香山リカ『しがみつかない生き方』読了 土台の有無 | 15分早く帰れる!【オフィス仕事術】

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香山リカ『しがみつかない生き方―「ふつうの幸せ」を手に入れる10のルール (幻冬舎新書) 』を読み終えました。この本の一番のウリは「勝間和代を目指さない」。




ブームがあれば必ずアンチも発生して、この本はそれを標榜して売りに出されています。狙ったとおりに売れていて、狙われたとおりに買ってしまいました…。




「しがみつかない」をキーコンセプトに、「ふつうの幸せ」を得るためにはどんな考え方で過ごせばよいのか、が提示されています。




読んでみると、アンチ勝間さんというよりは「アンチ今えらいと思われている諸々の条件」。


 ・夢を仕事にする
 ・充実したモテや出会い・恋愛をしている
 ・お金を儲けている
 ・私はこれだけすごいと自他にアピールできる
 ・結婚や出産で人生に深みを出す
 ・生まれた意味、目的を問う


確かに。これだけ見ると、最近はいろんな目標や目的、見せ方、生き方に縛られているのだなと思います。情報が多すぎて振り回されているのは事実。というか、アメブロガーでここに当てはまらない人は少ないかも。



それらに「しばられない」という意志を持つのは大切です。でも気になるのが3つ。

 1「しばられない」という新しい「しばり」になっている

 2 筆者の香山さんも成功者であり、安定した場所から話している

 3「~と思う」「~のではないか」という非断定調が多い


昔、泉朝人さんが「『ナウの崩壊』というナウ」という表現をしていましたが、それに似ています。「しばられない」のも新しいブームになりつつある。本質的には「しばられない」状態にはなれない。



また、香山さんは精神科医として働いていて、本人は「普通に来たらここにいた」というスタンスですが、やっぱり恵まれた位置からの視界であることには変わりなく。



「頼るべき経済的・精神的土台がないからこそ、しばられることで安定する」という人の可能性はあまり考えられていない気がします。良くも悪くも香山さんの位置から見える内容です。「しばられない」という生き方を選択できるだけの強さを持つ人の視点。



あと、自分でも気を付けなければいけないと思ったのが「~と思う」のような曖昧な断定が多すぎる点。内容が弱まってしまい、せっかく納得し掛けたのに弱々しい語尾で最後の一押しがなく、ちょっと物足りなくなることがありました。




ただ、やっぱり白眉だったのが最終章に丸々書かれた「<勝間和代>を目指さない」。



 ・努力すれば夢は叶う

 ・成功したとすれば、それは私の努力の結果


この考えは自分が「成功しないという不運に偶然当たらなかった」という考えは全く否認されて、成功が自分の努力に起因しているものとする。




同時に「チャンスを得る機会すらない」「自分以外の要因で不運に見舞われた」「家庭環境の要因が大きすぎる」人たちを否定することにつながっている。それは「あなたの努力が足りないから」。




大学生の時に会計士の資格を取り、家族の人脈から生きた経営を見る機会に恵まれ、エリート中のエリートだけが入れる外資コンサルタントでさらに結果を残して世の中に出ている勝間さんがやっていることを、みんなが実現できるわけではない。




勝間さんが悪い、というのではなく「このメソッドを辿れば失敗することはない、失敗するのは本人のせい」という自己否認がブームになっていくことに対して、香山さんは精神科医である自分の臨床経験から警鐘を鳴らしている。




精神科医だから知っている事例を見るのは勉強になります。この一章を書くためにこの本を書いたのかな。文章の強さや濃さがここだけ違うようでした。




この香山さんの考え方にも「しばられない」ように気を付けて読めば、また新しい視点を得られる本。




しがみつかない生き方―「ふつうの幸せ」を手に入れる10のルール (幻冬舎新書)

しがみつかない生き方―「ふつうの幸せ」を手に入れる10のルール (幻冬舎新書)



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