埼玉県 北本市 大友外科整形外科の
栄養療法実践整形外科医 大友通明です。

今日は
大事な胃のはなし〜後編です。

胃の機能をイメージし易いように
頑張って説明したいと思います。

胃を身近なものに例えるなら、
ドラム式洗濯機あたりがいいかなと思います。

(フタをした後に少量の水が出て、
ドラムがグルグル回るのを見ていたら、
胃の中もこうなっているんだろうな〜って
思ったからです。)

ドラム式洗濯機を動かすには、
洗濯物を入れて、適量の洗剤を入れます。
スイッチを押すと水が出て、
ドラムが回って、
洗濯物はかき混ぜられます。
そして、
洗剤が全体に行き渡って綺麗になります。

洗剤って、
汚れを落とす酵素が使われていたりしませんか?

人の身体では、
洗剤にあたるのが胃液という事になります。

胃液にはタンパク質を細かくするための
酵素(ぺプシノーゲン)が含まれています。

洗濯機を回すためにはスイッチを押しますが、
胃は完全にオートマチックです。

”タンパク質が入って来たら胃液を出して、
食べた物をかき混ぜるように動きなさい”

というプログラムで動きます。

従って
しっかりとタンパク質を摂っていない人は
胃がうまく動いていません。

つまり
胃を活発に動かすスイッチが入らないのです。

普段、タンパク質を食べていない方が
急に沢山の肉を食べたりすると、
『肉を食べると胃もたれする』、
『油を食べると胃もたれする』、
ということになります。

洗濯物の量で洗剤の量も決まりますが、
普段洗濯機を使っていないと
洗剤の量の調節が出来ないわけです。

つまり胃酸は急に出てこないのです。

胃もたれは本人にとって辛いので、
当然、肉や油を避けてしまいますよね。

そうすると、
洗濯機のモーターの動きが悪くなってきます。

胃が働かない方は、
胃が壊れているか
または錆びついているのです。

洗濯機が動かないと、
入れた洗剤はそのままドラムの中に残ります。

胃も動かないと、
少し出た胃液が胃に残ります。

少ししか出ない胃液でも、
酸ですからそのまま胃の中にいれば
悪さをします。

食べ物を食べないと
胃から腸への扉が上手く開かないので
胃液は食道の方にチョロッと漏れていきます。 

これが逆流性食道炎です。

よくこんな時 ”胃酸の出過ぎ” といいますが、
栄養療法を実践している
消化器内科の先生に聞いたら、

”実は胃潰瘍の人は胃酸が余り出ていない”

と教えてくれました。

(逆に、胃酸が出過ぎの方は十二指腸潰瘍になるそうです。)

だからこんな時、
”胃酸を抑える薬” がでていませんか?

胃酸の出ない人に胃酸を出なくする薬が出ているかも知れないのです。

胃酸を止めれば、
逆流する胃酸は無くなりますから、
確かに症状はなくなりますよね。

でもよく考えたら
食べ物は消化出来なくなりませんか?

洗濯機でいえば、
洗剤なしで洗濯しているという事です。

おかしくないですか?

私もかつては
胃酸を出さなくする薬を出していました。
自分でも飲んでいました。

しかし、
今はその必要があるのかどうかを
慎重に考えた上で薬を出しています。

血液検査をして、
タンパク質がうまく消化吸収できていない方は、
胃が働いていません。

胃が錆びついているからです。

胃が錆びついていると、
胃酸が出ないうえに胃が動かない。

体のアラームサインの原因を探せば、

逆流性食道炎だから胃酸を出さない薬を出す

という、病名だけで薬を出す医療は
どうなのでしょうか?

患者さんは楽になりたい。
医師も楽にさせたいから薬で症状を抑える。

でも、その薬ってやめられますか?

私も患者さんに出していたので、
栄養療法を学んでから薬を出すのをやめたら
患者さんから言われました。

『先生、薬をやめたらまた胃もたれがして辛いので、またあの薬(制酸剤)を出して下さい。』

こう患者さんからお願いされたら、
また出してしまいませんか?

出すのをやめたら、
患者さんに泣きつかれてつい薬を出してしまう。

これって、治療でしょうか?

結局、この患者さんは治っていませんよね。

原因が消えないから、
症状を抑えているだけだから、
薬ってやめられないのです。

それって、原因は野放し状態です。

私はこのような患者さんには、
胃の働きと食べ物のはなしを
時間をかけて説明し、
胃酸を出さなくする薬ではなく、
タンパク質が消化出来るような
消化酵素剤を出すようになりました。
(十二指腸潰瘍がある方は別です。)


.......

なぜ、整形外科医がこんなに胃の話を長々としているのでしょうか?

それは、
私自身の胃が錆びついているからです。

私は以前ブログにも書きましたが、
肉をたくさん食べても
血液検査で尿素窒素が上がらない
と書きました。

そして、
自分の胃酸がちゃんと出ているのかを
自費で検査したら(ペプシノーゲン測定)、
胃酸がうまく出ていない身体だったのです。

つまり、タンパク質の代謝が上手く行っていない身体だったのです。

糖質ばかり食べていたため、
胃酸が出ない身体になっていたのです。

そういう目で高齢の患者さんの血液検査を見ていくと、骨粗鬆症の患者さんはタンパク質の代謝が上手く行っていない方ばかりです。

ほとんどの方の胃機能は低下しているのです。

かなりの確率で皆さんは内科にかかりつけで、
またかなりの確率で胃酸を抑える薬が出ていて、
しかもずっと飲み続けています。

だからタンパク質が栄養として入っていかないのです。

患者さんの未来を考えると、
ぞっとします。

その結果は
ジワジワと人生の最後の方に訪れます。

身体や内臓の筋肉は痩せ、
骨は弱り、
しかも動脈硬化にもなり、
つまり寝たきりになる恐れが多いのです。

ロコモ対策として
運動の重要性が言われていますが、
しっかりした栄養(特にタンパク質)摂取
がなされていることが大前提です。

タンパク質が摂れていないのに運動すると、
逆に筋肉は壊れるからです。

自分の診ている患者さんは寝たきりにしない!

この想いで整形外科医として
栄養療法を学び実践しています。

だから熱く胃の話をしました。

これからもまた、
食事の大切さを語っていきます。

年頭に当たって、長いブログを書きました。
最後まで読んで頂いてありがとうございます。

この長いブログが
健康になるキッカケになってくれたら幸いです。

では、また。