  

「あ・・・私大文系の方が受験科目は格段に少ないです・・・いや、少ないよ」

  

  

「あっそぉぉ~!!そうなのぉぉ~!!じゃあ私大文系で教えてくれ」

  

 

「東京・・・ですよね・・・いや、だよね?」

  

グッド! 

「そう!トーキョー!!」

(馬鹿っぽい:汗)  

 

「やっぱりW大とK大かな・・・あとJ大とか・・・R大とか・・・M大とか・・・」

  

 

「聞いたことあるとこばっかだな・・・野球強いとこだよね?」

  

 

「うん、J大以外は六大学野球で有名・・・でも(チラリ)・・・かなり難関だよ?」

  

むっ 

「うん?あぁ・・・難関なのはさっきわかってるよ(赤本をチラリ見る)

 

 

  

 

  

 

 

私は周囲から注がれる冷たい視線に気づきました。私が振り返ると顔を伏せて

しまいますが、私が目を逸らすと再び私を射るように部屋中の生徒が見ています。 

 

  

 

 

 

  


「あらら・・・かなり嫌われちゃってるね・・・こりゃ・・・」


   

 

  

 

 

 

 

私はそれ以上図書室に居座ることが無意味なことに思えました。敬遠されて

いるのを押して、無理に席に座って赤本を眺めていても、けっして愉快だとは

思えません。私は先ほど私に色々教えてくれた同級生に再び声をかけました。

 

 

   

 


  

 

 

「おい・・・えぇっと・・・ごめん名前わかんないや・・・君・・・ありがと!!」

  

 

「あ、あ、あ、あぁ・・・どういたしまして」

 

  

 

 

 

  


 

必死に虚勢を張っている同級生男子の肩をポンと叩いてから、私はそそくさと

図書室を後にしました。軋む扉を開けて廊下に出ると、一気に開放感が私を

包みます。

 

 

 

 

  

 

 

「うわぁ~きつかったぁ~なんだよあの空気は・・・やつら深海魚か?」

(深呼吸しながら) 

  

 

 

 

 

 

 

階段を1フロア降りて自分の所属するクラスの教室までゆっくりと歩きながら、

私はつらつらといろいろなことを考え始めていました。 

 

 

  

 

 

  


「う~ん・・・Jちゃんにはとっさにウソついたが・・・大変だぞ、これは」

 

 

  

 

 

 

 

私はJの気を惹くために、それまで心の片隅にもなかった大学受験について、

初めて真剣に考えだしたのです。思えば2年以上も真面目に勉強を続けて

いた同級生たちと、カンニングなどでぎりぎり赤点にはならないように誤魔化

して進級だけしてきた私との間には、学力の点でとてつもない差ができて

いるのです。図書室の連中は、私が目にしただけで頭痛を起こした過去問題

を、すらすらと解いて見せるのでしょう。私は1人で勝手に敗北感を味わって

いました。

 

教室に着いて引き扉をガラガラ開けると、始業30分以上前にもかかわらず

10人ほどのクラスメイトたちが何やら勉強をしている模様。さすが進学校

です。私はほとんど毎日遅刻の連続でしたので、朝早くに教室で勉強を

している同級生がこれほどたくさんいるとはまったく知りもしませんでした。

 

同級生たちは私が早く登校したことが珍しかったのか、一瞬私の方を

見ていましたが、すぐに目を伏せて自分の勉強を再開しました。

   

 

 

  

 

 

えっ 

「ここにもたくさん深海魚がいるんだね・・・まいったまいった(苦笑)

 

  

 

  

 

 


私は周囲の同級生たちを奇異な物でも見るかのようにじろじろと観察して

いました。むしろ自分が奇異な存在であることなど気づかずに、ふやけた

笑いをたくわえたまま、私は始業のベルを待っていました。

 

 

(中略)

 

タイトル未設定  

授業などまったく耳に入らないまま席に座っていた私は、2限目終了ベル

が鳴るやいなや教室を飛び出し、正面の校庭を走って横切りました。

  

暑い日差しが私の肌を突き刺し、「音楽科」校舎にへ着いたときにはじんわり

汗ばんでいました。梅雨前の湿度も気温も高い日でした。

 

前日と同じように薄暗い校舎に足を踏み入れると、急に少し涼しくなります。

2度目のことなので私にも躊躇はありません。Jがいるはずの2階の教室

まで勢いよく階段を駆け上がりました。

 

階段を昇りきると数人の音楽科の女子生徒が談笑していました。突然

見慣れない男子生徒がやって来たのを見つけると、さぁーっと駆け足で

教室に戻って行ってしまいました。私は走るのをやめてゆっくりと3年生

の教室へと近づいていきます。

 

先ほど逃げるように教室に入っていったのは2年生の生徒のようです。

Jがいるはずの3年生教室の1つ手前の部屋に入っていったようです。

私がその教室を通り過ぎるときには、廊下側の窓の内側から大勢の

音楽科2年生女子が私の歩く姿を観察している状態になっていました。

まるで動物園です。私が檻の中なのか、彼女たちが檻の中なのかは

わかりませんが、私は彼女たちから物珍しそうにじろじろと観察されて

いたのは間違いありません。かすかに中から声も聞こえてきます。 

   

 

 

  


 

  

ベル 

「あの人・・・普通科の○○先輩だよ~~」

  

 

「うそぉ~・・・あの・・・噂の人・・・?」

  

 

「すごい怖い人だって話じゃん」

  

 

「でもけっこういい感じじゃない?」

  

 

