【事件紹介】追い出し屋に対し220万円の損害賠償を命じる | 首都圏追い出し屋対策会議のブログ

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家賃保証業者、不動産管理業者、賃貸人らによる違法な追い出し行為の救済に取り組む弁護士、司法書士の団体です(代表:宇都宮健児弁護士、事務局長:戸舘圭之弁護士)。

追い出し行為は許されない~追い出し屋に対し220万円の損害賠償を命じる


住まいは生活の基盤になるものです。安心して住める場所がなければ、生活の平穏は保障されません。裏を返せば、「住まいを取り上げる」と脅すことは非常に厳しいプレッシャーになります。

たとえ家賃を滞納した賃借人に対しても、厳格な法的手続き(明渡訴訟)を採ることが求められます。賃借人の生活の基盤を失わせることになる、鍵を一方的に交換する、荷物を撤去するなどの行為(追い出し行為)は、家賃を滞納した賃借人に対しても違法行為で許されません。

しかし、法的手続きを行うと時間やお金がかかる等の理由から、勝手に鍵を交換したり、脅したりして実力で追い出す違法な行為を行う管理会社などもあります。

そんな違法な追い出し行為を管理会社から受けた男性が、2010年2月に損害証請求を管理会社に東京地裁に提訴しました。この男性は、失業により家賃を支払えなくなったため、管理会社から違法な追い出し行為を受け一時ホームレス状態に陥っただけでなく、アルバムや過去の手紙などの思い出の品もすべて含め、室内の荷物を勝手に処分されてしましました。

裁判では、被告の管理会社は、任意の明渡であり違法行為はなかった、むしろこのような訴訟をされて迷惑だなどと主張しました。

しかし、東京地裁は2012年3月、男性は転居先も決まっておらず、所持金も4000円程度しかなく、新たな勤務先から住所不定となったことにより仕事を取り消されてしまうおそれもあった状況ではおよそ任意に退去したとは考えられないと判断しました。

そして、管理会社の担当者が「暴力的な行為までは行っておらず、また、退去要求の態様が、その行為自体が刑法上の脅迫、強要行為に該当するにはいたらない行為であったとしても、家賃を滞納している負い目のある賃借人に、法的手続きによることなく、着の身着のままでの退去を迫ること自体が社会的相当性に欠け、違法行為である」として、220万円の損害賠償請求を認めました。

家賃を滞納している賃借人は負い目を感じていることや法的な知識の不足のため、暴力行為などがなくても「直ちに出ていけ」などといった理不尽な要求に対してでも従ってしまうことがあります。この判決は、そういった賃借人の事情をよく汲んだ判決と言えます。

しかし、いくら賠償金をもらったところで、アルバムなどの思い出の品は返ってきません。こういった違法行為をなくすには、法律を制定して家賃の取り立て行為の規制を行うことが必要です。一旦は「追い出し屋規制法」が参議院で全会一致で採決されました。今回の判決を機に再度「追い出し屋規制法」を求める運動を強めていきたいと思っています。