「あ~、ノド痛いなぁ。ゲホゲホ」
と、咳をしながら医局に入っていくと、
後輩の男の子が言いました。
後輩A
「風邪ですか?」
うさこ
「いやー、ちょっと、のどが痛くて、咳が出るだけ」
後輩A
「風邪ですね!」(断言)
すると、隣にいた別な後輩が、
後輩B
「マイコプラズマ肺炎?」
後輩A
「いっそ、結核とか」
後輩B
「インフルエンザかもしれないですよ!」
・・・ひとを・・・かってに重病扱いしないでくださいよ。 Σ(´ⅴ`lll)
うさこ
「どれも・・違う、ちょっと咳しただけ」 …(゜∀゜*)
後輩A
「いーーや先生、わかりませんよ!
そうだ、気管支鏡検査をしましょうよ」!(人´∀`).☆.。.:*・°
後輩Aは、呼吸器が専門です。
気管支鏡の手技がうまくなりたいので、つねに検体(被験者)を捜し求めているのです。
私はいいカモにされつつあるのを十分察知して、
うさこ
「病気じゃ、ないから」
後輩B
「肺癌が見つかるかもしれません。緊急オペしましょうよ」
後輩Bは、外科志望です。
ふだんのオペでは、上の先生がメスを握るので、自分はまだあまり切らせてもらえません。
でも、とにかく切りたい。
切ってうまくなりたいのです。
うさこ
「・・・遠慮しとく」
後輩A
「センセ、下痢はしてませんか?
なんなら、大腸ファイバーもやりましょう。
サービスで、胃カメラもお付けします」
・・・・上と下から、カメラつっこむんですか!
うさこ
「・・・いらない」(゚∀゚;)
私がさっさとその場を立ち去ろうとすると、
後輩B
「あっ! 先生、ちょっと待って!」
なんだよ。まだ何か用?
と思って振り返ると、
後輩B
「先生、湿布貼ってるじゃないですか~、
いったいどうしたんですか?」
うさこ
「・・・筋肉痛。こないだ、マラソンやったから」
後輩B
「マラソンくらいで筋肉痛だなんて! 弱っちぃですよー!」
うさこ
「あいにくもう、ご老体なもので・・・いたわってください」
後輩B
「骨折してるかもしれませんよ!」
うさこ
「してませんて!」(゚∀゚;)
後輩A
「じゃあ、癌の骨メタ(転移)で、骨と周囲組織に痛みが出てるとか」
うさこ
「骨は痛くないっ!
筋肉痛だけだっつーてるのに!
ひとを癌に仕立て上げるなっ!!」
そもそも、「じゃあ」っていうその脈絡がわかりません。
どんどん重病化してってる。
後輩A
「前立腺癌って、骨メタしやすいんですよ。
シンチ、取りましょう。今す・・」
うさこ
「前立腺、ないから!!! もういいっ!」
後輩B
「えーーっ! 前立腺がないって、もうオペで取っちゃったんですか! 早いなぁ。さすがうさこセンセ。
じゃあ、追加でリンパ節郭清もしましょうよ。
大丈夫です、俺執刀しますから」
うさこ
「いらんっ! オペもシンチもいらんっ!!」
後輩A
「つまんないなぁ、先生。
じゃ、B、オマエ、シンチやってみろよ~グフフ」
後輩B
「え? 俺? 俺がシンチなんかとったら、腹ん中まっくろけだぞ。俺ぁ腹黒なんだ! ハハハ!」
ふたりがガハハと笑っているうちに、さっさとその場を逃げていきました。
ああもう。
病院にいると、どんどん重病人になっていきます。
そのうち知らない間にゾンビにされちゃってるんじゃないか。