天才チンパンジーアイの分娩。がんばった8時間。難産? | マーブル先生奮闘記

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マーブル先生の独り言。2024年1月1日の能登半島地震後の復興をお祈り申し上げますとともに、被災された皆様に心よりお見舞い申し上げます。

人間に近いチンパンジー。
最近の研究ではその遺伝子は
98%人間と同じといわれている。


その中でもチンパンジー、アイは能力的にも
現存する動物の中でも最も人間に近い
脳の発達と才能を有する。


直立歩行による
骨盤の変化、
脳の体積の増加、
そして天才であるがゆえの
痛みに対する
認識と経験。
これらはいずれも
分娩を複雑にする
要素だ。


したがって、アイの分娩を注意深く観察することは
人間の分娩時のトラブルの発症のメカニズム
の解明につながる一歩かもしれない。

アイの分娩。

天才チンパンジーアイがその子アユムを産んだ時の
記録が克明に記録されている。
2,000年4月24日。
人間でいえば20代半ばのアイの分娩である。

アイは妊娠した推定日から237日目の午後より
まず少量の出血で分娩の開始を見ている。
人間でいうところのおしるしである。

チンパンジーやニホンザルは分娩が近づくと、
膣や外陰部の軟化がl観察される。
このときドップラーで児心音が計測されているが、
頻脈と徐脈を繰りかえし記録されたと書かれている。
人間のような児心音ではないのだろう。
人間の場合、徐脈はかなり児頭が下降するか、
臍帯因子、胎児胎盤機能不全などで
観察されることであり、このような
陣痛開始直後に観察されることはない。

午後6時ごろより陣痛が増強し、午後10時に破水。
破水後5分経過の後に男児を分娩している。
2時ごろの開始らしいので4時間後に急速期に入り、
破水時に全開と考えれば、全開後5分で分娩であり、
人間の経産婦のそのパターンに酷似する。

分娩その後。

アイは分娩後自分の指を赤ちゃんの口に
入れ咽頭や喉頭の閉塞し、
栓をしていた粘液を吸引という行動で取り除き
蘇生に近い行動を行っている。
数分後、元気になった新生児を
穏やかに抱く行為をしたという。

ニホンザルよりもはるかに難産であり、
疲労をともなうチンパンジーの
分娩。アイは翌日の午後くらいから
元気になっている。

4月25日、午後6時半にアユムの最初の
哺乳行動が観察されている。
4月26日、アイについていた臍帯の
切断が観察されている。
胎盤を食べたかどうかや、臍帯脱落まで
胎盤がついていたか
どうかの記載はない。
9時間後の写真にはアイ、アユム、臍帯、
胎盤がつながったまま写っている。


アユ、アユム、臍帯と胎盤。


乳汁分泌。

4月27日、アイの両方の乳房より
乳汁分泌の観察がなされている。
これも分娩後第3日目のことであり、
人間の場合と同じである。

もっと分娩を科学に。

チンパンジーの分娩やニホンザルの分娩様式は
人間のそれを解明する時のかなり参考にはなる。
しかし、人間はより進化をしてしまった動物である。
本来直立歩行をしてしまった骨格の構造と
分娩の様式を単純に比較してはならないし、
また人間に無条件に取り入れてもいけない。
そこには理論に裏づけされた正確な分娩理論が
再構築されなければならない。
それが我々人間に与えられた使命である。


人骨盤、入口部。



人骨盤、正面。



サル、骨盤。側方より。



サル、骨盤。正面。