「一応今日の所はこんな感じで片付けましたわ!」

「本当にありがとうございました」

「作業は、次回も継続ということで?」

「あ、いや~、今回で作業終了で大丈夫ですよ」

「あ、ホンマですか?!でもまた困ったことあったら、無理せずVCに問い合わせてくださいね」

「いや~、もうここまでやってもらえましたから、あとは私らでやりますわ!まだまだメッチャクチャなお宅があるんで、そっちに行ってください。他県から来た方々にここまでやって頂いて、後は私らで元に戻しますよ」




5月6日。
本当はもう帰ろうと思っていたけど、この日は500人人手が必要な所、わずか200人しかボランティアはいなかった。
俺にできることはまだまだあるなんて、勢い任せに頑張っちゃったし、気のせいか鼻や喉が痛くなってきちゃったけど・・・それでもね。


本当に来て良かったな~と、実感しました。



何百人のボランティアの内の一人として、被災者の方々に少しでも力になれたこと。
苦境に陥ってもなお人に対して気遣える優しさ。
自分たちで立ち上がろうとする底力。



人って強いです。




~俺はもう日本がダメかと思った。でもそこに「日本」があった~





被災地に激励に来たある歌手がそんなことを言ってたけど、まさにその通りだな~と実感。

どっかの国のニュースでも、女性アナウンサーが、「未曾有の大震災に見舞われても、略奪も動乱も起きず、人々は冷静でお互いに気遣いまでして、秩序を保っている」って不思議がってたけど・・・




本当に、日本人で良かったな。




どうだ。見たか、おまえら。すげーだろ!
この国のサムライもナデシコもみんなみんな人格者だろ。





あのボランティアから既に一ヵ月半が経過する。
多賀城市では土嚢袋が不足したりしたらしいけど、大分復旧してきたらしい。
まだまだ俺にできることがあるんじゃないかって、この夏にもう一回行こうかなって考えてるけど・・・





損得勘定抜きに、世の為人の為に役立つってことがこんなにイイ経験になるとは。




これを機に、一皮も二皮も成長していきたいものです。




がんばろう、日本。
がんばろう、東北。
がんばろう、多賀城。
ボランティア二日目。


この日はワリと海に近いエリアのとあるお宅。


おじいちゃん、おばあちゃん、お父さん、お母さん、それといとこの叔母さんと、息子さん。計6人で暮らしていたが、息子夫婦はつい最近引っ越したばかりで、その後すぐに震災が来たとか・・・


家の周辺はやっと道路が整備されたが、まだまだ砂埃がきつく、マスクとゴーグルはもちろんマストアイテム。


しかしお宅に入って、唖然とした。
鼻の穴に割り箸が突き刺さったと思うほどの強烈な臭い。
墨を塗ったかのように真っ暗な部屋。
食器棚も、押入れも、フクロウの剥製も、仏前も痛々しいほどのダメージ。


ホンマに先日とはエライ違い。絶対力にならなきゃと覚悟を決めて、まずは男4人で、足元の畳を外に出す。


全部で13,4枚はあったか?
全部海水を吸ってて、何倍もの重さになっていて・・・大人2人で縦長に持っていても、濡れた畳がたわんでしまい、大人3,4人で1枚運ぶのがやっと。


すぐに手袋が真っ黒になり、異臭を放ち始める。
しかし不思議なことに、卵の腐った臭い、そう硫黄のようなニオイがして。


実際に津波を見たという家族の方から話を聞いてすぐに理由が判明。
つまり、津波は純粋な海水だけでなく、様々な重油や軽油も混ざって、真っ黒な波となって、家に押し寄せてきたらしい。

真っ黒な得体の知れないものが、窓を、玄関を、全てを突き破って押し寄せる。
想像するだけでぞっとする。


もうあの地震から一ヵ月半以上経つというのに、部屋の奥の衣装だなには、まだ海水がチャプンチャプンと染み込んでいて。結局、洋服は全て処分することとなった。


「Mさん、お洋服とお布団は全て処分されますか?」
「あ~~~、おらが押入れの中、要るもの・要らないもの分けるから、濡れちまってるものは全部捨てちゃってや」


直接、多賀城ボランティアセンターにSOSコールをしてきたのは、このMさん(おばあちゃん)。
この日も、避難先の近くの公民館から駆け付けてきて、いろいろと指示をしてくださった。
足が不自由で、この日も杖をお持ちで・・・
五体満足なのだから、力の限り尽くさなきゃと余計に思う私。
まるでカナディアン・バックブリーカーでもかますかのように、畳を担ぎ上げていると、おとうさんも手伝い始めてくれた。


昼の一時間休憩にチョイと周辺の様子を見てみると、電信柱がぽっきり折れていたり、流されてきた自動販売機やら自動車なんかが山積みになっていたり・・・

自動車には全て黄色の紙が貼ってあって・・・
「多賀城市長が所有者に代わって自動車などを移動し、保管します」
異動作業開始予定日4月13日から。


こんな状況だから、所有者の許可云々なんて言ってる余裕は無いのだろう。


時間が経つのは早く、ボランティア終了時間となり、Mさん宅は後日引き続き作業継続となった。
きっと翌日にはもっと力のある方々がやってきてくれるはずだろう。


センターに戻り、作業報告を終えると、センターの方ちょっと遠慮がちにポツリ。
「あの・・・明日も作業継続可能でしょうか?」


当初の予定では、この日の夜に帰阪して、翌日は大阪でゆっくりしようと思っていたけど・・・


そういえばこの日はGW最終日。
ここ多賀城のボランティアは、8割以上県外の方々。
つまり明日は激減するってことか?!


