「ラストショー」 ピーター・ボグダノヴィッチ監督!! | ネオ・ビジョンかわら板

「ラストショー」 ピーター・ボグダノヴィッチ監督!!


ラストショー

監督・脚本: ピーター・ボグダノヴィッチ
原作・脚本: ラリー・マクマートリー
出演: ジェフ・ブリッジズ/シビル・シェパード/ティモシー・ボトムズ/ベン・ジョンソン/クロリス・リーチマン/ランディ・クエイド/エレン・バースティン/ アイリーン・ブレナ/クル・グルガー/サム・ボトムズ/シャロン・タガート


この映画は・・・村上龍の「映画小説集」の中の1話として紹介されていたのをきっかけに、見ました。


まずは、結論。
この作品は、傑作、と呼ばれるにふさわしい、味わい深い作品でした。


ストーリーは・・・


1951 年、テキサスの小さな町アナリーンには古びた小さな映画館があった。そこは若者たちがデートできる唯一の場所でもあり、ソニー(ティモシー・ボトムズ)ら若者たちはカウボーイの生き残りでもある経営者サム(ベン・ジョンソン)を尊敬している。しかし、やがてサムが死に、ソニーは朝鮮戦争へ出兵することに…。


映画館が若者たちの唯一に近い社交場だった時代。
まだSEXするには結婚が前提、という時代。ロックンロールがまだなかった時代。
ブルジョアとそうでない若者たちの差が、徐々に歴然となっていく時代。
そして、アメリカという国家の「正義」や「理想」の偽善が、徐々に明らかになっていった時代・・・

そんな時代を背景に、退屈なテキサスの小さな田舎町の青春群像が、淡々と描き出されていきます。


しかし・・・これはけっこーつらく、どんよりとした気分にさせてくれる映画です。

いってみればこの映画は「青春映画」、というよりは、「青春期の晩年」(さらにアメリカという国の青年期の晩年でもあります)を描いた映画ではないでしょうか。



んで、この映画は、青春まっさかりの若者が見るには、おそらくピンとこない作品でしょう。

しかし、青春をとっくに通り過ぎた自分あたりの世代・・・あの青い時代にやり残した、様々な「柔らかい後悔」を抱く世代が見ると、間違いなく切なくなる映画です。



村上龍の小説で、年上のおばさんと同棲していて、インチキマリファナを売りさばいて暮らす、善人でもなければ悪人でもない中年男が、この「ラストショー」を見て、「ちくしょう・・」とつぶやきながら涙する場面があるのですが・・・それを見た、若い主人公(村上龍の投影)が、「この男をこんなに泣かせてしまうこの映画が、急に許せなくなってきた」というくだりがあります。


この映画は、まさにそういう映画。村上龍は、この映画の持つ雰囲気を、シンプルながらも見事に表現していたと、思いました。


この映画は、中途半端な青春時代を過ごし、中途半端にこずるくなってきた自分の世代の男性は、是非見てください。たぶん、この映画が身につまされるかどうかで、今の「あなた」が、どんな「大人」なのかが分かる・・・そんな映画です。


PS:実は、夏休みを機会に、10年以上前の、自分の青い時代の映像作品を、VHSからデジタルに変換する作業をしている合間に、この映画を見てしまいました・・・そのせいか、余計身につまされてしまった自分が、ちょっと情けなくなってしまいました。あんまり見直したくない映画ですな、これは。