少し前に是枝監督の「空気人形」を見たんだけど、
なんとも痛い、切ない、映画だった。
でも、同じ「痛さ」でも「大丈夫であるように」のCoccoのほうが強烈だったなぁ。
ファンタジーとドキュメントじゃ比較しようもないけれど、
わたし的には「歩いても、歩いても」みたいな、
ふつうの生活のなかにある痛さ(残酷さ)が一番、残る。
あとからじわ~っと効いてくる痛さ、怖さがある。
今日最終日ということで
西川美和監督3作目の「ディア・ドクター」を見てきた。
初監督の「蛇イチゴ」がすごくよかった。
っていうか、あれが初めての作品?!
宮迫は超絶演技ではまりすぎてるし、信じられない完成度。
そういえば2作目の「ゆれる」見てないな・・・いつか見なくちゃ。
「ディア・ドクター」は 鶴瓶が主人公の医師役。
あれだけテレビに出まくってる彼が何をどう演じるのだろう?
蛇イチゴで宮迫が鮮烈な印象をのこしてくれただけに期待してしまう・・・。
で、見てみてあらためて、思った。
西川監督はキャスティングが素晴らしいのだ。
鶴瓶が八千草薫とからむシーンなんて、両者一歩も譲らず。
淡々とした会話に漲る緊張感・・・鶴瓶、巧過ぎる。
(余貴美子、香川照之もよかった~)
鶴瓶って、家族に乾杯とか見てると、
じぶんの「役割」をじつに、緻密に計算してやってる感がある。
その場にいる人たちをきちんと位置づけてあげながら、
だれにスポットをあてるかを瞬時に判断して・・・。
じぶんが動き、関わっていくことから始まる「場」なんだけれど、
最終的には、じぶんがいなくなってる?状態が
理想なんだろうな(鶴瓶は)・・・と想像する。
この映画のなかでは、主人公に関わる人たちによって
求められる「人物像」がつくられていってしまう。
じぶんがこうありたい、と思ってなる、のではなく。
気がつけば「○○な人」になっている。
投げられたボールをつい打ち返したら、また返ってきて
思わず打ち返したら、また返ってきて・・・
そんなふうに、つぎつぎ、投げられて、
打ち返しているうちに、こんなんなってしまったんや。
と・・・主人公がいう(せりふ正確じゃないです)。
そう。
何かが欠けているから、
人は欠けているものを埋めようと、求めてしまう。
それは意図していてもいなくても。
だから、思わず、手を出してしまう。
良くも悪くもー。
そして。
喫茶店の椅子ごと後ろにひっくり返った男に、
思わず手を出す刑事。
男は刑事にいう・・・
「こういうことじゃないんですか」
たぶん良くも、悪くもない。
それが、人間ー
なんだよね。