【回路】
監督:黒沢 清
2001年 日本


先に評価しますと  55点  です。
着想は面白く、ラストに至る展開もそれなりにうなずけます。
特殊効果も突出した物ではないですが、効果的に使っていておけ。
ホラー作品としては観て損は無いとは思います。

「呪怨」に至るジャパニーズホラーの系譜として、
まあ、挙げてもいい作品かなと・・。

っっが、邦画自体の問題点である・・
 役者が下手  だけはどうにもなりませんがな・・。あせる
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■本マグロを使った鮭弁当
っという、残念感を思わずには居られない。
それまでホラーといえば、アイドルがキャーキャー言うだけの低予算映画だったのが、
やっと一分野として社会的に認められるようになる時代への分岐点にある作品と言えよう。
惜しむらくは、素材はいいのだが、それを生かす手法が十分ではなかったのである。ガーン

いや、いい 「アイデア」 や 「本(脚本)」 があっても
それを生かせる素材が極めて少ない日本映画自体の問題点かもしれない。
ホラーを演じられる役者はとても少ない。
大御所を起用するしかない狭い選択肢と、その反面、
予算や宣伝の関係でアイドル系やお笑い系を使わざるを得ない苦悩もある。

この作品は、脚本も助長的シーンが多くて眠いんだよなぁ。
無理やり説明口調のカットがあったり、訳の分からん雰囲気シーンがあったり・・。
もう少しスピーディーにサスペンスを盛り上げてくれればよかった。

核となる主役のストーリーラインが複数あり、
これらを入れ替えながら進んでいくのだが、時系列がわかりづらい。
この辺りも脚本の力不足と言う他無い。 。・゚・(ノД`)・゚・。あせる

設定はなんだか クトゥルー神話 を彷彿とさせる所もあり
異界から侵入してくるモノをもっと生かせるシナリオが欲しかった。
物語の視点がすごく狭い生活圏の中の事で、
じゃあ・・ この事態に世界はどうなってるの? は隠されたままで少しイライラする。
もっとも・・、ラストに向けてわざと視点を狭めていたのだろうけど。

身近に起こった怪異。
それが、あれよあれよと言う間に人類滅亡規模に広がっていく・・。
ゾンビ映画のラストのようなバッドエンド感がいい所だとも思うのだけど。
$・・・この先生キノコるには。-回路1
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■簡単なあらすじ (ネタバレあり)

工藤ミチ (麻生久美子)の勤める会社で同僚が一週間出てきていなかった。
連絡もつかず・・仕事でどうしても必要なデータがあるため彼の部屋を訪れる。
彼は居て、普通に「あーフロッピー、その山のどっかにあるよ」と言う。
ミチがそれを探しに目を離したその間に、彼はコードで首を吊った・・。

その同僚が亡くなって後に、ミチの周りでどんどん異変が始まり、
やがて彼女自身もそれに巻き込まれる。

かたや、川島亮介 (加藤晴彦)は普通の学生だった。
巷で流行りのインターネットを始めようとスタートアップを始めたが、
いきなりモニターには何かの映像が映し出され
「幽霊に会いたいですか?」 と画面に文字が出た。

その後、亮介は学校でパソコンに詳しそうな学部で誰かに聞こうとし、
「え? 幽霊って?」っと興味を示した唐沢春江と会う。
そして、二人はさらに事態に巻き込まれていく。

「しみの跡を残して消える人」「開かずの間」「赤いテープの貼られたドア」
それはもはやあらゆるところに出現し、次々に人がいなくなっていく。

奴らと接触した人間はなぜその存在をやめるのか?
かくて、このまま人類は滅んでいくのか?

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■突っ込みどころ、いろいろ
えーっと、役所広司が冒頭で出てくるのでちょっと期待したんだが
ほんとにちょい役です、あとラストしか出てきません。

あとは加藤晴彦の学芸会で・・ホラーどころじゃありません。
いやいや、役所にこの役やらせろよ (#^ω^)ビキッパンチ!

さて、 「赤いテープ」  も小道具としては面白かったです。
最初は作業員がなにげなくテープを使って作った  赤い四角 
そこに偶然生まれた霊的回路からあふれ出てくるモノ。
そうして、やがて電気的回路に入り込み かっこたる存在へと変貌していく。
この設定はいいですね。

$・・・この先生キノコるには。-回路2

ただ・・おしむらくは「赤テープ」と「電線」の関係が曖昧なんだな。
また、電子の世界で存在を確立したならば
なぜ、現世の人間を殺さなければならないのか・・?
人がいなくなったら電気も無くなり、電子世界も存在できないよ?

「死後は孤独」 というキーワードが繰り返し出てくるが、
そこで絶望して自殺していくのが、ちょっち短絡すぎるんだと思う。
モニターに移る奴らを指して春江が言う 
「こいつらだって生きてるか死んでるかわからないじゃない!!」
こういうネット社会を比喩し警鐘を示す意図も分らなくはないんだが・・・。
あまりにとって付けたような薄っぺらさ。

そもそも、自分は孤独だと人との関わりを避けていた 春江(小雪) が、
なぜ、川島亮介 (加藤晴彦) の言葉に興味を持ち能動的に関わっていったのか?
あまつさえ、亮介の部屋に行ったり、自分の連絡先を教えたり・・。
普通の女性なら、「幽霊」とか怪しい事言ってる亮介のようなのは無視するだろうし、
女性がそう簡単に連絡先を(おそらく住所まで)教えてしまうのだろうか?

そういった設定やシナリオの整合性は小説ならいいのだろう。
ある程度の背景設定や、人物の過去物語とかも提示されてるだろうから。
ただ、なんの予備知識もなしに映画を見た場合に困る。
ジャパンホラーの得意な 「恐怖という空気感」 はあるが、
悪い方へかたむくと、この説明口調シーンがただ眠いだけ・・。
エンターテイメントとしてはどうかな・・というのが
この作品のいい点でもあり、悪い点でもあるのだ。

ラストの船で向かうシーンもやはり
「渚にて」「復活の日」といった滅亡ものや、キングの「スタンド」にも似た感覚を覚える。
ある意味、そこを出発点にした続編を作ってもらいたいものだな。

ってゆうか・・、なぜ彼女は海にでたのだ?
えーっと、なぜボートの鍵があの建物のあの部屋のあの引き出しにあると?
その前にそもそも・・、一介の園芸店社員がボートの操縦できるのはなぜ?
彼女にマリンスポーツの趣味があるとか、船舶免許持ってるとか描かれてたっけ・・はてなマーク

ホント、そういう設定と シナリオの整合性が突っ込まずにいられない んだ・・。
どうか・・、配役を一新してリメイクしてくれい!?

ちなみに、これのハリウッドリメイク版が 「Pulse (2006)」 だが、
こちらは続編の  「Pulse 2: Afterlife (2008)」  が作られている。
未見だけどね。
   END
$・・・この先生キノコるには。-回路3