「 これですか? 例のプロトタイプの・・・。 」


巨大総合病院の 主任外科部長 鎌田が 尋ねた。


「 はい・・・。 先生が どうしても って仰るものですから・・・ 本日 持って参りましたが・・・。 まだ 社内のコンプライアンス委員会も 何も通していません。 上司にも内緒です・・・。  先生の病院の倫理委員会も・・・。 そもそも まだ 全く製品化されていませんし・・・。 厚労省の承認も・・・。」


総合病院の外科部長 無理に 鎌田に頼まれて  ヘルメット型の 小型の装置を 持ってきた 医療機器メーカーの 柴田は 困惑して言った。


全く商品化も 認証も受けていないプロトタイプの商品を 会社にも内緒で 持参したのだから 心中穏やかではなかった。


「 まだ 初期の実験段階って言うか・・・、 先生の所属されている 大学病院などと 共同で 開発の途中で・・・、 先生も 関係されたいましたから ご存じだと思いますが・・・。 」


柴田は 会社に内緒で 独断で持ってきた 実験段階の「新型 遠隔手術装置」を 外科部長 鎌田に 渡していいかどうか 迷っていた。


しかし 病院へ 納入する 外科系の医療機器の殆どに対して 決定権を持っている 鎌田に 逆らうことは出来なかった。


しかも この装置を 持ってきて 実際に使用して 試させてくれたならば 今後 病院で 購入が予定されている数種類の大型医療機器は 柴田の会社の製品で 統一すると 外科部長 鎌田に 言われたので 拒否することは 出来なかった。



新型遠隔手術装置は この時代(注釈:時代背景は 近未来だと考えて下さい)には 既に国民の全員に生下時に 埋め込まれた 生命識別ICチップからの情報を 通じて はるか遠方から あらゆる検査 治療 驚くことに 外科的処置までを その人物に施すことを 可能にした 画期的な装置だった。


( 以下 次回へ続く )