「何言ってるのよ、あんな人・・・趣味悪いよ」

  

 

「でも背も高いしけっこうかっこよくない?」

   


「全然かっこよくないよ・・・犬みたいじゃん・・・不良っぽいし」

  

 

「優しそうでいいと思うけどなぁ・・・」

  

 

「優しいわけないじゃん・・・あんな不良」

  

 

「成績だってハンパなく悪いんでしょ?」

  

 

「うそぉ~私、馬鹿だけはカンベン・・・」

  

  

「っていうか何しに来てんの?」

 

 

 

 

 

  


奥さま・・・すっかり丸聞こえです。一気に自分のアンケートを集中的に

強制的に聞かされた気がして、私は思わず苦笑いをこぼしてしまいました。

まったく・・・1年後輩のこの女たちは言いたい放題です。

 

 

  
 

 

  

ベル

「うわぁ・・・なんだか笑ってるよ!怖いよ!!!」

 

  

「やばいって・・・暴走族だって噂だし・・・」

  

 

「まじで!?怖いじゃん!!」 

   

 

 

 

 

 

    

急に私のことを怖がる気持ちが彼女たちを支配し始めたようです。私は足

を止めて、教室の窓の中を逆にじろじろと眺め返しました。すると・・・

 

 

 

 

  

   

         波 

「きゃーーーー!!!」

  

 

 

  


 

  

パニック状態に陥った彼女たちは、耳をつんざく様な激しい悲鳴とともに

いっせいに窓のそばから走って離れて、全員が着席してしまいました。

  

 

 

  

 

 

 

 

「・・・ったく・・・こいつらはなに勝手に騒いでんだ?あほか?」

 

 

   

 

 

 

  


私は少々呆れながらその教室を通り過ぎて、3年生教室の扉の前に立ち

ました。中にあのJがいるはずです。休み時間なので教室の中はざわざわ

しているのが外からでも分かります。私は高鳴る鼓動を感じながら、扉を

思い切って開けてみました。中にはいくつかのグループに分かれて談笑

している女子生徒たち。談笑の声があまりに大きかったせいか、私が扉を

開けたことに誰も気づきません。私は一番近くにいる女子生徒に声をかけ

てみました。少しだけ声は大きめです。

   

    

 

 

 

  

覗き見クロ  

「あの~~!!ちょっとすいませ~~ん!!」

  

 

 

 

 

 

 

いきなり教室内に響いた男の低い声。いっせいに皆がこちらを振り向きます。

ざわざわしていた教室内は一瞬にして静かになりました。緊張していたのと

大人数いたこともあって、この集団の中からJを探すのはなかなか困難でした。

余裕もありません。

   

 

 

 



ヒマワリ 

「・・・はい・・・何かご用ですか?」

  

 

 

 

 

  

 

一番近くでしゃべっていた女子生徒が、臆することもなく自然に私に返事を

しました。普通科では考えられないことです。いくら私の悪評が流れている

とはいえ、普通科ほどではないのでしょう。

 

しかも応答してくれた女子生徒もかなりの美少女です。Jのような華やかさ

はありませんが、和風のさっぱりしたきれいな顔立ちでした。

 

 

 

  



音譜  

「ここは・・・いい女の隠れ家なのかよ・・・」

(心の声) 

   

 

 

 

 

 

一瞬その女子生徒に目を奪われた私ですが、当初の目的をすぐに思い出し

緊張を隠しながら彼女に用件を伝えました。恋愛体質を発揮している場合

はありません。

  

  

 

 

  

 


 

「あのさ・・・Jさんって・・・ここのクラスだよね?いるかな?」

 

むかっ  

「ああ・・・Jちゃん?・・・ちょっと待って下さいね」

  

 

 

 

 

 

 

 

その女子生徒は「なんだ私じゃないの?」とでも言いたげな様子で後ろを

振り返り、大きな声でJの名前を呼びました。

  

 

 

 

  


アップ 

「Jちゃーん・・・「普通科の男子」がお呼びですよー!!」

  

 

 

 

 

 

 

 


わざわざ「普通化の」と「男子」を強調してJを呼ぶ声を聞いて、教室内の

女子生徒たちはいっせいにくすくすと笑い始めました。いったい何がおか

しいのでしょう。年頃の女性の所作は理解不能でした。

 

 

 

  

 

 

ラブラブ 

「やめてよぉ・・・押さないでってばぁ・・・」


 

 

 

  

  

  

聞き覚えのある軽やかな声がしました。一番の奥のグループの中から、背中を

押されるようにしてJが私の前に姿を見せます。一瞬私と目が合ってニコリと笑い

ました。押された勢いでちょっとつまずきそうになりましたが、体勢を立て直して

私の待つ扉の方へゆっくりと歩いて接近してきます。すごいオーラです。

 

    


 

  

 

クラッカー 

「ひゅーひゅーーー♪♪」

   

 

 

 

 


 

よくある冷やかしの小さなコーラスがあちこちから聞こえます。Jはそんな声

にはまったく構わず、かすかな微笑をたたえたまま私のもとへやって来ます。

私は彼女の放つ気高いオーラに負けないように必死で虚勢を張って表情を

引き締めました。

 

 

まもなく運命の瞬間です。

 

 


 

長くなってしまいました。今回はこのあたりにしておこうと思います。

ここからの展開は急に早くなると(今のところは)思っています。

若き日の情けない私に、どうか呆れてしまわないで次回もお越し

下さいますよう、心よりお願い申し上げます。 

 

 

  

 

だって・・・いまだに胸が痛みますから・・・。

  

 

  

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