ザリガニ。 | ~いつの間にか『ご家族さま』~

~いつの間にか『ご家族さま』~

たー君が生まれ、あの震災があって、それを乗り越えて授かった けいちゃん。
幸せは歩いて来ない、だから歩いていくんだよ。
一日一歩、三日で三歩、三歩進んで二歩下がる。
そんなご家族さまの日々です。

ある日のことですが…。

蒸し蒸しと朝から暑いと言うのに、けいちゃんが「お母さん、僕ね、幼稚園まで歩きたい‼」と言って聞きません。
車なら10分ちょいの距離ですが、歩けば順調にいって50分はかかります。

「本当に歩いて行くの?暑くても車を取りに戻れないんだよ?」と、何回も聞き直しましたが、「けいちゃん、歩いて行きたい‼」と、言うので、タオルや冷えピタや、麦茶や、手提げバッグなんかを準備して、出発しました。

小学生が、出かけた後だったので、ご近所さんに会釈したら、「えぇー‼幼稚園まで歩くの⁉」と、驚かれましたが、本人は得意気に「いってきまーす(^_^)/」と手を振っていました。

歩いて5分もたたないうちに、「お母さん、暑いね(−_−;)車は?」と言い出しました。
「暑くても、お母さんは取りに戻らないよ?歩くって言ったのは けいちゃんだからね。風もあるし、さ、歩こうか。」と、促しながら歩きました。
歩いて行くと、色んな生き物や花を見ることができました。
“たにし、カエル、カナブン、ダンゴムシ、車にひかれたヘビ、そして…ザリガニ”
紫陽花やツユクサ、ラベンダー。けいちゃんは、ピンクの紫陽花をお母さんにあげたいっと言ってくれました。
けいちゃんは、ワーキングメモリが普通より小さいらしく、沢山の事を覚えられません。
歩きながら、出会った生き物や、花を順番に言いながら、「最初に見つけたのは何だった?」と質問したりしました。

幼稚園まで、1時間30分くらいかかりましたが、けいちゃんにはとても楽しい時間になったようでした。
見つけたザリガニは、持ち帰りましたが、結局翌日の昼前には死んでしまいました。
けいちゃんは、お墓を作ってあげていましたが、命のある物を飼う事の難しさを少しでも考えてくれるように、教えていかなければと思いました。