井上靖 『孔子』
- 井上 靖
- 井上靖全集〈第22巻〉
本書は、架空の弟子を設定し、その弟子の目を通してみた孔子像を浮き彫りにしようと試みている。
が、なんともまだるっこい。
同じような話を延々と繰り返しているだけで、ストーリーに起伏がまるでなく、いい加減うんざりしてしまった。
一応、最期まで読みきりはしたが、何のために、かくも長くなったのか、理解に苦しむ。
まあ、淡々としているのを、褒め言葉に置き換えれば、枯淡の境地で描いた著者晩年の大作とでもいうことになるのだろうが。
同じく、弟子の目を通して孔子を描いた中島敦の短編小説『弟子』の方が、分量は圧倒的に短いが、はるかに師である孔子の姿を活き活きと描いているように思う。
この両著作を比較する時、歴史ものだからといって、必ずしも長ければいいわけではないことを思い知らせてくれる。
なお、井上靖の歴史ものが全て悪いわけではない。
『風林火山』や『蒼き狼』などの好著もある。
が、本作品は駄作だと思う。
切れ味: 不可
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