Little Birds -イラク 戦火の家族たち-


撮影・監督:綿井健陽/製作・編集:安岡卓治『A』『A2』/翻訳:ユセフ・アブ・タリフ、重信メイ、勝元サラー/編集助手:辻井潔/企画協力:小西晴子/製作:安岡フィルムズ


「街角に作られた小さな墓標には「お父さん泣かないで、私たちは天国の鳥になりました」と記されていた…。


米軍によるイラク侵攻が始まった2003年3月、ビデオジャーナリスト綿井健陽はバグダッドにいた。「ニュースステーション」「News23」で精力的にイラクからの中継リポートを続けていた綿井は、日本のメディアが引き上げていくなか、現地に留まり続ける。そして、約1年半の取材期間を費やし撮影された123時間余りの映像から、102分のドキュメンタリー映画

『Little Birds-イラク 戦火の家族たち-』を完成させた。空爆で3人の子供を奪われた父親アリ・サクバンと、クラスター爆弾によって右目を負傷した少女ハディールを軸に、バクダッド、アブグレイブ、サマワなどイラク各地を舞台に、戦火の中で懸命に生きる人々の姿を丹念に紡ぐ。綿井健陽は、最低限必要な字幕とテロップのみを配し、“イラクの現実”を可能な限り画面上に再現しようとした。

そこには、テレビのニュース映像用に加工されていないリアルな生活と、彼らが日々経験している恐怖、悲しみ、そして怒りが浮き彫りになる。本作は、私たちがニュース映像として知るほんのわずかなイラク戦争の断片と、伝えられることのなかった多くの映像を繋ぎ合わせ、ひとつの面として理解することを可能にしてくれる。その結果、ようやく「私たちと同じように家族を持った人たちの暮らしがある」という当たり前のことに気がつくことになる。

そして“人道”“正義”という名の下に行われた戦争も、イラクの人々にとっては圧倒的な暴力でしかないということも。また本作は、私たち日本人に、ある種の居心地の悪さを感じさせる。イラク国内の惨状を目にして涙を流す“私”と、アメリカを支持する国の国民としての“私”が引き裂かれ、視座が揺さぶられるからだ。ひとつひとつの映像は、観る者に問いを発し続ける。日本は何故アメリカを支持するのか、アメリカは何故イラクと戦争をしているのか、そもそもこれは“戦争”なのか。それらは、綿井自身が感じた疑問に他ならない。アメリカ支持を表明した日本の国民として、見逃すことは許されない衝撃の問題作。まずはこの映画を観ること。そこから私たちの“イラク戦争”が始まる。」解説より

2枚組みDVD本編よりもおまけの方が内容が濃い。

イラク派兵時の自衛隊市ヶ谷駐屯所の右翼と左翼の叫びあいに罵り合いやイラクにおける自衛隊の赤裸々な姿・・・・日本的官僚主義に縛られた自衛隊は機能不全なのだ。

個々の自衛隊員は優秀な人が多いかと思うが、規則原則でがんじがらめで自由に身動きが取れず戦地のキャンプで引きこもり状態なのだが・・・・・それにしてもこの手の任務はしんどいと思う・・・自衛隊の人の真摯な姿と与えられた任務との乖離が痛々しい。

日本が500億円以上かけて自衛隊を派遣。

フランスのNGOが現地の人を用い自衛隊と同じ給水活動をする。

その費用が一億円と少し。

そんな比較もなされ唸る場面が多い。

NGOが支援においてプロであるという現代社会の現実や戦争で片腕をなくした少年が学校で障害をネタに虐められ虚ろな顔をして写る。

イランイラク戦争、湾岸戦争そして現在進行形のイラクでの戦争で何人もの肉親を亡くした人が訥々と語る。

戦争など無意味だと。

負傷者や戦死者や爆音。

戦車に乗る米兵の表情や当惑も捉え。

ベトナムと同じアメリカ軍兵士の悲惨や悲しみも映し出す。

一番印象深かったのがイラクの人々の家族の絆の強さと信仰心の強さ。

おそらく日本が随分と失ってしまった信じる何かがイラクにはある。

これらを眺めつつ日本もイラク以上に戦争中なのだと思う。

自殺者の数、病める人の数。喪失された人と人との絆。

そんな事をイラクの戦争映像を眺めつつ思う。

映像に出てこなかったが劣化ウラン弾の問題はどうなのだろうか?

とフト思った。

「戦争は無意味だ」の声、声、声。

戦争が無意味なように我々の生も無意味なのかもしれないな・・・・などとも思う。

意味だの価値だの言った所で人類史とは無意味な戦争史でしかないのだから・・・・

生きたくても殺される人々が多いイラクと自らの命を絶つ人が毎年3万人以上出る日本。

僕も結局、日本という精神破壊と自己破壊という名の戦場の最前線にいるのだな。

と思った。