これもディベロッパーの宣伝としか思えない。
居住用資産の方がそうでないものより相続税への評価額が低いというのは事実。だからこそ、様々なメディアでマンション投資が声高に叫ばれている。しかし、問題は、取得したマンションの転売時の資産価値の下落が、相続税対策で得た節税額を上回った時、この節税はキャッシュアウトのタイミングを一時的に先延ばししたに過ぎない点だ。

例えば、法定相続分が5000万円ある人で、平成27年度中に相続した場合、その5000万円が全て現預金であった場合、相続税が800万円である。
https://www.nta.go.jp/taxanswer/sozoku/4155.htm

仮に、相続事由が生じる前に、5000万円でマンションを買った場合、居住用の住居評価額は80%引きなので、5000万円のマンションは評価が1000万円だけとなる。(相続税課税用の評価額が購入代金と同じという非現実的な仮定)。1000万円の相続分に対する相続税は100万円なので、5000万円を現金から居住用の不動産に変えただけで、700万円の節税効果が得られたのだ。

現預金で相続した人は手元に4200万円残るが、マンションを相続した人は、取得原価が5000万円の資産を得たこととなる。問題は、原価5000万円のマンションの時価は5000万円なのか、という点である。

当然だが、マンション開発業者は、販売価格に利益を含んでいるため、そのマージンが10%だとしても、マンションが売られた瞬間に、マンションの時価は10%、金額にして、500万円下がることになる。また、築年数が増えて、経年劣化が進めば時価はどんどん下がることになり、相続税の節税分の700万円は、予想外に早く償却される可能性が高いのだ。

無論、築年数が増えても価値が落ちない物件もあろうが、そのような稀少物件はそもそも入手が困難だ。上述の試算が全てとは言わないが、相続税対策にはくれぐれも慎重に行いたい。