大野 (略)「こういうことが、まさに舞踏の真髄なんだ。それがやりたくなくなったら、もう舞踏をやらなくていいんじゃないか」というふうに言ったり。まあ、土方さんは、自分の中にもう一人誰か=土方さんのお姉さんが住んでいると。僕がしゃがむとお姉さんが立ち上がると言うんですね。しゃがむとは、ただしゃがんでいることですよ。ところが、立ち上がる者がこうあって、立ち上がる者としゃがんでいく者とが拮抗して、こちらは限りなく上に伸ばしていく、こちらは下にしゃがんでいく。この拮抗が大事だと。ただ下へ沈んでいくだけもあるけれど、立ち上がっていくものと沈んでいく者が拮抗してあるというしゃがみ方もある。そうすると、ここにパワーが生まれてくる。なんとなく衰弱した様子、朽ちていくイメージも大事だけど、これをガーッと我慢すると、ここに力がグーッと、風が吹いてくると。
(「対談:大野慶人VS諏訪敦」69ページ)