農業ITの大勘違い(笑)
農業分野でのIT利用が進んでいる。
今までのどんぶり勘定から、お金の流れが見えるようになったり、製品である農産物が履歴が把握できるようになったり、「見える化」だそうだが、良いことではあると思う。
GPSを活用で自動で精度の高い作業ができるなど、その進展ぶりはすごい。
また、更に販売への応用やスマホの活用なども増えている。
更に多くの分野でITの活用が進むだろう。
更に最近では栽培工程の人の管理の分野にまで進んできている。しかし、こと栽培分野については私は非常に疑問がある。
農業の経営においてムダを省くことは大事だ、無駄なことをする必要はない。しかし、栽培分野においてはそのような手法を取り入れても、上手くゆかないだろう。
農業経営においてもっとも重要なものは、農産物の生産・販売である。農業というのは究極的にそれに尽きる。
工業の世界で製品を生産して販売する、ということが基本であるのと同様である。
しかし、考えてみて欲しい。現在農家も含め関係者が語るのは、収量である。収量=出荷量といっていいかもしれない。出荷量は明確に把握できるので収量を増やすことが重要だと考えているし、把握できている数字がそれしかないから収量を重視する。
では、工業の世界でたくさん出荷するという意味というのはどこにあるのだろうか。
物が不足している時に粗製乱造でとにかくたくさん作る、というのが黎明期の工業のだろう。
たくさん作るの次に出てくるのが、不良品を減らすである。
不良品の数を減らしたらそれだけ、利益が増えるのだから、不良品をどのように減らすのかが勝負になる。同じ製品だとしても、不良品の多い工場と少い工場ではまるで競争力が違う。そのため様々な製品管理方法が編み出され、品質管理手法が確立したのだと理解している。
その後は、高品質化や差別化、そして個々の工程の改善などにより高度なものへ発達していっている。工業の世界は知らないのですが、品質管理の原理的なのものについては、少し勉強しましたがどうやら農業界は、工業界と比較すると品質管理の原始的な部分すら始まっていない段階です。
要するにたくさん作る、いいものを作る、ということに目標が向いている段階だということです。
工業生産においては、無駄を作らない。要するに歩留まりをあげる、そしてどのような場合でも歩留まりを維持するというのは生産管理の第一歩であり、どのように生産効率をあげようとも歩留まりが落ちては何もならないというのは常識である。
しかし、実際にそのような管理を考えたり、歩留まりをあげるという概念で管理している生産者は皆無に近い。
このブログで度々書いているように重要なのは、歩留まり(不良品を減らす)をあげ、安定的な品質・収量を目指す。その後に高品質化や差別化に向かうのが普通の姿だと思うわけですが、現実には、基本を飛び越えて高収量、高品質に向かっているわけで、本来はまだその段階ではないということです。
簡単にいえば、栽培の工程管理で効率化を計ったりする前に、生産がきちんと行われるための生産管理が必要だということです。
まともに作れていないところにいって、生産工程の効率化をはかるのはほとんど意味が無いです。効率化云々の前にちゃんと作れよという話で、作れなければ話にならない。多くの人よりまともに作れるようになり、その後に効率化を考えれば良い。と言う簡単な話なのです。そのため、栽培工程に何等かのシステムを導入する前に、まともに作れるようになる必要がある、と思うわけです。
作れていない農家が生産工程の管理によって儲かるかというとそんなことはなく、大方のケースでは逆効果になるでしょう。実際、必要な作業工程を効率化を計ったために、更に栽培がひどくなっているというケースも見てきました。
生産現場にITを導入することで生産増につながるということはありません。生産を向上させることが出来るのは農家自身しかいません。
農業者以外は、どの工程が大事でどの工程を丁寧に行うべきかなどはわかりません。
恐らく、高度に栽培を理解している農家であれば、工業的な生産管理システムはうまくゆくと思われますが、それ以外では導入しても何らの効果もないばかりか、逆効果になる可能性が高いです。
では生産管理にITをどのように活用すべきかという話になりますが、それはおいおい書いてゆきます。
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