「HANNO...WHAT’S COOL 」 第6回(前半)
飯能フィールドスポーツ協会理事長
奥武蔵ベース代表 双木勝男氏
「パリ・ブレスト・パリ」
ブルベ(タイムや順位に拘らず、制限時間内での完走を認定するロングライドのサイクリングイベント)というのがあって、アベレージ15kmで走るんですね。
日本では200km、300km、400km、次に600km、それを一年間で全ての距離を完走するのです。すると「スーパーランドナー」の称号が与えられて、フランスからバッヂが送られてくるんです。
その世界的な大会が「パリ・ブレスト・パリ」。パリから600km先のブレストというところに行って、またパリに帰ってくる。それが4年に一度あるんです。それに参加してきたんです。
それはいつ頃ですか
2007年です。それに参加したら一気に自転車熱が冷めて、そこからランニングになったんですよ。
1200kmをどのくらいの時間をかけて
80時間くらいかかりました。時間が決まっていて、その中で寝ないといけないわけです。アベレージが13.5kmとして、1200km÷13.5km/hだから88時間くらいかな。
88時間…4日ですね(汗)
日本で600kmまでを完走した人が権利があるんですよ。
毎朝起きて名郷まで自転車で行って帰ってきたり、ずっと練習してました。週末は200kmとか300kmとか何度もレースにでるわけですよ。フランスって大地で平原のようなイメージですが、山坂道で平地なんて全然ない。
日本から100人くらい行ったんですけど6割くらいの完走ですかね。
苦行みたいですね(汗)
おもしろかった。本当に行ってよかった。あんな経験はもうできないですね。世界中から人が集まって、国別対抗リレーですよ。そんな遊びばっかり(笑)
考え方が違う(笑)楽しむ余裕があるってすごいですねその4日間。
「パリ・ブレスト」というケーキがありますよね。その語源がパリ・ブレスト・パリなんです。
50kmから100km走らないと次の村にたどりつかないんですよ。次の村まで電気も何もない。その4年に一度のイベントに村人が応援してくれるわけですよ。
朝通る村もあれば、夜通る村もある。一晩中出迎えてくれる。
カロリー消費しているから、甘いものが欲しいわけです。そこでパリ・ブレストっていうケーキを作るわけですよ。コーヒーと一緒にどうぞって差し出してくれる。
村は城壁みたいに囲まれていて村の入り口には門があるんです。門の前に花がいっぱい飾ってあってすごく綺麗なんですよ。
それはテンションがあがりますね
「サイクルハウスMIKAMI」三上店長との出会い
仕事をしながら趣味で自転車をやっていて、もう20年ですかね。特に自転車が好きでした。
当時はスキー連盟に入っていて毎週スキーをやっていました。
でも夏になると運動が一切なくなってしまう。
夏の間何かしようということで自転車に乗り始めて、クロスカントリーとかマウンテンバイクのレースに参加したり。
自転車に乗り始めたきっかけが入間市にある自転車屋さん。そこの人たちとマウンテンバイクなんか乗って、おもしろおかしくツーリングや山に登ったりしていました。その自転車屋さんのツーリング仲間の中にサイクルハウスMIKAMIの三上くんがいたんですよ。
結婚しても彼はレース活動をやっていて、「将来的な夢はなんなの?」とい聞いたら、自転車屋をやりたいんです、という話で。「じゃあ飯能でやるといいよ」と紹介して、あそこの場所で開店するようになったんです。
真面目な自転車乗りが集まる自転車屋さんとして有名になってきて、そこに自転車を使った競技、例えばアドベンチャーレースとか、トライアスロンとかをやっている人たちが集まってきました。
飯能は特殊なんですよ。誰でも遊べる場所でありながらも、すごいこともできる場所。サイクルハウスMIKAMI、あんな高価な自転車売ってるところはないですよ。それを買っていく人がいるわけですから。
様々なフィールドスポーツ
飯能でできるフィールドスポーツは
例えばロードレース、トライアスロン等の練習、ツーリング。飯能は山坂道が多く、都心からも近い。飯能って全日本クラス、世界に出て行くクラスの人たちが練習に訪れているんですよ。
自転車で飯能をスタートして299号を最後まで行ってみたり。そうするとすごく辛くて面白くて(笑)。諏訪湖まで行っても200kmなんですよ。ドロップハンドルの自転車だと1日で行ける距離なんです。ちょうどいいよね、と。
