『奇跡』完成披露試写会(於:有楽町朝日ホール)
舞台挨拶登壇者:前田航基、前田旺志郎、オダギリジョー、樹木希林、阿部寛、内田伽羅、林凌雅

東京では初お披露目となった今日の『奇跡』完成披露試写会、一生懸命応募した甲斐あって当選し、行ってきた。オダギリが帰国しているという情報があったので、来てくれるといいなあと思っていたところ、やっぱり来てくれた。本当に久しぶりの姿に大感激。生オダギリが初めてという同行者が思わず「カッコイイ!」と溜息をつく素敵なオダギリだった。映画の感想は後でゆっくり書くとして、もうネットでは記事もたくさん出ているようだが、舞台挨拶の様子だけをまず書いておこう。とんとんと話が運んだので、三分の一くらいしかメモができなかったが、書き漏らした部分の補足、うろ覚えで捏造になってしまったかも知れない部分の訂正はメディアにお任せするとしよう。

壇上には、上りと下りの新幹線がすれ違う様をあらわした大きな背景パネルが置かれている。MCはおなじみ伊藤さとり。まえだまえだを先頭に、舞台袖からキャストと是枝監督登場。登場するまで登壇者の名前が呼ばれないので、オダギリが現れた途端、心の中でガッツポーズ(笑) 韓国での厳しい撮影のためだろう、かなり顔が引き締まり、痩せたように見えるが、精悍さが加わり、実に正統的な男前。髪の毛は短いが、てっぺんを立てているので、とても現代的。これくらいの長さが似合うなあと感心。口髭、顎髭あり。白いインナーに、黒(たぶん)のボタンの多いチュニック丈のスーツ(シルエットとしては、「熱海の捜査官」のときのイメージ)。パンツは細身で、足首丈という短めのもの。素足に黒いシューズ。

ひとりひとりの挨拶が始まる。
是枝:こんなにたくさん集まって下さって、本当にありがとうございます。去年2か月かけて子どもたちと撮影をし、素敵な映画が出来たと思っています。スタッフ・キャストとともにこの日を迎えられたことを嬉しく思っています。

前田航基:ゴールデンウィークで、一番遊びに行ける時期に、こんなに集まっていただいてありがとうございます(このあたりで、すでに航基の達者な挨拶にどよめきが起こる)。メッチャ緊張しています。オーディションを通ったときには、すごく嬉しかったんですが、まさか主役だとは思っていなかったので、ちょっとクサくなっちゃうんですが、今ここに立っていることが奇跡です(会場笑) 世界の是枝監督ですので、素晴らしい映画です。

前田旺志郎:初映画で初主演で、最初は大丈夫かなと思っていたんですが、みんながよくしてくれて、楽しい撮影だったので、楽しい映画になりました。

オダギリ:こんにちは。オダギリです。監督が喋り、主演二人が喋り、あまりに大した喋りなので、喋ることがなくなったような気がします。映画は昨日の夜観て、しばらくぶりに良い映画だなあと思いました。

樹木:前田くんの二人の将来を不安に思っていましたが、今日お母さんにお会いして、そういうお母さんがついているなら大丈夫だなと安心して、ここに立っています。

阿部:子供たちにとって壁となる権力のような部分を引き受けさせていただきました。子供たちの芝居のナチュラルさとのバランスをとるように是枝監督と役を作って行きました。

内田:初めての経験で、難しいこともありましたが、是枝さんからいろいろ教えてもらって、お芝居が面白くなってきました。トラックのシーンが風を受けて気持ちがよくて、ワクワクしました。

:監督は子どもたちの素の姿、普段の姿を出してくれる素晴らしい監督です。素晴らしい監督が撮った映画は素晴らしい映画なので、楽しんで下さい。

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個別質問に移る。

MC(監督に):子どもたちがとっても自然です。独特の演技指導があったと思いますが?
是枝:子供を撮るのは、楽しい部分と難しい部分があります。オーディションでひらめいて起用した子供たちと、一緒にバーベキューしたり、服を買いに行ったりして雰囲気を作って行きました。脚本はあるんですが、現場で子供には渡さず「オダギリさんがこう言うから、そのあとでこう言ってね」という風にやって行きました。

