着床を理解する(Ⅲ)。 | マーブル先生奮闘記

マーブル先生奮闘記

マーブル先生の独り言。2024年1月1日の能登半島地震後の復興をお祈り申し上げますとともに、被災された皆様に心よりお見舞い申し上げます。

女性はすごい。この一言に尽きる。


子宮腔内に入り、子宮内膜が分泌する
分泌液を栄養として、受精卵は成長する。
成長中の受精卵は、
子宮腔内の分泌液に依存しながらも、
自分自身が着床する場所を虎視眈々と探している。

受精後4日目を迎えると、
桑実胚は劇的な変化をする。


桑実胚、後期。


前回述べた、構成する細胞が2つに分化すると同時に、
子宮腔内の液体を取りこみ、
分割球の間に少しずつ存在した
液体を中央に集める。



早期胞胚。中央に胞胚腔を作る。
まだ透明帯が存在する。


また、この液体を逃がさないように、
分割球の外側の細胞(栄養膜細胞)は融合し、
胞胚腔を形成する。

胞胚腔:中央の分泌物を蓄えた腔、blastocyst cavity。


後期胞胚。はっきりとした胞胚腔と分化を始める内細胞塊。
もう透明帯はないことに注意。透明帯があると着床できない。


この時点の胚を胞胚という。
この後、内細胞塊は
胞胚腔に向かって突き出るように発育する。
このころ、受精卵を覆っていた透明帯は変性し、
消失する。

受精第6日目(月経周期20日目)になると、
いよいよ子宮内膜との接触を開始する。
着床過程のスタートである。


内細胞塊を上にして子宮内膜上皮細胞と接着を開始する。



偶然とらえた接着前の胞胚。子宮腔内に遊泳して栄養を補給している。


内細胞塊の方向で子宮内膜上皮細胞と接着を開始し、
表層の栄養膜は子宮内膜上皮を部分的に破壊し、侵入する。
後方の栄養膜は子宮腔内の分泌液からエネルギーを吸収し
この侵入を後方からささえる。



着床開始の模式図。上が子宮内膜。侵入開始。下部の栄養膜は子宮内腔の
栄養を吸収し、上方へエネルギー補給を行っている。



上が胞胚。内細胞塊が見える。下は子宮内膜上皮細胞。
右のほうで子宮内膜上皮細胞と胞胚が接着している。


この侵入の先端の栄養膜細胞は
二つの層を形成する。

1) 先端の侵入の責任者、いくつかの細胞が融合した、のこぎりの
  役目、どんどん子宮内膜に入り込んで、母体の子宮内膜と
  相互作用をする(合胞体層、シンシチオトロホブラスト)
2) 内側の単一の細胞からなる層(サイトトロホブラスト)
この二つの細胞層への分化は後の胎盤形成にとって重要なプロセスになる。

話がややこしいが、
胎盤を作る細胞は
母体の子宮内膜と
相互作用を行い、分化し、
協調の準備を行う。
将来子供になる
内細胞塊は栄養細胞から
エネルギーを補給されゆっくり胎児形成の
準備を始めるのである
(月経周期21日目の出来事)。

内細胞塊はこの二日間で
原始内胚葉と原始卵黄嚢に分化する。
この後の変化は栄養膜細胞が胎盤へ、
内細胞塊が胎児へ劇的に変化する。

ここまでも難しいと思ったかもしれないが、
女の人はこんなことを行って、
胎児を育んでいるのである。
実にすばらしい。



ここまできてもまだ月経周期21日目。子宮内ではすごいことが起こっている。