ネイルサロンのおかしな現実。 中編 | 爪の解剖学と材料学に基づいたネイルサロンNoelRose(ノエルローズ)パウラ後藤桂子

ネイルサロンのおかしな現実。 中編


ネイルサロンのおかしな現実。→前編はこちら


その後、私は指名No.1ネイリストになりました。
ですが私の思うネイリストとしての仕事が出来ない現状に嫌気がさし始めたのもあり、他にも様々な理由もあり、ネイリスト自体を辞めるつもりで退社しました。

ですが、有難い事に顧客様達にお願いされ、何十人もいらっしゃる訳でなし、気の知れたお客様だけだし…と思い、この時点で殆どの機械類は持っていたのでお小遣い稼ぎ程度のつもりで自宅で始めました。

・忙しない雰囲気漂うサロン
・ご予約時に聞いてないメニュー(折れた爪のリペアなど)はお断りせざるを得ない時間配分
・10分遅刻でキャンセル扱いせざるを得ない時間配分
に、嫌気がさしていた私は、少し余裕のあるご予約の取り方にし、ラメグラやカラーだけではなくアートも楽しんで頂きたくて当時はまだシールなんて無かったので絵具でペイントをしたり、サロンでは出来なかった事をするようになりました。

有難い事に口コミでどんどん広がり、お小遣い稼ぎではない額を稼ぐようになってしまい、きちんと登記をしました。




そして「ネイル=アクリル」の時代は終わり「ネイル=ジェル」の時代になりました。

どんどんジェルメーカーが出来て、老舗メーカーもジェルの開発をし、絵具でなくてもジェルでペイントが出来るほど発色がよく滲まないジェルやジェル用のアート筆も出てきました。

メーカー内での価格競争もあり安い物も出てきましたし、お手軽なアートシールも出てきました。



材料費が安くなり、アートもシールを貼れば一瞬で可愛く出来るとなれば「もっと安くして、可愛いネイルが出来ると謳い集客しよう」と価格競争がもっともっと激しくなっていきました。

世のネイリスト達は、もっともっとジェルマシーン化して行きました。



そして「アート込み定額制」の登場です。

しかし、それでは満足できないお客様が増え、「やり放題」の登場です。

定額制もやり放題も、価格競争でどんどん安くなりました。


そして、今は少し下火になりましたが一時流行ったフラッシュマーケティング。
ポ◯パレさんやグルー◯ンさんなどの、共同購入型格安チケットです。

ネイルは、表参道や銀座でさえ1500円とかで「90%オフ!」とか謳わされました。
完全報酬型なのでリスクは少ないが1500円の内半分以上持って行かれては、材料費にもなりません。

当然ながら1500円で来た人が次にその何倍も払ってリピートする訳ありません。
また違うサロンのチケットを買えば済む話なのですから。



さて、ジェルの登場でネイルは認知されるようになり、上記のような事から金銭的にもとても身近な物になりました。

これ自体は素晴らしい事だと思います。



ですが…


無理にご予約を押し込む時間の設定で、時間に差し迫られ満足にカウンセリングも出来ず、シールやパーツの既製品を乗せるだけ。

そこにネイリストの心はあるのでしょうか?


今や最安値と思われる大手さんは、お客様自身が自分のカルテをパソコンに入力し、パソコン上で色やアートを決め、お客様がオフの席へ移動、その後ジェルオンの席へ移動、もし色やアート変更を頼むと別途料金がかかる。

最大限ムダを省き、最大限ネイリストをマシーンとして扱う。



「ネイリストじゃなきゃ出来ない」は、一体どこへ…?



現在、いくつのネイルサロンを巡ったら「うちはエアブラシも、3Dも、ペイントも、スカルプも、何でも出来ますよ!お客様のイメージを形にしますよ!お悩みやお望みを聞きますよ!」という、一昔前ならどこでもそうであったサロンに巡り合えるだろう?


