中村紀雄オフィシャルブログ 「元 県会議員日記・人生フル回転」Powered by Ameba -4ページ目

死の川を越えて 第35回

※土日祝日は、中村紀雄著「死の川を越えて」を連載しています。

 

「誰にも分からん。だがな、わしは、日本が中国を侮って、敵にしようとしていることが心配じゃ。日清戦争、日露戦争に勝って、日本は神の国になった。神の国は正義の国でなければならぬ。ところがどうじゃ。この世界戦争に乗じて中国に二十一カ条の要求を突きつけた。中国人の誇りを踏みにじる侵略だと叫んで、中国の若者が立ち上がっている。わしは、正助がこのような流れに巻き込まれていくことが心配なのじゃ。だが正助よ。先のことを心配しても始まらぬ。勇気をもって運命に立ち向かうのだ。さやさん、泣いてはいかん。さやさんの明るい笑顔だけが正助の助けに違いない」

「はい、私はもう泣きません」

 さやはきっぱりと言った。正助の顔も吹っ切れたように明るかった。

 徴兵検査合格には正助を担当したある医官の思惑も働いたに違いないと言われた。この医官は、ハンセン病の患者はハンセン病で死ぬならお国のために死ねという考えを持っていたので、積極的に合格させたというのだ。

 しかし、正助にとって合格は大きな生きる励ましであった。さらに天皇陛下から召集令状をもらうとは、差別と偏見の暗雲を吹き飛ばすような出来事であった。草津を発つ前夜、さやは正助の胸で激しく泣いた。

「正さん、必ず生きて帰ってね」

「さやちゃん、お国のために命を捧げられることを喜ばなければいけない。さやちゃんのことは生きる支えだ。どんな世界が待っているのか俺には分からないが、力いっぱい戦うんだ。勝って帰ることを祈っておくれ」

 

つづく

 

 

 

 

 

人生意気に感ず「元木・櫻井両選手の祝賀会で。総裁選告示に思うこと。フジモリ氏の死で甦ること」

◇11日、五輪・パラリンピックの選手に首相が感謝状を授与し「多くの国民に勇気や感動を与えてくれた」とたたえた。本県の元木咲良・櫻井つぐみの両選手が出席した。12日、育英大学主催の両選手の祝賀会が行われ、私は育英学園名誉理事として来賓席についた。中曽根弘文氏、山本一太知事、小川晶氏市長等多数の来賓が出席、両選手は金メダルを胸にして感動と感謝を語っていた。私は6月の壮行会にも出席し、開学7年という歴史の浅い同大学の選手が金メダルを得ることは奇跡に近いと感じたが奇跡は実現した。知事は栄誉を称える特別賞の授与を決定したと述べた。中曽根氏は金決定の瞬間、感動の声を上げたと語った。

◇12日自民党総裁選が告示された。上川外相が11日に立候補を表明し、斉藤経産相は断念し9人の争いとなった。過去最多である。数日の状況から推薦人20人の確保がいかに難しいかを知った。9人それぞれが抱負と目標とする政策を語るが最重要は地に落ちた政治の信頼をいかに回復するかである。裏金事件を乗り越えてこの国をどう変えるか、誰がどのように変えるかが最大の課題である。

 文藝春秋の特集記事「自民党よ、驕るなかれ」を読んだ。その中で政治学者御厨貴氏は次のように語る。「地方の過疎化は深刻ですが人口が少ない分政治の力で現状を変えられる余地がある。地域の若者はそれに気付き市議会や県議会に出馬するようになっています。これが連帯しながら国政に広がっていけば日本の政治も捨てたものではないと思います」。

 ふるさと塾から来春の前橋市議選に4人が立候補するのはこの記事が示す新しい動きである。日本は人口減少が加速する中で萎縮し続けている。最も懸念されるのは日本人の心の問題である。全体としてハングリー精神を失い、特に若者には進取の精神が見られない。

 選挙に出手がいなくなり条例で議員の数を減らす所が出始める始末。地方議会の形骸化である。

◇フジモリ元大統領が死去した。私はかつてペルーを訪ね、ペルーの悲劇に接し衝撃を受けた。フジモリはこの国はなぜ貧しいのかと悩み大統領選出馬を決意した。アンデスの人々にはスペインに征服され鎖で繋がれた悲しい歴史があった。フジモリの出現にインカの末裔であるアンデスの人々は日本に期待してフジモリを応援した。アンデスが燃えたのだ。私の訪問後世界を震撼させた大使館占拠事件が起きた。ゲリラを制圧したフジモリはペルー・リブレ(ペルーは自由)と叫んだ。栄光と挫折の人生は現代社会に多くのことを投げかけている。(読者に感謝)

人生意気に感ず「カマラ・ハリスの圧勝が意味すること。大統領選の行方は決まったか。自民党総裁選の行

◇正に世紀の対決であった。私はトランプ氏に対する先入観を抑えようとしてその時を待った。それは呆れる程の悪行やスキャンダルである。トランプ氏の胸には前回の討論でバイデン氏を打ちのめした光景が焼き付けているだろう。一方のカマラ・ハリス氏は彗星のように現れた黒人女性でごく短期間で世の脚光を浴びた。数々のエピソードを最大の公式な舞台で効果的に全米の市民に届け得るかが勝負どころなのだ。2人はメモを見ることは許されない。第一印象はハリス氏の笑顔とトランプ氏の追い詰められたような落ち着かない表情であった。真剣勝負の手段は拳銃でなくい日本刀が適当に思えた。女性剣士は正眼に構えて突き進む。その姿は新鮮で時々剣先がキラリと光った。

◇討論会はハリス氏の勝利で終わった。直後のCNNの世論調査で人々は63%対37%でハリス勝利と答えた。私はハリス氏を女性剣士に例えたが、最初の一撃は歩み寄って握手を求めたことだ。理性的で勇気ある政治家という印象を与えた場面であった。トランプ氏はうろたえているようにも見えた。ある日本の専門家はこの場面を見てハリス氏勝利の印象を持ったと語る。トランプ氏は事実無根のことを繰り返し司会者に間違いを指摘された。ハリス氏はそれを笑い飛ばして相手にしない。その一例が不法移民が犬や猫を食べているという発言だ。討論会の大きな目的の一つはどちらが大統領にふさわしいかを国民に判断させることだ。ハリス氏の「全ての米国人のための大統領になる」という発言は説得力をもって国民に伝わったに違いない。感情に動かされるトランプ氏と冷静なハリス氏。米大統領の責任は極めて重い。核戦争の危機も叫ばれる現在その冷静な決断力は全世界の運命に繋がる。私は今回の討論会に関し1960年のケネディ対ニクソンの対決を想像した。今回のハリスはケネディ以上の勝利をもたらしたのではないかと思われる。討論会の影響力示す一つの事実が人気歌手テイラー・スウィストさんの動きである。若い層を中心に絶大な人気があるこの人はカマラ・ハリスに投票すると発信し、次のように述べた。「着実な手腕と才能を備えたリーダー。この国を混沌ではなく冷静さをもって導くことが出来れば私たちはこの国でさらに多くのことを達成できる」と。

◇自民党総裁は今日(12日)告示である。9人の争いとなる。斉藤氏野田氏は推薦人確保がならず断念。上位2人の決戦投票は必至だ。この日に合せたように文春と新潮が小泉進次郎のことを書いている。(読者に感謝)