JR西日本博多総合車両所の一般公開「新幹線ふれあいデー」では、博多総合車両所で保管されている車両や部品などが公開されます。
毎年必ず公開される車両が2両あるのですが、そのうちの1両が100系3000番代グランドひかりの2階建て食堂車168-3009です。
国鉄100系をベースにJR西日本が山陽新幹線内で270km/h運転実施を目標として開発。結局騒音を低減させることができずに230km/h運転にとどまりましたが、2階建て車を4両連ねた姿は壮観でした。
この168-3009は車内も公開されているのですが、今年は入りませんでしたので、以前の写真を載せておきましょう。
168形は付随車なので、台車はWTR7000を装着しています。
100系3000番代用の台車は動力台車がWDT202、付随台車がWTR7000となりますが、ベースは国鉄100系のDT202とWTR7000です。
この台車はボルスタ(枕はり)上に搭載した空気バネが直接車体を支持する、いわゆる車体直結形の台車です。牽引力を伝達するために車体とボルスタはボルスタアンカというリンクで連結されています。
軸箱支持装置はミンデンドイツ式をベースに考案されたIS式軸箱前後に板バネとコイルバネ(軸バネ)を配置し、軸ダンパを併用しています。このタイプの台車は0系のDT200、200系のDT201、TR7001も同じ構造となっています。
付随台車なので渦電流ディスクブレーキを搭載。車軸にはブレーキディスクが2枚配置されています。
このブレーキディスクを挟むように配置した電磁石を備えたのユニットが渦電流ブレーキ装置です。ブレーキをかける際には電磁石に電気を流すことで、電磁石間に磁束を発生させます。この磁束をディスクが横切ることで、ディスク面上に渦電流が発生。この渦電流と磁束の引き寄せ、反発が回転抵抗となって減速するらしいです。
ブレーキをかける際に電気を使うため分類上は電気ブレーキの一種とされています。またディスクを摩擦で止めない、非接触型ブレーキなので消耗に強いのですが、電気を必要とするため省エネ性に難があるのと、ユニットがかなりの重量となるというデメリットもありました。
ところで、レイルマガジン誌やWikipediaでは渦電流ブレーキのディスクが放熱性に優れたベンチレーテッドディスクを採用と書いてありましたが、写真を見る限りソリッドディスクです。いったいこれはどういうことなのでしょう?
ちょっと疑問は残りましたが、お次の定番展示車に行きましょう。こちらは500系900番代「WIN350」の6号車500-901です。
JR西日本が山陽新幹線内で350km/h運転を目標に開発した試作車。目標通り350.4km/hを達成しましたが、騒音を低減させることができませんでした。しかしシステムや主変圧器、翼形パンタグラフや軸はり式台車など、WIN350の試験結果を反映させて、320km/h運転を目標に開発したのが500系です。
500系とは似ても似つかない外観をしているのはシステム開発を主目的としていたためで、300系の車体をチョップして低くした車体の断面積は500系と大差ありません。WIN350は3両1ユニットの6両編成ですが、当初から4両1ユニットを想定して設計していました。
先頭部長さは鉄道総合技術研究所の計算で出された6.8m(500-901)とJR西日本が比較のために用意した10.14m(500-906)の2種類を用意しましたが、性能の差が出なかったため、航空宇宙研究所に流体力学での解析を依頼した結果、先頭部長さは15m必要だという結論が出て500系の先頭部長さが決まったという経緯があります。
普段は外観を見るだけだったのですが、今年は待機列に並んで運転台に入ってみました。
ブラウン管のモニタが時代を感じさせますね。
パンタグラフの動作体験も定番。現役を引退したWPS204翼形パンタグラフもここでは現役です。
綱引き車両は700系3000番代! B13編成724-3013です。
仮台車に載せられた状態はアレですが、連結器カバーが外れている姿はいつ見ても楽しいです。
そして3月に引退した300系3000番代F9編成が入場していました。
これから解体の準備にはいるのでしょう。
4号車の326-3009は惜別寄せ書き車になっていました。
なんとも寂しい光景ですね。
今年は台車検査場が一方通行になっていました。奧ではお馴染みの台車展示。まずはN700系7000番代用WDT208形
500系用WDT205形がルーツで軸はり式軸箱支持装置を備えていますが、軸受のサイズが拡大されるなどの改良が施されています。
こちらは700系用WTR7002で3000番代B編成と7000番代ひかりレールスター用E編成に装着されています。
動力台車は500系用WDT205形をベースとしたWDT205A。700系をJR東海とJR西日本が共同開発した際に、JR西日本が要望したもののひとつが「500系の台車を装着できること」でした。
N700系3000番代用の台車WDT207はJR東海のTDT205と同形です。
そのため軸箱支持装置が円筒ゴム式ウイングバネとなっています。
引退した0系用DT200形も展示。
こちらは100系3000番代用WDT202です。
主電動機も勢揃い。
まずは100系3000番代用WMT202。
直流直巻モーターで230kWを発揮。
300系3000番代用WMT203。
三相交流モーターで300kWを発揮します。
500系用WMT204。
全電動車方式なので出力は控えめ、量産先行車が285kW、量産車が275kWです。
700系用WMT205。
こちらも275kW出力。
N700系用WMT207~209。
最強の305kWを発揮します。
このほか色々な部品があって楽しめる空間でした。
さて、最後は今回の目玉とも言える展示。0系1000番代、22-1047です。
新下関の訓練車として2009(平成21)年まで使用されていましたが、引退後22-1047は博総で保管されていました。そしてイベント展示に併せて再塗装を完了させたようです。
排障器の向きが逆なのが残念ですが、キレイなったことをまずは歓迎したいと思います!
いずれは博物館で保存されることを願いたいものです。