ウォルマート、好きですか? | 裸のニューヨーク

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ユー・ドント・ノウ・ニューヨーク・ザ・ウェイ・アイ・ドゥ...これは私のアンビバレントでパーソナルなニューヨーク・ストーリー。

創業わずか20年で世界最大の小売業にのし上がった米ウォルマート・ストアーズがスーパー大手の西友を傘下におさめて経営再建に乗り出したが業績が芳しくないのはご存知の通り。ウォルマートは「エブリディ、ロープライセズ」をモットーに、徹底したコスト削減で安売りを実現し、アメリカの家庭に年間1000億ドルもの節約効果をもたらす消費者の味方と言われる一方、他の小売店を廃業に追い込むなど評価の分かれる企業である。

新聞記事とTVのドキュメンタリーでしか知らない企業ではあるが私はウォルマートは好きではない。えげつないからだ。どこよりも安く売れ、どんな返品にも応じるべき、というやり方にも共感できない。どんなに時間が経過していようとすぐに返金又は別の商品と取り替えると言うといいように聞こえるが、そこには無理が生じるし、顧客の質もどんどん悪くなっていく。

実際、アメリカの映画には、返品できるよう、タグを付けたままの洋服をパーティに着て行くずるい女性や、1日着ていたのに「店内でしか着ていない」と偽って返品に行くむしろ裕福な男性などが出てくる。米国は返品が当たり前の社会ではあるが、自由意志で行なった購買は一種の契約である。そうやすやすと破るべきではない。

ウォルマートで働く店員の待遇は同業店に比べて低い。世界中で労組を結成したことがなく、時給は7、8ドルで、業界平均の13ドルの6割程度という安さなのだ。だからなのか、同社の全米の従業員は約110万人の半分弱が毎年入れ替わるという。

そして納入業者には原価や正当な利益を度外視して1セントでも安く卸すように迫り、業者を廃業に追い込んだ事もある。優良企業だったラバーメイドもその一つ。品質など関係ないと言わんばかりに中国から輸入した安かろう悪かろうの目玉商品を叩き売る。

いずれは誰かが安さのツケを払わなければいけないだろう。実際、ウォルマートが出店したせいで閉店に追い込まれた店の元従業員などは、ウォルマート方式は長い目で見ればアメリカ人の生活のクオリティを引き下げると語っていた。

売り場の店員の約7割を占める女性たちが昇進差別などを理由に同社を訴えているから、和解したとしても相当額の損害賠償を支払わなければいけなくなる。ツケを払う日は間近いかもしれない。