たくさんの作品に出会う機会を提供してくれたラブコラボ研究所も
いよいよ最終日を迎えることになりました。
ずっと読み専でしたが、感謝の気持ちをこめて、
卒業レポートを提出させていただくことにしました。

すでにもう恥ずかしくて逃げ出したくなっているのだけど
「もっとがんばりましょう」のスタンプを頂戴いただけるとうれしいです。

風月さま、ピコさま、seiさま、所員のみなさま、
素敵な作品の数々に巡り会わせてくださって、ありがとうございました。


ご覧になる前に...

原作者様、原作とは一切関係ございません。
原作の設定、お話の進行から浮かんだ妄想をまとめたものになっています。
原作と異なる点、原作ではありえないこともでてまいります。

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「卒業」 1


ヒール兄妹としての生活を無事?に終えたキョーコだったが、
恋心を隠し通すということをすっぱりとやめた蓮から
連日、猛アタックを受けていた。

ラブミー部部室で、ぐったりと机に突っ伏すキョーコに
琴南は呆れ顔だ。

「アンタ、まだ、OK出してなかったの?
 いつまで敦賀さんに”お預け”するつもり?」

「だって..
 きっと、一時の気の迷いに決まってるもの。
 そうよ、そう!ずっと一緒にいたから、情が移ったっていうか、
 ほら、胃袋をつかまれたっていうか、
 敦賀さんが好きなのは、私じゃなくて、私が作る料理で..」

「ほら、また、そういうことを言う。
 敦賀さんがそんな軽い気持ちじゃないことくらい、
 アンタが一番わかってるくせに」

たしなめるようにいう琴南に、キョーコは顔を曇らせる。

「あ、ほら!モー子さん!
 そろそろ時間だからテレビつけなきゃ!」

「ああ、社長から視聴を義務づけられちゃったワイドショーの時間ね。
 もう、なんだって、あんなの見なきゃいけないのかしら
 『君たちはもっと、自分たちの言動がどう伝えられるか考えるべきだ』
  ...ですって?
 ちゃんと考えてるわよ、もうっ!
 嘘をついたり媚売るのが嫌いなだけよ!」

キョーコは琴南の関心が自分からローリィに移ったことに安堵すると
テレビのチャンネルをあわせた。
とたんに、甲高い興奮気味の声が飛び込んでくる。

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「さて、今日は朝からビッグニュースが舞い込んできました。
 なんと、酒井正人さんと神野美穂さん電撃入籍です!
 酒井さんが神野さんに猛アタックをかけてのゴールイン!
 おめでとうございます。
 いやもう、酒井さんといえば微笑みの貴公子。
 あの笑顔で押し切られたら、さすがの神野さんも陥落してしまうのは
 しょうがないっちゃしょうがないですよねー
 おふたりとも演技に定評のある実力派。
 街の声も、おふたりを祝福していました。
 さて、と...
 微笑みの貴公子がとうとう独身を卒業してしまったわけですが、
 みなさん!残る独身といえば、この人ですよね!?
 春風のプリンス、抱かれたいNo.1の敦賀蓮さん!
 こちらも、もしかしたら、もしかしたら..ですよ?」

「え?もしかして、
 今まで全くといって恋バナのでなかった敦賀さんに初ロマンスですか?」

レポーターからもたらされた情報にスタジオがざわめきたつ。
画面に大きく『敦賀蓮、話題のCM美女に熱烈ラブコール!』と表示されると
レポーターは得意げに鼻を膨らませ、フリップを取り出した。

「こちらは先日からオンエアされている
 アルマンディ25周年を記念して作られたCMに起用された紅(KOU)さん」

「あ、その女性なら僕も知ってる!今、一番の話題の人だよね。
 俺、このひと大好きなのに、なに、もう、敦賀君のなの?」

「はい、まずはその話題のCM、アルマンディ25周年記念CM
 第一弾「あなたに 欲しいと言わせたい」をご覧ください。
 このCM、今はあの、クー・ヒズリの奥様となっているジュリエナの、
 クーとの出会いのきっかけともなったアルマンディのCMを
 今回、25周年を記念してリメイクされたものなんですが..
 どうです!この気品!この憂いを帯びた微笑み!
 この話題の女性なんですが、名前以外の経歴や出身などについては
 非公開の謎の美女!そこで我々はもっと情報を得るべく頑張りました!
 アルマンディといえば、敦賀さん!ですよね?
 で、お話をうかがいにいったところ、
 『彼女にお会いできるのなら、ぜひお会いしたい』と!」