なかなか需要がなくなった技術はともあれ、「お客様のイメージを形にしますよ!お悩みやお望みを聞きますよ!」を叶える事は、美容家でありアーティストでもあるネイリストは出来なければならないと思うのです。

勿論、ジェルマシーン化したネイリストに淡々とジェルを乗せてもらい早くて安いネイルサロンが一定のニーズがあるのは事実で、そういうコンセプトを否定はしません。

ただ、殆どがそういうネイルサロンになっている、そういうネイリストばかり。

そもそもネイリスト自身が「ネイリストとはそういうもの」と思って切磋琢磨しない人が多い、ネイリストとはそういう仕事と思って志す人も多い…というのが問題だと思うのです。


しかし、そういうネイリストばかり生まれているのにも理由もあります。


これは私の勝手な見解ですが、
ネイリストになろうとする人間のそもそもの志が低い。



私なんて業界を牽引されてきた大先生方に比べたらピラミッドの底辺レベルですが、少なくとも10年〜15年以上の歴があるネイリスト達は、先生方を筆頭にまだ開かれてない道を自分達で開拓していかなければならなかった。

だから、本当にネイルが好きじゃなきゃ選ばないし続かない仕事だったと思う。



でも、今の子達は私達が引いてきたレールに乗るか乗らないか。

それだけ。

なんとなく、華やか。
なんとなく、楽しそう。
なんとなく、勉強しなくても出来そう。
なんとなく、技術職で手に職って素敵。
なんとなく、自分にも出来そう…。



そう思わせてしまうのには、ネイルサロン以外の場所でも飽和状態が起きているのです。

そう、ネイルスクールです。

(勿論きちんとしたスクールもあります)



ネイルは美容院やエステの様に「これで◯分置きますね」と席を立ち、他のお客様を施術する事はできないので、原材料費も高い上に人件費もかかります。
でも価格崩壊している現状では、1人のネイリストが1時間かけて作れる売上はほんの僅かです。

でも、スクールなら1人の講師で10人以上見る事が出来るのです。
1時間の授業で、仮に5千円と設定しても生徒が10人いれば5万円です。
普通のサロンでは1人のネイリストが1時間で5万の売上を作ることは不可能です。

ネイルサロンで数千円の戦いをするより「なんとなくネイリストに憧れている人」を取り込んだ方が儲かるんです。

だから、スクールやカルチャーセンターは生徒獲得の為に甘いキャッチフレーズを付けるんです。


「卒業後は自宅開業も夢じゃない!」
「開業支援あり!」
「経営ノウハウも教えます!」


数時間や数日間の講習を受けただけで貰える「◯◯マスター」とか「◯◯マスター講師」、中には「◯◯認定講師」とかっていう、なんとなく響きが格好良くて凄い技術を持ってそうな名前のディプロマを与えられて、その気になっちゃう自称ネイリストが増加。


でも、考えてみてください。


私達が10年20年かけて、死ぬほど働いて練習して勉強して研究して、スクールにセミナーに大会に道具に材料に何百万も費やし、様々な物を犠牲にして得てきた技術を、たった数時間や数日間でマスター出来る訳がないじゃないですか。




技術も知識も経験もない、基本を知っただけの人に経営ノウハウをチラッと教えたからって自宅開業して上手く回る訳が無いじゃないですか。


なのに、なんでスクールは解ってるはずなのに、そんな嘘に近いキャッチフレーズを付けるのか。

儲かるからなんでしょうね。
悲しいです。


でも、スクールじゃないと儲からない現実を作ったのはネイルサロンでは首が回らない価格競争の故に起きていると思います。

価格競争ゆえに人件費を削減されるのでベテランは「こんな安い給料で今更ジェルマシーンなんかやってらんないわ」と時給の良いスクール講師になり現場を離れて行きます。

(正直なところ私自身もそうでしたし、私が施術して満足してもらうお客様を増やすより、まともなネイリストを輩出する方が業界の未来に繋がるんではないかという気持ちもありました。)


そして、ベテランが現場から離れ、お客様に実際に技術を提供するネイリストが若手ばかりでまともな施術ができないので、消費者は「ネイルサロンでお金払ってやって貰ってもこんなもんか」と思い、よりネイルが軽視されるのです。


さて、甘いキャッチフレーズに躍らされて入学し勘違いしなかった人は気付きます。
「卒業しただけで開業なんか出来るわけないじゃん」と。

そして、サロン就職をしようと卒業しても…



そうです。
待っているのは、あのネイルサロン事情です。

直ぐに入客できない新人なんて、どこも欲しがらないのです。
即戦力が欲しいので、未経験者の就職口がほとんどないのです。



なんとか就職に辿り着いても、

・目まぐるしいサロンの現実、
・施術以外の雑務の多さ、
・思った以上に体力勝負の仕事、
・就職してからも勉強や資格の為にかさむ費用、
・仕事しながら勉強や練習に励まなければいけない毎日にヘトヘト、
・腰痛や腱鞘炎などの職業病、
・手に職なんだからお給料は良いはずと思っていたのに、こんな実情でコンビニバイトより低い時給

に、「なんとなく」でネイリストを目指した子は辞めていくのです。


スクールが入学へのハードルを下げた結果、志の高い人が居ないのです。

給料が安くても、仕事量が多くても、勉強する事が山積みで毎日ヘトヘトで、まだまだお金もかかるし、腰も腕も痛いけど、それでも私は絶対に一人前のネイリストになってやる!!!