茅野のそば屋でそば食べて酒飲んで、電車で帰って来れば、1日のツーリングなんですよ。
こんなおもしろいことをもっと仲間を集めてみんなでやったらどうだろうと「ATTACK299」というツーリングのイベントにしたんです。それが今年でもう12年目になります。最初のうちはお遊びでやってたんですけど、日頃おつきあいのある自転車のクラブとか近所の人たちに声をかけて、参加費をちゃんとした形でとろうと。
ただネットでエントリーを受け付けるといろいろ問題も出てきました。
簡単にエントリーできる事から160kmなら走れると勘違いする人が参加するんです。とても走りきれない。そんな簡単なコースじゃない。距離160kmで3800mのアップ、並みの自転車乗りでは置いていかれれちゃうのです。先頭との差は開くばかりで、スタッフの管理が難しくなる。なので昨年からはツテや紹介などでの参加のみにしました。おかげさまでリスクが減りました。
今大河原で自転車のレース「飯能クリテリウム」が出来ないものか、って考えています。
クリテリウムというレース、実はいろんなところでやっているのですが、田んぼ道とか畑の真ん中とか田舎の工業団地、そういうところでしかできなかったんです。
飯能だったら応援に来れるじゃないですか。人が電車で来れるから。
さらに他はほとんど平地ですが、飯能は坂道なんです。
他でやってることをやりたくない、飯能しかできないことをしたい。
レースがあると自転車乗りがたくさん練習に来るのです。今は野放し状態でいっぱい大河原に練習に来ていますね。だったらそれをきちんとルール化してきちんとやったほうがいいかと。自転車は必ず左回りとか。
他にトレイルランニング、ノルディックウォーキング、アドベンチャー、オリエンテーリングとかロゲイニング(*地図、コンパスを使って、山野に多数設置されたチェックポイントをできるだけ多く制限時間内にまわり、得られた点数を競う野外スポーツ)。いろんな遊びができるんですよ、飯能って。
「優しい顔」と「厳しい顔」
でも飯能ってスポーツをするにあたって誰でも楽しめる場所とは限らない、危険な顔もあるのです。
ハイカーの人たちが気軽にハイキングできる場所っていうのは、飯能でも手前のほうなんです。初心者が奥に行ってしまうから、最近山岳救助が増えているじゃないですか。
確かに最近多いですよね
誰でも入れるっていう優しいイメージを出し過ぎちゃったのかと。
厳しい顔が出てこないんですよ。
「優しい顔」と「厳しい顔」。その両面の使い分けが必要かと。
私たちはコアな人たちが楽しんでもらえる飯能にしたい。飯能の魅力を感じて、飯能に引っ越してくるコアな人も増えています。
名栗のハイキングだってそう。本来なら地図を読む力が必要です。
けど地図で見るより道は険しくて危険で、少しミスをすると道に迷ったり。地図からの情報だけ見て簡単に、行ってみようという人がいたら大変な事故につながりますよ。
行けそうだけど、実際行ってみるとひどい
すごく難しいところなんです。コンパスと地図がないと絶対行けないようなところもあります。
道標もない
何もないです。道すらないですから、迷いますよ。
実は私たちはそういう遊びをしてたんです。ここの尾根、行けそうだから行ってみようとか。あらかじめ覚悟があるから行けるんです。それを一つの遊びとしてやっていましたが、そんなルートが地図に出てしまうと「えっ!?」て。
登山用品店とかでこの地図は売ってるんですけど・・・
これを普通の人が買って、行きたいと思ってしまったら・・・
熟達した人じゃないとまず入口が分からないですよ。何も目印がないですから。
地図上は正しいけど、この通り行くのは至難の業だと
低山だからこういうことができるんです。
奥多摩の高山だと、一歩間違うと大変なことになります。
解読していくのが楽しいわけですね
地形図を読みながら行けばもっと楽しいです。
地図読み講習会っていうのもすごい人気ですね。ただ、講習受けたからって言ってすぐに地図を読めるわけじゃない。思い通りにならなくて何度も何度も講習会に出ている人がいます。自分で実際迷ってどこで迷ったかっていうのをやると力が付いてくる。
つまり奥武蔵はこういう遊びもできる特殊なエリアなんですよ。
リスクのある遊びですね
危険は楽しさと隣り合わせですね。
様々な問題
そうやっていろんな人が飯能を訪れるにあたって、交通整理が必要になってきます。
飯能はウォーキングの街と言われているじゃないですか。その中でトレイルランニングのレースをやるとどうなると思いますか?
