↓以前、読んでいる途中経過として一度記事にしたことがある。
11/16 読書途中経過 : 町田康 「告白」 河内十人斬り 城戸熊太郎 谷弥五郎 河内音頭
それを読み終わったのだが、この途中経過を書いた時点あたり以降、物語は急展開をはじめる。いや、言い方がおかしいかもしれない。物語そのものは相変わらず淡々とした形で語られて行くのだが、熊太郎の狂気だけがひたすら深くなっていくのである。
熊太郎は、縫という女に恋をし、ついに、女房にする。とは言ってもこれはあとで語られるのだが、内縁関係なのであって、このこともまたあとになっての悲劇につながっていく。
熊太郎の狂気を煽り続けるのは、うまくいかない人生。そして、そのうまくいかないことに対しての熊太郎の思いと行動。
熊太郎本人はそれでも一生懸命であり、真面目に取り組んでいたりもするのだが、その内面は常に混沌としていて、様々な思考が交錯している。
しかし、彼はそれを表現する術をもたなかった。
思考は常に熊太郎の中で渦巻き、熟成され、腐ってしまう。
そうして考え込んでいるうちに、周囲の悪意は熊太郎を利用し、裏切り、搾取し続ける。
その連鎖が熊太郎を殺人鬼へと変貌させていくのだ。
殺戮のシーンにおいて、熊太郎の想いと、行動が実況されていく。河内弁の巧みな折り込みによって、凄まじい生々しさでそれは表現される。
しかし、たんなるスプラッター的表現ではなく、常にどこかで滑稽な部分を残すこの手法は、作家町田康、天下一品の腕でなのである。
このものすごい長編を、章の区分けナシの一気で描ききり、また読ませ切る力。
過去の作家について人並み以上の知識を持ち、それを踏襲する基礎の上に立ちながら、それを解体し、異形に変えて構築する力。
町田康は
今作においても
間違いなく
パンクであった。
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