【判決報告】
追い出し行為の不法行為責任を認め慰謝料30万円が認容された事例
(東京地判平成22年7月30日、アムス・エステート、J・CCO事件)
第1 判決情報
1 判決年月日
平成22年7月30日(確定)
2 事件番号、係属部、裁判官
平成21年(ワ)第12334号 損害賠償請求事件
東京地方裁判所民事第1部
裁判長裁判官 甲斐哲彦 裁判官 三浦隆志 裁判官 沓掛遼介
3 提訴日 平成21年4月15日
第2 事案の概要
原告が、被告アムス・エステート株式会社から居住用アパートを賃借していたところ、賃貸人から賃料等の収納代行業務の委託を受けた被告J・CCO株式会社の従業員が、賃料の滞納を理由にして行った本件物件の玄関ドアの施錠行為、荷物撤去行為などの違法行為によって原告に損害を与えたとして、被告らに不法行為に基づく損害賠償を求めた事案。
第3 裁判所の判断
1 追い出し行為の違法性を認める
追い出し行為(物件への無断立ち入り、施錠行為、荷物撤去行為)の事実を認定し、「これらの行為は法律上の手続によらずに原告の本件物件において居住する利益を一方的に奪った違法な行為といわざるを得ない。」
と判示し、賃料回収代行業者である被告J・CCOが行った追い出し行為の違法性を明確に認める。(賃貸人である被告アムス・エステート及び会社の代表者らの責任は否定。)
2 慰謝料30万円
被告J・CCOが追い出し行為によって生じた精神的損害として金30万円の慰謝料の支払いを命ずる。
3 その他
弁護士費用として10万円、敷金として15万円の支払いを命ずる。
第3 本判決の意義
賃貸住宅において、家賃滞納を理由に物件への無断立ち入り、施錠行為、荷物撤去行為などの違法な自力救済行為等を行う業者(「追い出し屋」)の問題が、近年社会問題となっている。
本件は、賃貸人である不動産業者から家賃回収の委託を受けた専門業者による追い出し行為の事例であるが、裁判所は、当該行為の違法性を明確に認め30万円の慰謝料請求を認めた。
追い出し屋を巡る訴訟では、これまで慰謝料を命ずる判決がいくつか出されているが、近時出されている裁判例は、大阪、名古屋など東京以外の地域の判決が目立っていた。
本判決は、首都圏にある不動産業者について、東京地裁において追い出し行為を認めた点で重要な意義を有する。