相手も自分も独立心を持っていないと恋愛は成立しない。

 

 

それどころか何かに依存したいこころを持つ人には

 

 

かならず危険な落とし穴が待ち受けている。

 

 

 

 

 

あれはわたしがまだ肌も白く輝き細身の体型を維持していた若かりし頃のことだった。

 

 

同じ営業チームで目の前の席に座っていた3つ年下の男性から好意を持たれていた。

 

 

人前でも繰り広げられる猛アタックに嫌気がさし始めていたものの

 

 

半分以上はその状況を楽しんでいた。

 

 

ノーマルな人との色恋沙汰なら相手を傷付けないように

 

 

大人の配慮が必要になってくる。

 

 

その時はそんな気持ちも湧かず、むしろその状況を面白がる悪魔の心が湧ていた。

 

 

 

 

夕方外回りから戻ってパソコンに向かい、日誌を書き始める頃

 

 

 

彼のアプローチが毎日のように始まった。

 

 

 

こちらから口を開かなくても一方的に投げかけられる会話。

 

 

 

「うちの母親は僕が付き合う彼女には指輪を買ってプレゼントするんだ。」

 

 

突っ込みどころ満載な発言に口をあんぐりとしながら驚いた。

 

 

「あなたがプレゼントするんじゃなくてお母様なの?」

 

 

無視して放っておけばいいのに、面白がるわたしの中の悪魔が返答しろと迫った。

 

 

「それも高価な指輪なんだよね。」

 

 

「へえー、それはすごいね。」

 

 

興味ありそうな雰囲気を装って答えた。

 

 

わたしの中の悪魔は意地悪だった。

 

 

嬉しそうに彼は母親の話しを続けた。

 

 

「僕は付き合い始めてすぐ彼女を母親に紹介するようにしているんだ。」

 

 

この人を彼氏にしたら毎回実家に行く羽目になる。

 

 

デートは母親同伴になるだろうと想像するのは簡単だった。

 

 

それだけでうんざりした気分になった。

 

 

それでも目の前の彼は目を輝かせながらわたしの好反応を待っていた。

 

 

親に紹介するって言えば女子が安心すると思うなよ!

 

 

こころの中で怒鳴りながら彼になんて言ってやろうか考えた。

 

 

「親に紹介してもらいたくなるのはその男性との結婚を望んでいる時だけだよ。」

 

 

ムッとしながらそう答えると彼はさらにたたみかけてきた。

 

 

「女の子はみんな早く結婚したいもんでしょ。僕なら安心だよ。」

 

 

「恋愛に大切な安心感って何だろうね。」

 

 

「そりゃ、結婚がゴールに見えてることでしょ。」

 

 

 

信じられないことにわたしは彼のその決めゼリフにちょっとトキメキを感じてしまった。

 

 

彼が結婚相手として相当微妙だということを

 

 

気付いていながらこころを奪われた。

 

 

 

万が一わたしのようにこの男性に一瞬でも安心感を覚えた人に警告しておきたい。

 

 

誰かが自分を幸せにしてくれるなんて夢を見ていると

 

 

こんなマザコン野郎の罠にかかってしまい

 


あとで自分のうかつさを悔いることになりかねないのだ。