と、いう人はスクール生100人中、何人いるでしょう…。



考えてみてください。


美容師だろうが、ヘアメイクだろうが、寿司職人だろうが、シェフだろうが、パティシエだろうが、大工だろうが、医者だろうが、弁護士だろうが、職人・専門職と呼ばれる人達が皆どれだけの修行を積んで一人前になっているのか、だいたい想像つく筈です。

3年で大体の事が見えてきて、7年で大概の事に瞬時に対応が出来てきて、10年越えたからこそ「まだまだ勉強不足だ」と思う事に直面し始める。


なのに、なんでネイリストだけ「簡単になれる」と思われてしまうのか。


答えは簡単。

スクールが、すぐにネイリストになれるかのようなキャッチフレーズで生徒を募集するからです。


さて、とあるアンケート調査です。
1回にかける美容サロンの「妥当と思う金額」の平均額です。

エステ 1万円~2万円。
美容院 8千円~1万2千円。
リラクゼーション 6千円~8千円。
まつ毛エクステ 5千円~6千円。


ネイルは…


なんと…!


3千円~4千円…!!

しかも、平均額はこれでしたが「2千円」と答えている人が一番パーセンテージを占めていたのです。



に、に せ ん え ん 。 。 。て…。。


上記に挙げた他美容業種の原材料費に比べ、ネイルの原材料費は10倍近いんですよ。
なのに、消費者がネイルの妥当だと思う金額は他美容業種の1/10~1/5程度なんです。


ネイル業界が、「ネイル技術」を「安売りしまくった」結果が起こした現実です。


思えば、一番最初に就職したサロンのオーナーは常に言っていました。

「技術を安売りしたくない」

でも、今はこのサロンもクーポンを出し、価格帯を下げています。
本来なら正しい筈の信念を貫こうとすれば、今の飽和状態にあるネイル業界では生き残っていけないのです。


本来なら原材料費から弾き出すと8千~1万円程度は頂かないと健全な経営とは言えない施術内容が4~5千円、またはそれ以下の値段が「ネイルの相場」になり、お客様も消費者としての経験値が上がり目も厳しくなり、只でさえ金額に見合わない状態なのに今以上の何かを求められるようになってきている。


お客様が悪いのではありません。

クーポンを乱発させたフリーペーパーやポータルサイト、それに乗った大手、それに巻き込まれて価格を下げて行かざるを得なかったサロン達。

大手は社長がネイリストじゃない事が多い。
だから爪や材料の事なんて知らないし、売上げてくれて会社が黒字になればいい。

社長がネイリストの中小サロンは自分が技術屋だから爪に悪い事はしたくない、材料の正しくない使い方をしたくない、お客様の笑顔が見たい、喜んでもらいたい…。
でも、生き残るには値下げをせざるを得なかった。

でも、また更に大手が値を下げて拡大していく。

フラッシュマーケティング全盛期は、大手は新人の練習台として使い更に安いクーポンを乱発、中小サロンは「0よりマシでしょ」と営業マンに上から言われ、やらざるを得ない所まで追い込まれていたのです。

(現在はさすがに大手も1500円では痛手が大きすぎたのか、その額で出している所は見かけなくなりましたが)

でも、結局のところ、大手も中小も関係なく、自分達で相場を落とし続けた自分達が悪いのです。


①価格競争でサロンでは首が回らない価格にまで下げてしまった。
②売上取れるスクールに力を入れる。
③ベテランは馬鹿らしくなり、現場から離れ講師になる。
④現場には若手しかいない。しかも向上心がない。
⑤向上心のない若手の技術で、今更下りに下がった施術料を値上げする事は難しい。
⑥人件費の安い若手を使うしかない。


価格競争をしまくって首絞め合戦の後、消費者もサロンもスクールも含め、業界全体を巻き込む、もうどうにも止まらない負のループが出来上がって行ったのです…。

~続く~
後編はこちら

love,
Paula Keico

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