【いはつそうでん】
教法や奥義を伝え継承すること。

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電話応対時の「折り返します。」と言えば、かかってきた電話に対して、担当者が不在だった場合に、不在だった側の人間が発する言葉である……と思っていた。

ところが最近、自分からかけてきているにも関わらず、「山本さんは不在ですか?ではまた折り返します。」などとのたまう輩が存在する。それも一人や二人ではない。

ひょっとして自分が間違えているのかと思い広辞苑を開いてみたが、“折り返す─来た方へもどす。引き返す。”とある。やはり、電話をかけてきた方にかかってきた方から電話をすることこそ“折り返し”であって、かけてきた方がかけなおすことではない。

彼らは一体なぜ、そんな表現を使うようになったのだろうか。

社会人としてのマナーは、研修などの機会を設けて教育される場合もあれば、他者のやりとりを見聞きし少しずつ学んでいく場合など、方法は様々だろうが、多くは先輩から後輩への伝承である。

「不在ですか?折り返します。」がまかり通っているような会社の先輩は、やはり「不在ですか?折り返します。」を使うのだろう。そして、それを学んだ後輩たちが、その後輩たちに伝染させ、そのまた後輩たちも同じく……こうしてまた、ちょっと恥ずかしい人間が増えてしまうのである。

こんなアホみたいな間違いを犯す彼らの行く末を、案じずにはいられない。