図説:野菜の病気と害虫 伝染環・生活環と防除法 | あなたも農業コンサルタントになれる

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  わけではない / by 岡本信一

















図説:野菜の病気と害虫 伝染環・生活環と防除法


米山伸吾・根本久・上田康郎・都筑司幸著 農文協発行




病害虫防除に関する書籍である。私の本棚には、数多くの病害虫防除に関する本があるが、私にとっては最も利用しやすく、わかりやすい書籍である。


多くの病害虫に関する書籍は、作物毎に病名、虫害対策が書かれているが、本書は違う。病菌別、虫別に解説がされている。


作物にとって違う病気だとしても、病気の原因となる病原菌は同じである場合も多い。同じ病原菌が別の作物に感染し、症状の若干違う病気を引き起こすということである。


一般の病害虫に関する書籍は、たとえば、作物毎に立枯病の項目があり、簡単に数10行にわたり特徴と防除の方法が書かれているが、この本では、フザリウムならフザリウムについて詳細に書かれ、どのような作物にどのような病気を引き起こすのか書かれているのだ。


また、図解入りで、病原菌や虫などについて、どのように繁殖し、どのように作物に感染するのかが図解入りでかなり詳細に書かれている。これを生活環・伝染環というわけであるが、この環をどこかで断ち切らないと、病気や虫害は増え続けるわけで、どこで断ち切れば被害の蔓延を防げるのかを考えるヒントになる。


この意味は大きい。


防除にしても、何故、その時期に行なわなければならないのかがはっきりわかるからだ。薬剤には、成虫には効くが、蛹には効かない、胞子には効かないが、病斑には効くなどの特徴があるため、この生活環が何日で回転するかにより、実際の防除タイミングなどを検討することが可能になる。


わかりやすく説明しよう。成虫にしか利かない殺虫剤があったとする。この虫が2週間で卵から成虫になるまでかかるとする。成虫を死滅させてから2週間以上間を空けて防除を行うと、防除時期に蛹や卵だった新世代の子供が成虫になっており、結果として全く防除の効果が上がらないということになる。


このようなことは、多くの専門書をひっくり返せばわかることだったが、この書籍では概ねこの本だけで必要な情報を引き出すことができるのだ。


何故、今までこのタイプの書籍がなかったのか不思議なくらいである。




多くの方は、防除の方法だけを見るのかもしれないが、病害虫防除にほんとうに必要な知識は、この本の主タイトルの一部である「伝染環・生活環」だ。防除が上手く行かないなどというのは、相手の特徴を掴んでいないためである場合も多い。まず、敵である病原菌や害虫の特徴をつかまず、ただ薬をまいていれば良いのだろうなどという考えでは、防除が上手く行かないし、薬代ばかりがかさんでしまう。


6200円もするので購入を気軽に薦められないが、防除などに悩んでいる方で近くの図書館などにあったら、まずこの書籍に目を通すことをおすすめします。




病害ではなく生理障害も現場では非常に多いが、病気としてくくられていたりする。この場合、作物の健康状態が悪いということになるので、その見極めも必要だし、一般的な病害虫は、不健康であると感染しやすいので予防として作物の健康維持が最も重要だということを付け加えておきます。

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