こんにちは。今回は、『地方銀行フードセレクション2011』に
ご出展予定の石橋工業株式会社さんを訪問してきました。
「麦のいしばし」といえば、九州だけではなく全国的にも有名な精麦の専門メーカーで、
原料の穀物の仕入れから、サイロ保管、精製、出荷、加工品の製造販売、
外食までの手がける大麦のプロフェッショナル企業。
この会社で開発や販売を担当する石橋洋明さん(取締役)にお話をお聞きしました。
大麦の魅力を自分たちの手で伝えたい
石橋さんは笑いながら「人にいくら美味しい、美味しいから使ってください。
食べてくださいと言っても説得力がない、だから自分たちで作ってみて、自信のあるものを
製品にしてレストランやパン工房でお客様に買っていただいている」と語る。
石橋工業の創業は大正7年と90年以上もの歴史がある伝統企業。
筑後の本社工場以外にも、国際物流拠点博多港に面する須崎埠頭には、
大小60基ものサイロ(穀類の保管庫)を保有している。
年間数万トンにのぼる原料穀物は、麦ごはんや雑穀ごはんの原料のほか、
味噌や焼酎などの原料に使われる食品原料や牛などの家畜の飼料として
高い評価を受け広く使われている。
かつてから原料として利用されてきた大麦ではあるが、
食品としての大麦の機能性、栄養価の高さが一般的には普及していなかったことから、
石橋さんが先頭に立ち大麦の魅力を伝えるために、様々な新しい挑戦を重ねてきたのだ。
大きな工場には、地元住民など一般の人が見学できる見学ルートを設け、
生産工程を見ることができる。ここには一般の人意外にも、大麦生産者やJA、流通関係者、
加工メーカーなど年間1000人以上の見学者が訪れる。
工場敷地内には、平成21年オープンした自社で経営する
ベーカリーが併設され、素材にこだわった美味しいパンが近隣住民や周辺市町村にも
口コミで広がり、現在では地元でも人気のパン屋さんとして有名で、
取材した午前11時ごろにも子供連れの主婦のみなさんがレジに行列を作っていたほどだ。
「パンをつくるのは、本当に腕しだい、腕ひとつで味がどうにでも変わる。
自分にはなかなかできないのです。」と苦笑いする石橋さん。
実はこのベーカリーの立上げの責任者として陣頭指揮をとった石橋さんは
本部の立場から指示するだけでは、自分たちが目指すパン作り、店作りができなかったために、
自ら10ヶ月間現場に入り店長として店の立上げに奮闘したという。
多くのお客様が来店するベーカリーに、次はイートインのコーナーと駐車場の増設を計画しており、
大麦の魅力を伝えて、知ってもらい、親しんでもらい食べてもらいたいという熱い気持ちが伝わってくる。
平成13年福岡天神にオープンした和食店「旬菜 麦や七蔵」は、
原料素材や味には自信があったものの当時は大麦の良さ、おいしさが理解されず苦戦した時期もあったが、
徐々に口コミでお客様の支持を得て、かんばんメニューともいえる「麦麦ハンバーグ」は
たっぷりの大麦をひき肉にブレンドした味と食感が人気となりOLや会社員だけでなく
地域住民のファミリー層、主婦層の人気も高い。
また翌年14年には本格的なイタリアン「trattoria NANAKURA」を博多にオープン。
穀物や野菜をふんだんに使うメニューも多くのお客様を集めている。
このように、大麦の魅力を伝えるために業種業態にとらわれず、
新しいものおいしいもの作りに挑戦、努力する姿勢は、石橋家の食卓から生まれたとも言える。
家庭で作るお寿司の寿司ご飯は白米ではなく、麦ごはんの寿司飯であったり、
惣菜やお菓子、パンなども石橋家のレシピが実際に商品化された例も多いという。
レストランで出されている人気商品「麦麦ハンバーグ」も
実は石橋さんの母親のレシピを商品化したもので、
彼にとってはまさに母の味そのものなのだ。
おいしいものを自ら提案して販売する石橋さんらは、一般の家庭の食事のサイクルの中で
栄養価が高く安全かつ高付加価値の大麦商品をいかに多くの消費者に食べてもらうかを
常に考えているのだ。
商品開発では「雑穀美人」シリーズや「七福米」「国内産十穀」などの
雑穀ごはんの素、親しみのある押し麦ご飯の素、大麦の特徴を生かした
「かりんとう(大麦)」や麦せんべいも定番。
大麦を使ったお菓子デザート類では麦美人アイス「大麦アイス」や
大麦を原料とする大麦黒酢をつかったさっぱりとした風味の「大麦黒酢アイス」も
同社ならではのオリジナルのデザートだ。
大麦のすばらしさを知っていただくためのイベントや展示会に積極的に参加しており、
今年初参加の地方銀行フードセレクション2011をはじめ、
フーデックスジャパン、西日本国際食品見本市(北九州)の国内イベントや
海外では香港での商談会にも参加して大きな反響を得ている。
また、消費者向けには大麦の普及促進のためにさまざまな料理教室、コンテストを展開しており、
婦人会、親子料理教室、男の料理教室、ラジオ局とタイアップした参加型の料理イベント、
レシピコンテストなども展開し、原料加工メーカーの枠を超えたアイディアと行動力で
大麦の魅力を発信しているのだ。
筑後平野から創業した石橋工業は、消費者視点にたった「健全な食生活」への
こだわりをモットーに、五穀豊穣にも表現される日本伝統の穀物のすばらしさを伝えるために、
大麦にかける石橋さんの夢はさらに広がっていく。
(石橋工業の石橋取締役)