どこかでぶつかるんじゃないかと。普通に歩きたい人と
そこの交通整理が必要なんです。
気持ちの上ではハイカーが強者でランナーは弱者なんですよ。
車と歩行者みたいな関係性ですね
なんでこんなところ走ってるの?って言うじゃないですか。
後ろからタッタッタッと走ってきても2人並んで話していて、道を譲ってくれないハイカーもいるわけですよ。
やはり山を「走る場所」という認識の人は少ないのでは
イメージだけの問題です。
ハイカーだって人の持ち物の山を歩いているわけですよね。所有者のいる山を「奥武蔵遊歩道」とか名前をつけて。
ハイカーもピンからキリまでいるわけですよ。マナーのいい人、悪い人。
10人の中に1人いれば100人いれば10人ですよね。1,000人来たら100人いるわけですよ。
そういう人に限って、我が物顔で歩いたりするんですよ。
真面目にトレイルランニングしている人は紳士なんです。歩いている人に後ろから追いついたら歩きます。前に歩いている人も紳士なら「先行ってください」「ありがとうございます」となるんです。
トレイルランもハイキングもマナーのいい人だけなら何の問題のない。どっちかに悪い人がいると崩れますよ。
私も山の中走りますけど、必ず止まるし、挨拶もします。それって人次第ですよね。
「こんにちは」って言っても挨拶しない人もいますよね。二人で話しながら歩いていたら、「うるさい。俺は静かに歩きたいんだ」って言われたこともあります。
電車の中みたいですね
両方共に問題があるんですよ。だから棲み分けは考えないと。
別に走ってはいけないわけではないんです。だから「何走ってるんだ!」と言われるのは「何歩いてるんだ!」って言われるのと一緒ですよね。
埼玉ではそのルールがないのですが、そのままにしていてはいけないと思います。
飯能は自転車トレーニングにいい場所なので、週末にたくさんのサイクリストが来ます。集団で、一列で走るのが楽しいわけです。
でも、5台、10台になったら車もなかなか追い抜けないですよね。そうすると車だって「何走ってんだ!」と思うわけです。
ベテランの自転車乗りなら必ず分かれるんです。
追い抜かせるように
はい。これはマナーですよね。
マナーがないからつながってしまうわけです。そのマナー作りをどうしたらいいかを考えています。
自転車チームでルール、マナーのチラシを作って、飯能に練習をきているチームに手渡しで配ったり。
大河原工業団地でも周回練習をしています。
彼らにチラシを配って、実は地元の人はこういう迷惑を感じている、というのを出すべきじゃないかと。その調整役をフィールドスポーツ協会が担いたいと。
トレランレースの練習のために飯能に訪れるランナーに、駅前でチラシを配って。
地元では決してかっこいいとか優れているとか思われていないことを知って欲しいわけです。
難しい立場ですね。人を呼びたいけど、伝えることは伝えていかないといけないという
フィールドスポーツ協会
フィールドスポーツ協会のその他の役割は
飯能で開催されるトレイルランニングレースの主催者とのパイプの役目も必要かなと。飯能と関わりのない人が主催してますから。
人が千人来ると、一人1万円参加料とれば1,000万円ですよね。
全国各地でやってますから、飯能ではダメとは言えない。
東京でヒルクライムレースやっているところがあって、なんと自治会主催にしてるんです。
でも村の人たちから「なんでそんなことやらなきゃいけないんだ」って声が出てるんです。
ふたをあけてみると、お金も降りない。
豚汁を出す材料費とか多少はあるんですけど、自転車に興味のない人たちまで駆り出されたからそうなってしまった。マイナスの意見が出た。