どうしよう・・・
ちょっと喉も痛くなり始めてたし、筋肉痛もひどいし、大阪に引き返そうかと思っていたけど・・・


やっぱ6日も作業することに決めた。
一番しんどいのは、まさに連休後だ。
僕は会社も有休を取っているし、折角来たのだから力の限りやっていこうって、勢い半分で決定。
単なる力仕事をするだけやけど、それで少しでも人の為になるのなら本望!
宿泊費??そんなものは仕事してるんだから後からナンボでも帰ってくる!


腹は決まった。しかし着る物も無くなってしまったので、仙台市内まで出て、何とかっていう駅ビル三階のユニクロに入る。


頭にタオルを巻いて、所々ドロだらけで、しかも長靴姿。
仙台市内は地震の影響が比較的少なかったせいか、僕の格好はちょっと場違いな感じ。
そのままレジに並び、流石に白い目で見られるかなと思いきや・・・
「ボランティアの方ですか?宮城の為に、本当にご苦労様です。」


店員さんに聞いてみたら、ドロだらけの僕を見て、白い目どころか、「申し訳なさ」を感じたとのこと。


人の為に、無償で汗を流すのも悪くない。


~続く~
朝6時起床→→6時半朝食→→7時出発→→7時半多賀城市役所(VCセンター)に到着。
此方に来ていなければ、大阪のMy Roomで昼過ぎまでぐーだらと過ごしていたはず。
朝日に照らされながら、VCセンターに向かう途中、自衛隊駐屯地そばを歩く。
早起きは三文の徳。そんな格言を身に沁みながら歩く。

しかし橋を渡ろうとしていた所、下の川を見て仰天とした。
タンクローリーが流されている!!!!!
よく見ると、周辺のヨットハーバーでも船がバラケていて・・・
川の土手沿いのガードレールもひしゃげていて・・・
早くも津波の影響を目の当たりにした。


さて市役所のVCセンターに到着すると、早くも100人近く集まっていた。
センター入り口には、①県内VC保険加入、②県内VC保険未加入、③県外VC保険加入、④県外VC保険未加入と4列で並んだ。
私は③に並んだが、よく見ると③④の県外から来た人たちがぎょーさんおった。
さすがに地元の人は、自分の家で精一杯のはず。
こんな時は県外からのVCが頼りになる。
結局朝9時には、400人近く集まったような・・・
それでも多賀城市では一日500人が必要とのことで、まさにギリギリの人数らしい。
各VCセンターでは、県外からのVCは募集していないとShort Noticeを出していたが、ここ多賀城は全くの逆。まだまだVCが足りない状況だった。


この日の作業は、センターから徒歩10分ほどのお宅。
一軒家に加え、三棟の平屋があり、三棟の平屋は近日中に人に貸すため、急ぎで平屋内の床掃除、外壁掃除をやってほしいとのこと。またすぐそばが川の土手になっているため、土手に漂着した粗大ごみも全て撤去して欲しいとの依頼だった。


男性6人、女性6人。
僕はもう一人の方と組んで、粗大ゴミの撤去と土手掃除に勤しむ。
土手には、漂着してきた新聞紙が既に乾いていて、細かくチリになった状態で、辺り一面細かく散っていた。


粗大ゴミを撤去して、土手に散らばった紙くず等を熊手で救って、土嚢に詰める。午前中はこんな仕事であっという間に時間が経過。


昼は一時間休憩したので、その間にVCの方々といろいろ会話をした。
埼玉から来ている人。仙台が実家なので、帰省の道中でVCに来たという広島在住の方。やはり仙台が実家で、今は仕事の関係で奈良に住んでいるという人。東京から夫婦でやって来た人。皆、様々な背景を持っているけど、何とか人の助けになろうという信念だけは皆共通だった。


午後は平屋の外壁をデッキブラシで磨き、窓も網戸もピッカピカに。
予定よりも一時間早く済んだのは、皆結束が強まったせいか?!


「一人じゃここまで出来なかった。皆さんが来てくれたおかげで、思った以上にきれいになった。本当ありがとうございました」


名も知れぬVCでも、現地の人の役に立てる。
仕事じゃ絶対味わえぬ充実感を覚えて、一日目の作業は終了した。


しかし二日目の作業では、想像を絶した光景を見ることとなった。

~つづく~