右目の視力低下が激しく、何とかして左目の角膜移植を受けられないか、調べ始めた頃。
1冊の本に出会った。
ある眼科医が、角膜移植医療について書いたエッセー、というか・・・。
患者さん向けの読みもの。

その中に、こんな記述があった。
そのドクターの母校大学病院の眼科で、確か昭和30年代に移植手術を受けた患者さん。
その後、30年近く角膜が透明で視力も良好な状態を維持している、という記述。

これは・・・裏返せば、そういう状態の患者さんが、珍しい・・・ということやなぁ・・・。
と、思い、角膜移植から少し離れて、臓器移植全体についての、患者さん向け書籍を読みあさる。

すると、心臓・肝臓・腎臓・・・などの移植では、移植した臓器が5年もてば・・・。
その移植手術は成功、とみなされる、のだと知った。
何だか、がんの治療から5年再発がなければ、それで無罪放免(?)されるみたいな区切りやなぁ。
そんなことを思いつつ・・・。
ということは、角膜移植も同じように考えられているんやろうなぁ、と考える。
移植から何年間か経過すると、角膜の透明度が低下して・・・。
場合によっては、再移植などの治療が必要になる、ということでもある。

ドイツで心臓移植を受けた、小学生の女の子の親御さんが・・・。
「期限付きで寿命を伸ばしてもらったようなものです」。
「だから、1日1日を楽しく過ごさせてやりたいと思っています」とインタビューに答えているのを見て・・・。
気の毒に思うとともに、愕然とする。

角膜移植も、期限付きで目が見えるようになる、と捉えた方がいいのかもしれない。
それでも・・・。
右目にかかる負担を何とか減らしたくて、移植を受ける、という気持ちには変わらなかったけれど。

移植のため、大学病院に入院したとき、同室に他の科の入院患者さんで・・・。
やたらとおしゃべりなヒトがいた。
「角膜移植の患者さんって、手術何度もやり直すヒト多いんでしょ?大変ね」なんて・・・。
翌日に手術を控えた患者が私を含めて2人いた病室で・・・。
大声で無神経に話していたけれど、

円錐角膜や角膜炎による白斑以外に、農薬や劇薬が目に入ったとか・・・。
そういう、ムズかしい症例の患者さんが大学病院には多い、というのもあるだろうけれど。
中には、移植後ヒドい拒絶反応が出て、再移植するとか。
移植した角膜が白濁してしまい、再移植するとか。
そんな患者さんもいてはるんやろうなぁ・・・と憤慨しつつも聞き流した。
それしても・・・無神経なおばばんやったなぁ。

今年の10月で、移植から15年目に突入する、私の左目。
角膜は透明な状態を保ち、一昨年受けた白内障手術で、入れた眼内レンズの度数がピタリとはまり・・・。
遠くも近くも不自由なく見える状態を保っている。

素人考えだけれど・・・。
これは、主治医があの時選択した、角膜内皮細胞を温存する・・・。
深部表層角膜移植によるものなんじゃないか、と思う。
おかげで、拒絶反応もなく、のほほんと暮らしていけるし。
拒絶反応に襲われていないから、それだけ角膜に対して負担もかかっていないわけだし。

こうやってのほほんと過ごせる状態にしてくれた、主治医に・・・。
また、改めて感謝するとともに・・・。
これからも、術後管理をちゃんとして・・・目を大切にしなくては、と思う。