相互理解がなかったと。そこを丁寧にやらないと
主催者はいろんなところでやって利益を出して大成功なんですよ。
それを名栗にもってきたんですよ。
一人参加費はいくらで、自治会には30万くらい出ますよと。
でも30万もらったって、その中で豚汁作ったりして、結局消えてしまうんです。
以前開催されたレースで苦情が出たらしいです。駐車場がないにもかかわらず、車できて、その辺に駐車して、そのままレース参加、地元からの苦情で翌年からは開催はありません。
あれから数年が経ち、昨年新しいイベンターが、名栗を通過するトレランレースの開催のための説明会を行いました。
説明会が終わった後にわざわざ来てくれて「こんな素晴らしいことはやるべきだ。大いにやってもらいたい」という人もいて。そういう人に協力してもらって、地域として活動すれば反対も賛成になるんじゃないかと。
ハイカーよりも地元の人が苦情出さなければいいんですよ。マイナス面も出てくると思いますが、地域の人がおもしろいってことのほうが大きいかなと思います。
なら俺たちも協力してやろうかと。
我々が利益云々っていうのはないんですよ。
誰も飯能の人が関わらないと、「どこの馬の骨が勝手にやっていってよ~」みたいなことになるんです。だからフィールドスポーツ協会が間に入る。つなげる役目が必要ですね。
まさにそこがフィールドスポーツ協会を作った理由です
最終的に地域の人にも還元されないとまちおこしにはならないですよね
地域の人に還元される方法を考えないといけないんですね。例えば前日受付にすれば宿泊客がきますよね。
けど名栗って宿泊できるところが少ないんですよ。
4月と11月にファントレイルと言うイベンターが大会をやることが決まっていて、飯能フィールドスポーツ協会として、代表の奥宮俊祐というトップランナーに協力をしていく予定です。
今回レースのコースになる棒の峰。そこの稜線が東京都と埼玉県の県境なんですよ。奥多摩のレンジャーの人に聞いたら、入ることは問題ないと。
ただ棒の峰から名栗に下る道がすごく荒れてるんですよ。急斜面に杭を2本打って、鳥居みたいにして、泥を埋めて階段にするんです。急斜面なので、雨が降ると泥が流れてしまう。今は鳥居が連続しているんです。非常に危ない。
そこをなんとか奥宮俊祐やファントレイルの名前を使って、人海作戦でなんとかできないかってレンジャーに言われたそうです。
修復をイベントとして行えば、いろんなメディアが呼べる。
奥宮さんにはその力があるんです。
草刈りとか去年も今年もやっていますが、飯能アルプスの入り口はどこの自治会にも属してなくて、放置場所があるんです。それもイベントみたいにして、みんなでやることにより、多くの人に知ってもらえる。
今年からはフィールドスポーツ協会でやろうかと。
人が来ることによって整備が進む。何かが変わっていくわけですね
道路整備や倒木の撤去もやっています。まちづくり推進委員会の人と一緒に。推進委員会の人たちは高齢なので、マウンテンバイクに乗った仲間が来て一気にやってしまう。
また、北丹沢トレイルランニングレースというのがあって、その発端は神奈川県の山岳連盟なんです。丹沢山径も登山ブームが去って、山小屋も閉めて、そうすると人が入らなくなり、山は荒れてしまうのです。
丹沢は夏になるとヒルが出る。鹿が入るとどうしてもヒルが増えるのです。人が通れば道は荒れないのです。そこで始めたのがトレイルランニングのレースだったのです。
なるべく集まって一つの力になればいいですね
それをするには協会かな、と。今後もいろいろ発展していくとおもいます。