「え?それだけ?」

「これだけのコメントと思って見過ごしちゃ素人ですよ?
 今まで同じようなコメントを何回も求めましたけど、
 敦賀さんといえばレポーター泣かせ。
 いつも、そつなく質問をかわして
 『会いたい』なんてこと言ったことないんですから!
 彼に『会いたい』と言わせるほどの女性だということなんです!」

司会者からの疑問を受ける形で説明するレポーターに、スタジオの皆がうなづく。

「いい女だもんなぁ..さすがの敦賀君も陥落か」

司会者も納得顔でうなづく。

「この記念CMは第一弾!ということですから..
 もしかしたらもしかして、ジュリエナとクーのように第二弾で敦賀さんと共演!
 そして結婚!ってことも...」

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プチっ!

琴南は黙ったまま、テレビの電源を切った。

「気にすることなんかないわよ、キョーコ。
 どうせ「やれやれ、あんな使われ方をするんじゃ、もうなにも言えないな」」

途中から割ってはいった声に、琴南が振り向いた。

「あら、ご本人の登場ですか」

「ね、最上さん、あんな扱われかたしちゃったけど、あれは..」

「いいんです!敦賀さん。
 私なんかにそんな弁解めいたことしてくださらなくても。
 敦賀さんと私は、そういう関係ではありませんし..
 その...
 敦賀さんも、私をからかって遊ぶのを卒業してですね、
 紅さんのようなひとと、おつきあいされるべきです」

「俺は、最上さんがいいんだけど」

「何度もお返事してますけど、ダメです。
 私じゃ、釣り合いません!」

「釣り合うって、なにそれ。俺の気持ちは無視なの?」

「あんなに素敵なひとのそばにいたら、きっと敦賀さんも大好きになります」

「最上さんは俺の気持ち、そんな程度に考えてたの?
 俺が、そんな人間だと?」

「境さんと神野さんだって、おふたりの釣り合いがとれてたから
 みなさんから祝福されてるんです。
 私なんかじゃ、敦賀さんの横に並ぶのは無理なんです。
 紅さんなら、みんな納得じゃないですか。」

蓮から表情が消え、場が凍る。

「そう.. それが最上さんの答え?
 前言撤回するなら、今だよ?」

うつむいたまま、何も言葉を返せないキョーコに
蓮は静かに続けた。

「ああ、そう。わかった。
 そうだね、俺もいいかげん、卒業しないとね。
 最上さんは、アルマンディのCMをはれるくらいのキャリアがないと
 俺と釣り合わないって言うんだね。
 わかった。そうさせてもらうよ。キミの言うとおりにするよ。
 渡してた合鍵、返してくれる?
 俺、今夜から仕事でしばらく帰れないんだ。
 キミのことだから、俺がいない間にキミの荷物運び出しちゃうだろう?
 それは許さないから....
 俺のいるときにちゃんと挨拶してからにして」

キョーコは蓮に視線をあわせないまま
差し出された手のひらに鍵を乗せた。
瞬間、蓮の指が彼女の手をつかみそうな動きを見せたが
渡された合鍵を受け取ると
「さよなら」と、ひとこと残しただけで部室を後にした。




合鍵を返したあの日から、蓮からの電話もメールも途絶えた。
移動先やLMEでもたらされていた”偶然の出会い”は
蓮自らが望んだからこその”偶然”だったのだと思い知らされた。

「まだ、たった一週間しかたっていないのに..」

週刊誌を飾る蓮の写真にキョーコはつぶやく。

「こんな気持ちになるなんて...
 こんな気持ちで会いたくないのに...
 次の現場、敦賀さんがゲストだなんて..」

そんな気持ちをけどられないように笑顔を貼付け、
蓮の楽屋に挨拶に向かう。

「敦賀さん、おはようございます。
 今日はよろしくおねがいします」

「ああ、最上さん、ひさしぶりな感じだね。
 今日はよろしくね」

それだけで終わった楽屋でのやりとり。
キョーコは蓮の気持ちがもはや自分にはないことを悟った。



(2へ続きます)

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いやもう、自分の構成力のなさに泣いてます