この前、インターネットラジオで、

「グローバル人材」を育成するにあたり、大学入試が見直されている、

という日本のニュースを聞いた。




日本の大学入試の英語試験では、スピーキング試験がほとんど行われていない。

確かに、短時間・公平・大量に行われる大学入試に、スピーキングを導入するのは、かなりの難題だろう。

しかしそれを避けて、採点の楽な筆記試験のみにしてしまうと、どうしても学校での英語授業は、読み書き重視になってしまう。



でも読み書きができても、肝心の英語が話せないと将来グローバル人材は育たない。

では大学入試にスピーキングを導入するにはどうすればいいのか。



ということで、番組の中で、大量に効率よくスピーキング能力を査定する方法についての取り組みが、いろいろ紹介されていた。



なるほどね~、と感心しながら聞いていた私だったが……

この番組のまとめのほうで、実際の授業の音声が流れた。



「いいですか!不定詞には、3つの用法があってですね!」


と懸命に説明する女性教師の声。



そしてマイクは再び、ラジオ局に戻って、

「このような文法中心の授業が続いてる限り、なかなかスピーキングテストへの移行は難しいですね」

とアナウンサーが締めくくろうとしたとき、

なるほどね~、のうなづきは止まった。



スピーキングの大切さは切実に感じるいっぽう、文法を軽視する風潮については疑問を感じる。



日本人が英語をしゃべれないのは、文法ばっかりやってるからだ。


というステレオタイプの議論はよく耳にするが、では、文法を勉強しなければ、英語を話せるようになるのだろうか。




とにかく話せ、というのは、車の運転を習ってる人に、



交通ルールはいいからとにかくアクセルを踏め、といきなり車道に出すのと一緒ではないか。



とか言いつつ、私もどちらかというと、日本では文法は避けてきた。

というか、マニュアルとか読むのが嫌いで、まずは使ってみるタイプ。(だからよく物を壊す!




そんな自分が海外で英語を教えることになって、しかも「基礎英文法」をまかされてしまい、もう避けては通れなくなってしまった。

今思えば、これがラッキーだったのだが。




「英語を話せること」と「英語を教えること」はまったくの別モノ。

やっぱり文法を極めるしかないのか…….

日本でも避けてきた英文法に、海外で正面から向き合うことになるとは。




まずは片っ端から文法書を読んだ。 

なるほど、英語は支障なく話せてても、微妙なニュアンスの違いとか、暗記して覚えてたフレーズがなぜこうなるのか、クリアになって面白かった。




なんで学生時代に、文法をもっともっと勉強しなかったんだろう。

誰もが思うように、私も最初はそう思った。



いや、違うな。 多分、文法は勉強した。

これでも結構マジメな学生だったし、語学は得意なほうだった。



でも、文法を教えてもらったときに、そのつど、それを声に出す練習をやらなかった。

リーディングで教科書を音読する授業はあったけど、さらに応用して、その文法を使って会話する練習が足りなかったのだ。




英語で話せる喜び、それを教えてもらえず、文法だけで終わると、つまらない。

スポーツのルールだけ必死で覚えて、試合には出られないようなもの。

そして文法が嫌いなる。やがて英語も嫌いになる。 

英語嫌いになったのは、文法のせいだとインプットされる。



英語をペラペラに話してる人は、ほら、きっと文法なんて考えちゃいないよ。

クチから自然に出てきてる感じだもん。 

とうらやましがる。



でも、実際のところ、文法がないと会話は作れない。

逆に、文法さえできれば、会話はいくらでも作れる。



会話ができないのは、文法力がまだまだ足りていない証拠だ。

いくら流暢に話せていても、文法に自信がないと、いざというときに応用が利かないから、微妙なニュアンスが伝えられない、

という人は多い。



たとえば、初めて運転する道でも、青信号が「GO」だと知っていたら、何も恐れずアクセルが踏めるし、赤信号で止まる。

どの土地にいっても共通のルールは変わらない。



文法ってそんなものだ。

そんなものじゃないといけない。



違うのは、運転の場合は路上に出るまでに運転上のルールをひととおり習っておく必要があるけど、英語は、今日習ったルールをすぐに使える。

文法をすべて頭にいれるまで待たなくてもいい。



いや、逆に待ってはいけない。 

単純な文法を使って、単純な会話を話せる。

それを積み重ねながら、土台を作っていく。



これってすごく重要と思う。

文法を習って覚える時間と同じく、いや、それ以上に、覚えたルールを言葉にする時間が必要だ。




スピーキングに力を入れる、大賛成。

でも、簡単な会話ならまだしも、本気で自分の言葉で話したいなら、文法は必須だ。

回り道なようでも、結局それが英語をマスターする近道。



文法とスピーキングを切り離してはいけない。