刑法:名誉棄損罪:名誉の主体
「公然と事実を摘示し、人の名誉を棄損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する」
「人」 :名誉の主体である「人」には、自然人のほか、法人などの団体を含むとするのが判例・通説。
∵) 法人などの団体も、一定の社会的評価の対象/自然人同様の社会的活動を行っている
では
「団体」 →「団体」に公共団体は含まれるか?
たとえば、○○県あるいは○○県について名誉棄損罪が成立するか?
問題の所在)
確かに地方公共団体も一種の法人であり、外部的名誉帰属主体でもある。
しかし県や県庁は、会社や宗教団体のような共通の目的を有しているわけではない。
またその活動は法的に手厚く保護されている。
すなわち、公然摘示によって評価が下がったとしても、そのことによって活動が困難になったり、存続が危ぶまれるような存在ではない。
たとえば、県庁の信用がどれほど落ちても税金徴収に支障はない制度が構築されている。
結論)
そうした団体は、独立して名誉棄損罪で保護すべき実態にも、必要性にも欠ける。
(「事例から刑法を考える」事例⑫より)