初夏の強い陽射しが 容赦なく

病室に 進入してくる。






澄み渡った青空


白い雲


病室を 通り抜ける風


快適な気分。






山辺の 古びた 病院。


一つの病室の窓から


見える空 


広大な風景。







病院と言っても


いわゆる 療養型病院。







男は 長い間 


この病室の 窓から


空を 眺めているんだろう? 






四人部屋に 一人ぼっち


同室の 患者さんも


見たこともない。






長い時間の 経過を


教えてくれるのは


窓から見える風景の


四季折々の変化と


気温の変化だけ。






遙か昔は


早期の社会復帰を


目指していたけれど


今はもう そんなこと


どうでもいい。






この自然と一体感を


いつまでも


味わっていたい。






そう言えば


先生も


看護婦さんも


他の患者さんも


見たことはない。





山辺の病院


外から見れば

朽ち果てて

廃墟にしか見えない





でも そんなことも

どうでもいい。






ほんの些細なこと。




なぜなら 男は

この病院に

100年以上 

入院しているのだから・・・