ジャッキー・チェンと「中華一番」は好きですか? -ひげ太夫『南獣トウゲ』-
えーと、この芝居、あたしは苦手だった。
でも決して駄作じゃない。
他には無い独自性があって、初めて見るタイプの作品だった。
一言で表すなら『物語仕立ての組体操』だろうか、
屋台・国王の墓・果ては城まで役者の体で表現する。
三人ぐらいが縦につながって『突風』になって走り回ったり、
サーカス出身の人達で創作ダンスを作ってみました、って感じになっている。
演劇と言うよりダンスに近い作品だけど、物語も骨太。
話の内容は、
香の国という一国を舞台に「常々拳(じょうじょうけん)」で主人公達が戦い国を救う、
壮大な中国活劇。
高級スカーフや粉焼きが武器になるなど破天荒な展開で、
掃除のおばちゃんまでカンフーやっちゃうぜ、みたいな
ジャッキー・チェンっぽいノリで作られている。
格闘料理漫画の『中華一番』が好きな人なら、この芝居は絶対ハマる。
『少林サッカー』に爆笑してDVD買っちゃった人も必見。
そう、あの『少林サッカー』『少林卓球』をCG無しでやってるようなもんなのですよ。
中国の映画や漫画が好きだったら、『南獣トウゲ』のギャグも絶対好きになる。
ここまでえらいこと肯定的に書いてきたけど、
じゃあ何故あたしは苦手だったのか。
それは簡単な話で、
中国物の作品の世界観があたしに合わなかったからなのですね。
これでもかこれでもかと『ドドーン!』と登場する城、
全部が全部クライマックスっていうこてこてした造り、
徹底して造り込まれているだけに合わない人にはとっても辛い。
城を表現する組体操は壮大で
身体表現のすごさに感動するんだけど、
その城自体が話の中に三つか四つぐらい出てくるのね。『ドドーン!』って。
自慢じゃないが
映画界で名作と謳われた「さらば、わが愛~覇王別姫~」でさえ冗長に感じたあたしには、
この話は見せ場が続きすぎて退屈だった。
「合わないな」と感じた理由はもう一つある。
組体操は計算しつくされた段取りの美しさが魅力。
だから組体操と話の運びを同時にやると、
どうしても台詞にまで段取りが移ることになる。
その段取りになった台詞回しが個人的に好きじゃなかった。
日本の古典芸能には段取りゆえの様式美もあるけど、
その視点で見るには少し拙いように思う。
効果音とか状況説明を全部台詞でやっちゃってるところは思い切ってて好きだし、
ぜひ完成度を上げていってほしいもんだ。
あたしは好きじゃないんだけど、なぜか次回作のチラシを見ると心が動く。
また中国物かなあ。