MC(航基に):名演技でしたが、大物の俳優さんと共演されていかがでした?
航基:すごい人たちなので、単純に嬉しいと思いました。嬉しい反面緊張しました。
樹木:互角にやりましたよ。孫と祖母というより、役者同士という感じ。
航基:それが恐れ多いんです(笑)上下関係みたいな、本来あるべきものがなくて、緊張しましたし、上下関係をなくすのが一番苦労しました。

MC(旺志郎に):オダギリさんとの共演場面が多かったのですが、いかがでしたか?
旺志郎:すごい人なんで、シーンと黙っている人かと思ったら、衣装合わせのときから、これ何ですかと聞いたら、ギターを弾くときのものだよと教えてくれたり、色々喋ってくれて、すごい優しかったです(オダギリ、聞きながら"そうそう"と言わんばかりに頷く)。

MC(オダギリに):是枝監督とは『空気人形』に続いてのご出演ですね。子供さんとの共演はいかがでしたか?
オダギリ:是枝監督とは、『空気人形』で1日だけお邪魔して、今回は3日だけお邪魔して、次回は6日くらいかなと。徐々に伸ばして行こうかなと(笑) しんどい仕事の直前に現場に行ったので、本当に癒やされました。この二人の後に挨拶する自分が怖くて仕方ないんです。挨拶の時点でもうダメ。芝居も飲み込みが早く、こちらがキャッチボールできているんだろうか、足を引っ張らないようにしなくちゃと思いました。
航基:全然そんなことないですよ!断然オダギリさんのほうが凄いです!(笑)

樹木:子供たちとは全然喋ってないんです。
航基:いや、樹木さんと橋爪さんが揃うと、ポンポンと進んで行って、喋る暇がないんです。

阿部:今回は1日だけの参加でした。子どもたちの雰囲気がすでに出来ているんです。鹿児島弁に助けられたんですが、無神経な先生の役をやらせてもらいました。先生役は苦手なんですけれど(笑) 教壇で子どもたちの視線に合うと、純粋で強い視線なので、子供からパワーをもらう感じでした。

内田:撮影現場にたくさんのスタッフがいたことが印象的です。ダンスシーンは、狭いところにギュウギュウ詰めになって、汗だくになって撮りました。

:まえだまえだに初めて合った時から、本当の学校の友達みたいだったので、撮影中も楽しかったです。

是枝:まえだまえだは、オーディションで接した大人が元気になるエネルギーを発散していました。それはお笑いをやっているとかは関係ないんです。当初作ろうと思っていた映画の半歩か一歩幸せな方に着地した作品です。そういうのは僕の作品では少ないんですが。

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メディアによる写真撮影に移る。『奇跡』の横長パネルを1列目の子供たちが持つが、最初高すぎる位置にしてしまい、旺志郎の顔が隠れてしまうひと幕も。撮影が終わると最後に是枝監督が締めの挨拶。

是枝:あとは皆さんの中で、この映画がどう育っていくのか楽しみにしています。5月5日子どもの日にお披露目するにふさわしい映画になったと、自分では思っています。この子どもたちを大人はどう支えて行けばよいのか、大震災のことがあったので、あらためて考えさせられています。

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主役ではない安心感からなのか、しっかりした子どもたちの影響なのか、オダギリは終始にこやかで、下を向くこともなく、素敵な表情をずっと見せてくれた。試写を見終わって観客が帰りかけたとき、まえだまえだの二人が舞台に飛び出してきてお辞儀をするサプライズ。続いて林凌雅も。その後有楽町界隈で、遅いお昼をとっていたら、目の前を是枝監督がひとりで歩いて通り、しばらくすると、まえだまえだの二人がお揃いの私服を着て通って行った。世の中はまだ落ち着かないが、オダギリに会えて、幸せな半日が過ごせた。