ケン :ハロー、メリー。
メリー:ハロー、ケン。
ケン :メリーさん。それはビキニですか?
メリー:いいえ、これはビキニではありません。これは下着です。
ケン :オー! それは下着です。どうして、下着で踊るのですか?
メリー:なぜなら、ここはパッポンのゴーゴーバーだからです。
*****
ボクがバンコクでいつも泊まるホテルから、駅で1つ、歩くと10分くらいのところに、
パッポン通りという名前の通りがある。
東南アジア随一の「歓楽街」パッポン通りは、ベトナム戦争に咲いた「あだ花」だと言えるかな。
新宿の歌舞伎町を10倍濃縮したような猥雑さと活力にあふれた通りで、
夜になると通り全体がお土産屋の屋台で埋め尽くされ、
通りの両側には、ゴーゴーバーが建ち並んでいるって所です。
ゴーゴーバーってのは、
思わず、照れ隠しに英語の教科書の第1課みたいな感じの文で紹介したくなる感じのお店で、
まぁ何と言うか、激しい音楽に合わせて、女の子だったり女の子の形をした男の子達が、
水着というより下着姿で、舞台の上で踊ってる店なんだな。
ボクも上手に説明できる程、詳しいわけじゃないんだよ。 (きっぱり!)
入ったことはないんだからさ。 (はっきり!きっぱり!)
でもこういった店が、堂々と「扉を開けて」営業しているから、
中の様子が分かっちゃうってワケです。
さてボクは、バンコクに行くと時々この道を通る。
えぇ、もちろんゴーゴーバーに行くわけじゃなくて、 (きっぱり!)
通りからチラッと中を覗くのが楽しいわけじゃなくて、 (はっきり!きっぱり!)
ティファニーの箱に入ったブルガリの指輪なんかを売っている土産物屋をからかいながら、
「有馬温泉」に行くためなんだよね。
*****
このパッポン通り近くを歩いていると、
「エロDVD」「エロDVD」
って、呼びかけられることが多くてね。
背中に「Call me "エロDVD"」って書いた紙でも貼り付けられたかな?
なんて考えている内に、 (←ウソ)
やつらは、す~っとなにやら怪しい写真の写った紙を見せてくるんだよね。
う~ん。心は少年のごとく清らかでも、姿形がオヤジだとどうもこの道は歩きづらい。
この道を歩く時間帯だけでいいから、スカーレット・ヨハンソンみたいな姿になれないものだろうか。
そうすれば「エロDVD」なんて呼ばれることもないし、
いや、仮に呼びとめられたとしてもそんな物を買う必要なんてなくて、
いやもちろん、最初から買うつもりは無いんだけど、
すぐさまホテルに戻って、バスルームの鏡の前で自分の姿を眺めちゃうけどね。
と、横に行っちゃった話しを元に戻すとして、
さっき、「有馬温泉? なんだ? いかがわしい場所か?」って思った人、いるでしょ。
うん、きっといる。
ちがいますって。
ボクが、「エロDVD屋」のお兄さんや、
「シャチョ。オミヤゲ」「シャチョ。オミヤゲ」と、かなり強引な土産屋のおばさんを振り切って行く「有馬温泉」とは、
真面目なマッサージ屋さんなんだ。
足ツボマッサージ1時間、肩腰のマッサージ1時間の、合計2時間もの間、
ボクはもみほぐされちゃうワケです。
しかも日本円で1500円程度の料金で。
毎日毎日ひたすら街を歩き回ってたボクにとっては、ここが一番「極楽」の場所だった。
ほんと、これほんと。

今夜はクリスマスイヴ。
ゴーゴーバーのお姉さんにも、お土産屋のおばさんにも、エロDVDのお兄さんにも、
そしてみなさんにも、サンタクロースからの素敵なプレゼントがありますように。