世情 | †少女症候群†

世情


『現代ヲ生キル 若者達ハ 「ツナガリ」 ヲ 求メル為
 携帯電話ヲ手放ナセナクク成ッテ居マス。常ニ―――…』


昨夜 私は、世代別の、流行物を紹介された。
耳慣れた 軽快に軽快を重ねたような 女性レポーターの声で…だ。


数十年前 初めてテレビジョンが登場した際に
耳に届いて来た 彼等のノイズ交じりの声とは 百八十度違う音質だ。
クリアなトーンで紹介された。



尤も、其の頃 私は此の世に存在して居なかったのだけれど。













*  *  *  *

世界は益々、機械的なモノに管理されゆく。

かく云う私も、此の様な日記を書いている時点で
すっかりと 現代社会に巻き込まれている。重度のインターネット中毒患者。



確かに 機械で管理された世界は  過去に比べて安定感を増すのだろうし
其処には ある観点から見た 『完成』 の図が待っているのやもしれない。


だけれど、せっせと美しい声で 画面越しの私に、

世代別の流行を。
様々な世情を紹介する彼女達に、私は ポツリ、とつぶやきたかった。



「 繋がり が 結束(つながり…) を曖昧なモノにして
  完成 が 感性 を壊してしまうのは 怖い事だと思いませんかねぇ .... ?」



























*  *  *  *

もう17年以上も前の事に成るか。


北の、寒い真夏の太陽に照らされて
道端で拾った、白い石で

道路いっぱいに 落書きをした。


1988年に生まれた私だが
あの場所に居れば 歩く場所は全て、自分達の持ち物の様に感じられた

何処までも続く化学物質で出来た灰色は 果てしない玩具だった。



立ち入り禁止のグラウンドに 自転車で入って一日を過ごした。
夕方。 其処から坂道を其の儘、逃げるように駆け下りて 車に轢かれ掛けた。

もしかすると、私が今に成っても 免許を取らない理由は
あの日、文明に対して怒りを感じたからかもしれない。

其れでも。 小さな私は、来る明日を 待ち遠しく感じた。




だから

横ボタンを押せば、赤い帽子のオジサンが歩き
Bボタンを押せば、走る。

そんな玩具も大好きだったけれど。


*     *     *     *

























ふ、と気付いたら  画面隅の時計が 16:28 と文字を刻んでいる。

幼い頃に、私が見ていたのは 秒針を刻むアイツだった。

アイツの長い処が、12を。
短い方が、5を指す時間が 私は大嫌いだった。

その時間が着たら 私や友達は家に帰らなければ成らなかったから。

誰かの家では 何時もアイツをひっくり返して遊んだ。
外ならば 絶対にアイツのある方角を見なかった。









   ・・・・。

…さあ、そろそろ 仕事にかからなくては。

今日も今日とて、向かうのは 無機質な白い液晶画面。