2014年11月16日(日)阿弥陀岳南稜登攀の山行レポ

今季一番の寒気が流れ込んできて北アルプス・上越の山々は雪模様。地上の天気図では移動性の高気圧が日本付近に張り出す予想の日曜日も、山の天気は悪そう・・・各情報を総合するとそんな予想となってました。
山と高原の天気でも北アルプス一帯、八ヶ岳連峰、そして上越の山々とすべて『登山不適合』のマークです。でも、この不適合のマーク、いつもウォッチしてますと天気は快晴でも強風が吹くような予想の場合に表示されることが多いのです。その点を吟味して、「八ヶ岳なら風は強くても晴れるんじゃないか!?」、と、山行のターゲットを八ヶ岳に絞りました。

そして、
どうせ登るんなら普通じゃないところにしたい・・・
ロング系コースか、簡単なバリエーション・・・

阿弥陀岳南稜は、それなりに登られているバリエーションコースで、今回新雪も期待できるし絶好のチャンスとばかりに第一候補となりました。代替コースとして真教寺尾根~県界尾根周回などを想定しながら当日を迎えます。

阿弥陀岳南稜の登山口となるのは舟山十字路です。標高は1620mほどもあり阿弥陀岳までの標高差1200mほど。そして累積の標高差も+150mほどと日帰りにはちょうど良さそうです。
登山口までのアクセスは不明ですが、ナビもあるし、山行記録などでも林道はそれほどの悪路でもないようなので何とかなりそう、そんな前情報を頭に入れて家を出ます。(3時20分)

佐久南まで高速で行き、そこから白樺湖経由で原村の鉢巻道路に入り、途中でナビの指示通り進んで別荘地に入り袋小路になったり(何やってんだ、ナビやろう!)多少のタイムロスはありましたが、また鉢巻道路に戻って次の脇道に入ってそのまままっすぐ走ると舟山十字路に着きました。(6時5分)


舟山十字路は、落葉松林の中にある開放的なところです。
十字路とはいっても道路が十字路となってるわけじゃないんですね。標識があるのですぐにそれとわかります。で、空きスペースに適当に駐車します。
先行の車は3台ありました。うち2台の人はすでにお出かけです。
隣の一台はテント泊中で、ちょうど起きて外に出てくるところでした(2名)。ザイルの用意をしたりと私と同じ南稜を目指すのではないでしょうか。

そんなお二人と軽く挨拶をして先に登りだします。といってもまずは林道を旭小屋を目指して進んでいきます。
広河原沢の奥へ向かう林道をそのまま進んでから立場岳の尾根に登るという行き方もあるようですが、調べたのが旭小屋経由というものだったので。

その林道、脇にはロープがあって、至るところに『立ち入り禁止 違反したら罰金10万円以上』の看板だらけ。前情報にはありましたが実際行ってみて、その異様さにびっくりしました。
でもねえ~、松茸がかかってるそうですから、所有者も必死なんでしょうね(^_^;)
まあ、キノコ嫌いな私にはどうでもいいことなんですけど・・・

そんな景色に見とれながら(笑)歩いていると旭小屋に着きます。
ほとんど廃屋ですね、でもそこにも例の立ち入り禁止の立札が。

で、この先のルートはどうなってるの?
あっそっか!ここはバリエーションなんだよね。
というわけで、踏み跡を追いながら適当に登ってみます。が、あるのは鹿のフンばかり。まあいいや、尾根にでれば、と登っていくと崖下に。ここをやっとこよじ登ってさらにひと登りするとロープが見えてきました。
あれ?私有地を歩いてたんだー!
つまりロープを越えるとそこが登山だったという間抜けな話です。
きっと、旭小屋の手前から山に入る登山道があったのですね(^_^;)


尾根に出るとあとは快適な登山道が立場岳まで続いてました。
途中南側が開けたところもあって、そこからは南アルプスの高嶺が見えました。


立場岳頂上(標高2370m)です。手前から雪もでてきます。
展望はありません・・・しかし


一歩踏み出すと(ちょっと大げさ。実際には数十m)シラビソ林の上から阿弥陀岳の勇壮な姿が見えるようになってきます。こちら側に太陽があって順光となってますから写真写りもバッチリですね。そういう意味でもいいコースだと思います。


青ナギと呼ばれるところです。
崩壊地?あまりに綺麗に一定に削られているような地形です。こんなこと自然にできるものなのでしょうか?

