スマートアグリは、日本の農業を救うのか? | あなたも農業コンサルタントになれる

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  わけではない / by 岡本信一









昨日、NHKクローズアップ現代の「農業革命スマートアグリ」を見ることが出来ました。


現場の方はどのような印象を抱いたのでしょう。


これまでも、水耕栽培、植物工場、ロックウール栽培など多くの栽培技術が導入され、失敗したり成功したりを繰り返して来ました。


今回はITを利用しているということで、又一つ新しい技術が出てきたということになるのでしょうか?


まず、一つお断りしておきたいのは、オランダのスマートアグリについては、実際に見たことがなく、聞いた範囲での話でしかないということ。スマートアグリが何を意味するのかよくわかりませんが、ITを活用した栽培ということだろうということだと想定して書いていきます。


はっきり言えるのは、環境制御を細かく完璧にしたからといって、別にうまくゆくとは限りません。


理由は簡単で管理技術が問題になってくるからです。成功しているところは、この管理ノウハウを身に着けているということにほかならないでしょう。さらに有利になのは、データが残るためにこのノウハウをさらに積み重ねてゆくということができるということです。


番組の中で10年間でスマートアグリを行った農家の半分は、淘汰されたという言葉がありました。つまり、スマートアグリを入れたから成功したということではなく、何等かの失敗もあり、淘汰されてしまったのでしょう。


環境制御をしたからといって、管理作業の重要性は、全く変りません。現場を見たことがないのに何故このように断言するかというと、上記の水耕栽培、ロックウール栽培などの多くの現場を見ました、要するによくできていないから失敗していたというところばかりです。管理がうまくいっていないところだけが、失敗していました。一部の条件が同一になったとすると、管理作業の重要性が増すわけですから、技術力の差がより顕著に現れるわけです。


これまでの新しい技術導入と同じなのです。別にスマートアグリだからといってうまくゆくなどという幻想をいだいてはいけないと思います。


管理作業が何故さらに重要になるのかというと、初期投資が大きく、ランニングコストも比較的大きいこういった方法では、管理作業に失敗した瞬間に大赤字におちいります。簡単にいえば、ちょっとの失敗でも赤字になってしまうということです。


環境制御がこれまでより正確に行われているだけで、管理作業の重要性に変りはありません。採算分岐点が高くなるということは、管理作業のちょっとした失敗だけでも赤字におちいるということを意味するわけです。


しかも土耕ではないので、養分の吸収もコントロールしているわけで、植物の持つ自らの調整能力に期待することが出来ないのです。


環境制御及び管理作業が完璧にコントロール出来れば、従来よりもはるかに容易にできると考えられますが、そうでないと失敗の連続になります。さらに土耕であれば採算分岐点が低いために、多少の管理の失敗があっても許されるわけですが、初期コストが高い場合は、許されないわけで管理技術は土耕よりもはるかにシビアで厳しいということなのです。


日本でもスマートアグリ的なシステムを導入して、予定の半分以下しか取れていない、と言う話もちらほら聞きます。それを導入するだけで成功するなどという夢をみるのは、やめたほうがいいです。


ITというとなんでも解決してくれるような感想を抱くのは、パソコンが万能であると勘違いしているパソコンを知らない人と同じです。


簡単にいえば、ITとはいえ、道具の一つにすぎない、ということです。


道具は、上手く使えるかどうかが問題で、どのように素晴らしいものでもそれを導入したからうまくゆくわけではないのは、だれでも知っていることです。どんなに素晴らしい金槌を持っていても、使う人が下手くそでは意味が無いです。それだったら安い金槌でいいわけです。


私は、このような取り組みを否定しているのではありません。


ITが何もかも解決してくれるのだ、と言う幻想を捨てて冷静に導入を測ればいいだけのことです。


最近、農業への参入障壁が低くなったせいか、企業の農業参入の話を聞きます。多くは、こういったITを活用したシステムであったり、植物工場であったりしますが、成功率は個人の新規参入と大して変わらないでしょうし、むしろ失敗のケースのほうが多いと思います(黒字は3割程度というのを何処かで読みました)。必ず成功するというような夢を見ず、きっちり栽培管理をすることが大事なのだということを認識して貰いたいですね。




タイトルに対しての答えは、


救うか救わないかは、導入した農家の技術力による


ということです。




この番組の中で語られた重要なワードがありました。座右の銘にしたいくらいです。


「技術革新で重要なのは、継続です。革命は一夜にしてできるものではありません。」

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