ヤオワラート(เยาวราช)というのは、チャオプラヤ川の左岸、エメラルド寺院や王宮の南東に広がる、タイのバンコクのチャイナタウンのことです。
日本人旅行者なら中国よりタイの方がエキゾチックに見えそうなものなのに、
だったらチャイナタウンを散歩してもそんな気分にはならないはずなのに、
ヤオワラートに行くと不思議とエキゾチックな気分になる。
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バンコクは、街全体がほんのりチャイナタウンなムードを漂わせていると言っても良いくらいなのだ。
街なかでしょっちゅう漢字を見かけるし、
日本人と言っても中国人と言っても通りそうな風貌のタイ人も、結構多い。
はじめてバンコクを訪ねた時には、このことにボクは少々驚いた。
仕事仲間の設計事務所のボスS氏も、見た目は日本人といっても十分通りそうで、彼にそう言ってみたら、女房も日本人に良く間違えられるんだよ、と言って笑っていた。
一方ボクはと言えば、海外に行ったときは何故か日系ブラジル人に間違えられる。
日本人ではなく、日系ブラジル人。
その理由がいまひとつわからないのだけどね。
マドリッドのタブラオでフラメンコを見ていたら、(白人の)ブラジル人カップルからポルトガル語で話しかけられたりした。
「サンパウロからかい?」って感じで。
フランクフルトの空港で本屋を眺めていたら、ドイツ人の婦人に頼まれたことがある。
「彼、英語もドイツ語もだめなのよ。ブラジルから来たらしいけど、なんとかしてあげられないかしら。」
ポルトガル語しか話さない東洋系の彼のこと、ボクは助けられなかったけどね。
なんで、まわりに大勢日本人がいるのに、ボク?
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さて、
カメラを片手にヤオワラートに近づくと、街のにおいが違ってくる。
なんて言うかな。
パクチーやマンゴーのにおいじゃなくて、八角やライチのにおいになる。
するとなんだか、懐かしい気分になる。
日本に帰ってきたわけではないし、中国ともまた違う気配がある。
世界中のチャイナタウンと同じように、とても活気にあふれていて、でも周りの人たちの話す言葉や、看板の文字が、ここは中国ではないことを示している。
ボクは、こう思う。
旅行者の目で見た「架空の東洋の街」。
そんな街を体現しているのが、ヤオワラートなんだな、ってね。
