農業に関する消費者の誤解 | あなたも農業コンサルタントになれる

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  わけではない / by 岡本信一






Food Watch Japan連載へのリンクです。


農業生産と環境負荷/農薬・化学肥料が多い日本農業

http://www.foodwatch.jp/primary_inds/whatisgood/28875


これから書くことは、すべての陣営から攻撃される内容ですが、事実です。


最近多いちょっと農業をかじった人・ジャーナリストも含め、非常に多い誤解について書きます。以下、反論がある方も多いと思いますが、列記してみました。




●農業は、環境にやさしい間違い


おそらくすべての産業の中で最も地球環境を壊している。農薬や化学肥料の存在する以前から、猛烈な勢いで地球環境を破壊してきている。ほんとうの意味で地球環境を守るということであれば、農業そのものをやめるべきである。




●耕作放棄地を農地に戻すのは大変→間違い


何も知らなければ戻すのは大変だが、実際には技術的には簡単であり、むしろ土壌が良い状態に保たれていることも多く、耕作放棄地の問題を大げさに語る人は、現場を知らないか、放棄地を農地にする技術を持っていないかだけ。


人の多い場所での放棄地の問題は、産廃の捨場のようになってしまうなど、人為的な問題が大きい。




●家庭菜園で有機栽培で出来たのだから、プロ農家が有機栽培が出来ないのはおかしい→間違い


有機栽培は、農薬・化学肥料を使用しないだけなので、だれでもすぐに出来ます。作れることとそれで生活することの意味は全く違います。




●加工用の農産物は、あまりものである→大部分は間違い


加工農産物は、それ向けに作られており、むしろ生鮮物よりも規格管理が厳しい。




●有機(オーガニック)栽培の農産物は、おいしい・体に良い→間違い


個々の圃場や農家の栽培技術に依存します。有機栽培は、農薬、化学肥料を使用しないだけで、出来たものの品質を何ら担保するものではありません。




●農業が遅れているのは、他産業の方法論を取り入れていないからだ→間違いが多い


確かに他産業の良いところは取り入れるべきだが、生産技術が伴っていないとほとんど意味が無い。農外の人は、自然相手の産業であるということを理解できていないために、その特殊性をどのようにクリアすればいいのか知識がなく、失敗する。


農業現場では他産業ではアタリマエのことを聞かされると、珍しいためにもてはやす。真の問題は、先進国の中で最も遅れている生産技術である。




●日本は食料自給率が低い→特に低いとはいえない


カロリーベースの自給率39%、世界中で使用されている生産額ベースの自給率66%。有事の際に自給率が低いと大変なことになると心配する方も多いのですが、食料自給率が高くても石油が入らなくなれば同じだし、肥料その他すべて入らなくなれば同じ、工業の原材料が入らなくても同じで食料だけではなく、全てが有事の際には危険です。国の力がなくなれば有事であろうとなかろうと、購入できなくなります。農業現場で気にする必要はないです。それこそ、国が考える問題です。


農水省は、自給率を上げる政策を既に放棄したので、今後、この話題が上ることもなくなるでしょう。




●農薬は危険。無農薬でないと食べてはいけない。→間違い


消費者に残留農薬による健康被害の危険は、限りなく小さい。これは公的調査も行われており公開もされている。諸外国に比較して残留農薬は非常にすくなく、農薬による健康被害の危険性は、消費者ではなく散布をする農家にある。




●農薬は環境破壊をしている→昔に較べればはるかに小さい


農薬に関しては、安全だという過信をしてはならないだろう。


しかし、半世紀前の危険性を現在のものと同列に述べるのは無理がある。残留性は低くなり、その危険性を調べるために農薬の登録には膨大な資金が必要となっている。そのために大企業でないと日本での農薬登録は、不可能。むしろそういった事のほうが問題だと思うのだが・・・




●昔に較べると現在の野菜の栄養価が下がっている→間違い


「日本食品標準成分表」のデータの読み違い。「日本食品標準成分表」一つの品目につき、一つのデータを掲載している。農産物の栄養価は、旬の時期が最も高い。かつて旬の時期のみに栽培されていたので、栄養価が高かったが、現在は旬でない時期にも栽培されるために栄養価が低くなっているようにみえる。実際には、旬の時期の栄養価は大して変わっていない。




●人工的に作られた化学肥料・農薬は、危険で天然、自然由来の資材は安全。→間違い


少なくても農薬の危険性は、現在の科学で分かる範囲で判明している。天然、自然素材であるものが安全である根拠はなく、危険性すら把握されていないものが多い。天然、自然由来のものを農産物に散布するのは、未知の危険があるといっていい。




●虫食い・曲がっている野菜は美味しいし、安全→間違い


虫食いは、多くの場合チッソが多ければ多いほど発生しやすく、曲がっていたり、変形しているのは栄養バランスなどがおかしくなった生理障害による。安全かどうかなどは、なんの根拠もない。




●農業は晴耕雨読の人間本来の生き方に沿った産業だ→間違い


ある側面では事実であるが、日本でも有数のブラック労働環境である。しかし妙なあこがれを持った怠け者の志望者が多い。怠け者が志望してきたら直ちにそんなに甘くない、と説教してください。




●農家は、貧乏で大変な苦労をしている→間違い


反論がある人がいるでしょうが、現在も営農を続けている人は、普通に生活できていますし、普通以上に経済的に恵まれている方もいます。兼業農家は、ある意味非常に裕福です。




●日本の農産物は品質は高いし、生産技術力もある→間違い


発展途上国に較べれば品質は高いかもしれないが、品質とは顧客ニーズに合致したものであるはずだが、ニーズにあったものをつくる技術力はない。先進国で反収が30年間も停滞しているのは、日本だけである。




農業への関心が高まったおかげなのか、消費者の農業・他産業からの関心はかつてないほど高い。しかし、それとともに農業に対する誤解も増幅しているように思う。


農家の皆さんは、あまりご存じないと思うのだが、都会ではちょっと農業をかじった人は非常に重宝される。理由は、都会の人は農業に対する知識が全くといっていいほどないために、少し農業のことを知っていると、農業全般を知っている人のように捉えるからである。農業をちょっと知っている人が間違った情報を発信し、信じられている現状がある。


私が最も残念なのは、農家の方・行政・関係者もマスメディアの情報に踊らされてしまっているという点である。少なくても現場にいる人間は、マスメディアや世論に踊らされてはならない。現場の人だけが本当の情報を知っているが、農業のように携わる人が少ないと、本当の情報は全く消費者に伝わっていない。


せめて農家の方は、上記のような間違いに関して即答できる程度の知識はもって貰いたい。お客様への信頼に繋がるし、何よりも自らの行なっていることに自信を持てるからだ。

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