この青ナギを通過して、樹林帯をひと登りすると小ピークに出ます。


噴煙を上げる御嶽山が見えました。


赤岳もよく見えます。


そして、これから登る阿弥陀岳南稜がこちら。
見た目は迫力がありますが、尾根の傾斜そのものは緩やかなんですね。これは地形図からも明らかです。問題は、P1~P4の岩場のだけなんだと思います。


どうやらこれがP1みたいです。(手前の岩コブみたいの)
P2もそうなのですが、あまりに普通に通過できてしまって、P3まできて、やっぱりあれがP1、P2だったのか・・・と気づいた次第です。


そしてこれがP3。本当に難関でした(^_^;)・・・それは追々と。
まずは岩場の基部を左にトラバースして岩稜の裏側に回り込みます。


その岩稜の基部には手製の案内板がありました。
この中級という意味は、登山ガイドブックにある中級とは違いますよ。クライミング中級ですら。


まずトラバースして岩場の裏側にあるルンゼ(ガリー)に行きます。ここは積雪期用に(かな?)ワイヤーが設置してありました。

で、そのルンゼの登りで大苦戦することになりました。
まず失敗1、ピッケル車に置いてきてしまった・・・
新雪の岩稜登りにピッケルは不要だと思ったのであえて持参しませんでした。
失敗2、アイゼンを装着しないで登ってしまった・・・
先行者のトレース(ソロの)があって、アイゼン履いていた形跡がなかったので大丈夫だと思ってしまいました。
以上、2つの冬山必須アイテムを身につけずに凍結したルンゼを登ってしまったわけです。見上げた瞬間不安はありました。滑ったら間違いなく下まで滑落・・・。
そんな不安がありながら無防備で登ろうとしてしまったのは、無雪期ほとんどの人がノーザイルで登っているからです。そんなルートなのだから登れば何とかなる・・・
自信過剰ともいえるような先入観があったからだと思います。

しかし実際、登るにつれ高度感は増し、クライムダウンできない、もう戻れないという恐怖との戦いとなりました。雪をかき分けわずかな岩の突起に足をかけたり、凍った草を掴んでホールドにして体重をかけたり、ほぼ限界のバランスの中で滑落ばかりが頭をよぎりながら、気持ち的には「何でこんなことしてしまったんだろう・・・」という後悔が・・・。
そんな危機的な状態の中でも足は震えることなく、ルートファインディングもしっかりできてたようです。とっさの判断で、左手の尾根に逃げるルートを見つけます。あとは頭の中で追ったルートを実践するだけです。先が見えてくると不思議と気持ちも落ち着いてきます。
そして無事尾根に出たところはハイマツ帯のゆるやかな斜面でした。まるで天国のようでした。

そんな状態でしたので写真なんて撮れませんでした。


この写真はルンゼの出口から見下げて撮ったものです。落ち込んでいる様子だけはわかると思います。ここだけで40分も時間を費やしてしまいました。


P3を越えたからとはいえ、まだ岩稜登りは続きます。P4も控えてます。

が、この先頂上まで緊張感を伴うような場面はありませんでした。P3がすべてでした。南稜がバリエーションたる所以はこのP3の困難な登りがあるからなのだと実感しました。


傾斜がゆるくなったところが阿弥陀岳山頂でした。
こんなクリアに赤岳見たの久しぶりだなあ~


富士山もいいですねえ~


山頂には誰もいませんでした。(10時42分到着)
登山口から4時間20分でしたね。目標は4時間でしたのでP3でのトラブルがなければまあそんな感じだったでしょうか。

赤岳に比べて静かな阿弥陀岳なのです。


横岳から硫黄岳の景色もいいです。下に行者小屋も見えてます。


下りの御小屋尾根に人が見えます。下りの人たちでした。タッチの差だったみたいです。


御小屋尾根上部の様子です。滑りやすい斜面でロープも設置してあるのですが、ロープに頼るほどではありません。初心者が安全に通過できるような配慮だと思います。


急斜面を下ってからの阿弥陀岳とその横に富士山が見えてました。


さらに下ってからの阿弥陀岳方面です。


下りきると樹林帯に入ります。遠く北アルプスがくっきり見えてます。
早朝から見えてましたので燕岳とか目指していた人も大喜びな一日だったことでしょう。


樹木の合間から最後の阿弥陀岳を眺めました。


御小屋尾根の平坦な尾根を足早に歩いていくと御小屋(おこや)山の頂上がありました。『おこや』と読むのですね。今回知りました(^_^;)


頂上のすぐ先に美濃戸口方面と舟山十字路方面に下る分岐があります。
下りの先行者はご夫婦の方とソロの方の3人で、ソロの方は美濃戸口へ、ご夫婦の方は私と同じ舟山十字路に下るそうです。


御小屋山からの下山は足に優しい下りとなってました。


舟山十字路に戻ってきました。(12時43分)
下りでちょっと立ち話したご夫婦とほぼ同時でした。お二人は阿弥陀岳ピストンだったそうです。私より少し遅れて登りだしたみたいです。
都内にお住まいで、帰りの高速の渋滞があるので温泉にも入らず帰宅するとか。ヤマレコに記録載せるそうで「じゃ私と同じですね!」とお別れしました。

今回はいろいろトラブルもありましたが充実した山行でもありました。ソロのバリエーションはやっぱり危険を伴いますね。猛省です。でも、阿弥陀岳南稜ルートは積雪期に日帰りできるコースとして利用価値は高いと感じました。

最後にヤマレコの山行記録はこちら

おしまい