農業分野にITの導入を図る機運が高い。
ITといえば非常に幅が広いのだが、一般的に言えば栽培に関してITの導入は未だになかなか成功していないし、無駄と思われる取り組みばかりである。なお、ここで書くのは栽培に関連したIT利用である。
現在、栽培に関して最もIT的な取り組みで成功しているのは、GPSを利用した機械の使用の分野ではないかと思う。しかし、実際の栽培の問題点を解決したりすることに関しては、その利用は全く進んでいないというのが現状である。
逆に言えば栽培におけるITの利用というのは、今後、非常に進むと考えられる。
日本における取り組みは遅れまくっていて、まるで的はずれである。
補助金絡みの取り組みも無駄ばかりである。先日も、ある補助金のIT取り組みについて、基本コンセプトからして無駄だという取り組みについて大笑いしたばかりである。
(さすがに詳しく書く訳にはいかないが、現場のことを知っているのならば誰もがわかる全く役に立たないと思われる取組みに数千万円が投入されている)
特に土耕の世界で栽培管理にITの利用が進まない理由は、私からすると明らかである。
土耕栽培の場合は、どのような場合でも土壌の生産性の違いが非常に大きいというのは誰でも知っている事だが、それが解明されない限りは定量的に把握できないためにITを利用した栽培管理などできるはずがないのだ。
簡単にいえば、土耕の場合、温度、気温、日照、雨量、土壌水分、地温、更に場合によっては、作物の葉色、養分なども細かく測定しても、殆ど役に立たない。現在、現場でのIT利用というとモニタリング数を増やすことばかり、そして、情報を集めることばかりを考えている。仮に同じような気象条件であったとしても、隣同士の土壌が全く違っていれば、生育が違うのがアタリマエでいくらモニタリングをしたとしても、どのような生育をしているのか把握できない。また、植物の栄養だけを測っても、その栄養状態はわかるにしても、収量がどうなるのか知ることすらできていない。
方向性を間違っているのである。現場で必要なのは、困ったときに決定的な示唆をえることができるような出力データがほしいわけだけで、情報を欲しいわけではない。
何故、ダメなのかというと土耕の場合、同じ人が栽培しても土壌によって、出来が違う、つまり土壌の影響というものを加味しないかぎり殆ど役に立たないからである。現場の農家の方は誰でも知っている、土壌によって出来が違う、ということが全く考慮されていないのだ。
これでは、現場の農家の経験のほうが圧倒的に優れているというのがアタリマエであるので、役に立たないものになってしまうのである。栽培に決定的に影響を与える土壌の生産性を知らない限りは、どのように細かくモニタリングしようとも成功しないのである。
ITの利用に際して最も重要なのは、現場でどのような情報がほしいのかを考えなければならないにもかかわらず、圃場情報を無駄にたくさんもらっても役に立たないということが全く理解されていない。
栽培において必要な情報とは一体なんなのかを、少し整理してみる。
農家サイドから見る場合と、流通サイドから見た場合では違う。
流通サイドにおいて、最も必要な情報はいつ何が、どのくらい入ってくるのか、それを一日でも早く知ることが出来れば、圧倒的に有意義な情報となる。
農家サイドから見ると、経営に最も与えている栽培重要情報をいち早く知ることが出来ればいいだけだ。簡単にいえば、経験や勘ではわからなかった重要情報を知りたいということだ。
要するに栽培現場におけるモニタリング情報は、その目的がはっきりしないままモニタリングされているだけということになる。
<続に続く>
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